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絶対音感の方のための相対音感訓練法【決定版】


今日から,犬はタコ,タコはミミズ,ミミズはワカメだ!

記事「絶対音感が残念な話」に書いたように,音楽演奏では相対音感がとても大事だ。絶対音感も便利なことはあるので両方の音感があれば最強だが,2択なら相対音感をきちんと身につける方が良いと思う。相対音感は、正確なハモリにも重要だし,何よりも調性感の獲得にも重要だからだ。

相対音感の訓練となると出てくるのが移動ドだ。バークリー音楽大学では移動ドの訓練を徹底的にするらしい。

しかし、固定ドに慣れ親しんでいる絶対音感の人にとって移動ドの練習はとても辛い。「今日から,犬はタコ,タコはミミズ,ミミズはワカメと呼べ」と言われて,結局犬はタコなのかミミズなのかワカメなのかわからなくなるような感覚だ。さらに,ピアノを弾きながらだと大変だ。ヘ長調の曲を歌おうとすると、これまで楽譜で「ファ」と読んでいた音を「ドだぞ〜」と歌いながら,「ピアノの鍵盤はドの鍵盤じゃなくてファの鍵盤..じゃなくて今はそれがドの鍵盤で….,ぁぁ,でもなんでドの鍵盤を押すとファの音がするんだぁぁぁぁ」と,とにかく訳がわからなくなる。

絶対音感のピアニストにとっては,「ドレミは,音の絶対的な高さを表す言葉」であるだけでなく,「音符の名前」であるとともに「鍵盤の位置も表す言葉」でもあり,「自分が弾いた鍵盤と,実際に出た音の整合性を確認するための言葉」 でもあるのだ。

固定ドの人のための移動ドの練習方法を求めて

解決方法は二つある。

  1. 根性で移動ドの練習をする

  2. 調性に基づく階名をドレミではない名前にする

というわけで,根性のない私は新しい名前の研究を長年行ってきた。楽をするためにはどんな苦労も厭わないのが私のモットーだ。(大袈裟です。ごめんなさい)

新しい階名の指針

階名として重要なのは以下の2点だ。

  1. 歌いやすい

  2. 臨時記号がつく音にも対応できる

声に出す上で「歌いやすい」ことは当然重要だ。ドレミが普及している一番の理由は,この歌いやすさにあると思う。

第二の条件も重要だ。絶対音感を持つ人でも黒鍵と発見の音の識別が曖昧な人も多い(以下の書籍に絶対音感の特徴がいろいろまとまっていて面白い)。その原因は, 1オクターブ12個の音を「ドレミファソラシド」 の7個にまとめてしまい,#や♭がついても同じ音名にしているからだろう。言葉を分離することは概念の分離にも重要だし,記憶にも有利だ。

バークリー式の階名

バークリー式の移動ドでは臨時記号のつく音の問題をきちんと解決していて,以下のような階名を使っている。

素晴らしいのだが,「ドレミ」が出てくる限り私の悩みは解消されない。

そうだ数字を使おう

「ドクターカイトトミタ」さんの上の動画に「ドレミではなく数字で考えるのがおすすめ」とあった。「ぉぉ,これは素晴らしいやんけ〜。主音からの距離もそのまんまわかるしなぁ」と感激した。しかし,「イーチ,ニー,サーン」は少し歌いにくい気がするのは目を瞑るとしても,臨時記号が付いてるとき「ロークのフラットぉ」とは歌いたくない。

その後,この1月に修了証書を獲得したCoursera.orgにあるロチェスター大学イーストマン音楽学校の講座「ブルース:アメリカ音楽の理解と演奏」でも数字読みが登場。こちらは"one", "two", …と英語だ。しかし,臨時記号がつくときに,"one sharp〜"はやはり歌いにくい。

移動ドの訓練方法の決定版!

私は挫けずに調査を続け,そして臨時記号にも対応できる究極の数字読みをついに発見した(大袈裟です。すみません)。

第7音は"セーヴ"といった感じで,子音は音の最後の方で歌うと歌いやすい。
この数字を使った階名の説明はwikipediaにあったのだが,巡り会うのに随分時間がかかってしまった。歌いやすさはドレミに負けるが,以下で説明するようにメリットが多いのでこれで良しとする。

練習方法その1

さて,実践してみよう。バスの階名を数字読みにすると以下のようになる。

一度声に出して歌ってみてほしい。ドレミよりももっとダイレクトに和声進行との対応がわかることを理解できると思う。

練習方法その2

上記のイーストマン音楽学校の講座の講師Dariusz Terefenkoは,少し違う数字読みをイヤートレーニングの方法として紹介していた。各和音の根音に対して何番目の音かを数字で歌う方法だ。

以下の例では,バスのみ歌詞表記にして,他の声部は歌うべき数字のみを記してみた。数字の方が見やすいね。ただ,指番号や通奏低音の和音を表す数字(figured bass)と間違えないように要注意だ。ちなみに♭が付いた音はb5等と書いている。

この練習方法には以下のような多くのメリットがある。

  1. 各音の和音中での役割がわかる

  2. 3和音の構成音は1, 3, 5で表されるので,赤字にしているそれ以外の音(経過音などの非和声音や7th以上のテンションノート)がすぐにわかる。

  3. 和声進行の接続構造がわかりやすい。

  4. 第3音や第7音といった,役割に応じて音程の取り方を変えるべき音がすぐにわかる。

  5. テンションコードのコードネームとの対応がつきやすい。

Dariusz Terefenkoはブルースなどのコード進行で,バス以外を弾きながらバスだけこの方法で歌うといった訓練を各声部についてすると,コードを聴き分けるための良いイヤートレーニングになるよと説明している。

さらに,以下のビデオによると数字読には他のメリットもある。

  1. ドレミを知らなくても数字はみんな知っているので,すぐ歌えるようになる

  2. 数字が音の高低を表すので理解しやすく,楽譜との関係もわかりやすい

  3. 指で歌う音を指示することもできる

  4. 音程の上下も+1, -2などと指示が簡単で,音の間隔の感覚が身につきやすい。 

この動画は解説が長いが実践例もあるので,それを見るだけでも面白い。ちなみに,この動画では臨時記号が付いた音符については単に"sharp", "flat"と歌うと,特殊な音だとわかりやすくていいよと説明している。

おわり

数字にするんじゃ「移動」じゃないやんけと思う人もいるかもしれない。でも,「移動ド」の目的は相対音感を身につけることで,「ドレミ」の呼び方にこだわることではないはずだ。それに数字読みの方がいいんじゃないかと思う点もあるから許してけろ。紹介した2番目の練習方法は移動ドの方法ではできないしね。

何はともあれ,絶対音感の人は移動ドを移動数字(!?)に変えるだけで,こんなに楽に歌えるのかと驚くと思う。是非お試しあれ。

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jun
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