小型月着陸実証機（SLIM）、月面着陸に成功も　太陽電池が電力発生せず

　宇宙航空研究開発機構（JAXA）は2024年1月20日、小型月着陸実証機（SLIM）の月面着陸に成功したと発表した。ただ、太陽電池が電力を発生していない状況だという。

　現在、月面からのデータ取得を優先して実施するとともに、今後、取得できたデータの詳細な解析を進めるとしている。

　SLIMは1月20日0時00分、月面に向けて着陸降下開始を開始した。動力降下フェーズと垂直降下フェーズを経て、0時20分に月面へ着陸した。着陸後の地球との通信も確立できたという。

　JAXA宇宙科学研究所所長の國中均氏は「軟着陸には成功したと考えている。探査機が正常に、テレメトリーを地球に送信しており、これは搭載機器がおおむね健全に動いていることを意味する」と語った。

　また、詳細はデータの精査を行う必要があるものの、目標としていた誤差100mの精度での着陸も達成できた可能性が高いとしている。

　しかし、なんらかの理由で太陽電池が電力を発生していない状況だという。國中所長は「まだ数字を見ていないので定量的にはわからないが、活動できるほどの電力は発生していないと聞いている」と語った。

　現在SLIMは、探査機内のバッテリーのみで動いており、着陸時に取得し、探査機内に保管されているデータの取得を優先して進めているとしている。なお、バッテリーの電力は数時間程度はもつと考えられており、さらに電力を温存するために、ヒーターの電力を切るなどの延命作業を実施しているという。

　今後、取得できたデータの詳細な解析を進め、状況などについては随時発表するとしている。

　電力が発生していない理由について、國中氏は「太陽電池やそのまわりのハードウェアのトラブルは、可能性としてはあるが、考えにくい」という見解を示した。

　SLIMは質量700kg程度の小さな探査機で、各搭載機器は非常にコンパクトに搭載されている。つまり、着陸時に太陽電池が損傷するようなトラブルが起きていれば、他の機器も損傷するはずだが、現時点で太陽電池以外の部分は正常に動作し、温度データ、圧力データを送ってきていることから、太陽電池のハードウェア的なトラブルは考えにくいのだという。

　もうひとつの可能性としては、着陸後のSLIMの姿勢が、予定していた方向を向いておらず、太陽光が当たっていないため発電できていないことが考えられるという。この場合、時間が経って太陽の方角が変化すれば、太陽電池に太陽光が当たり、発電できるようになる望みがある。

　現在SLIMは、探査機内のバッテリーのみで動いており、着陸時に取得し、探査機内に保管されているデータの取得を優先して進めているとしている。着陸前後のSLIMの経路や姿勢などが詳細にわかれば、SLIMになにが起きたのか、現在どのような状態にあるのかを把握することができるものとみられる。

　今後、取得できたデータの詳細な解析を進め、状況などについては随時発表するという。