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idwソニックのサージとキツナミについて

idwソニックのオリキャラであるサージとキツナミの設定と時間順の出来事をまとめてみました。トップの画像はImposter Syndrome #3のBracardi Curry氏版カバーです。
この2人は現在idwソニックではスターラインに代わってメインの敵キャラ?とも言える立場になっているけど、本編とスピンオフの両方で情報が出てくるからこんがらがりやすいんで、どういう経緯を辿って現時点の本編(13巻まで)に繋がるのかを整理してみたくて。6月発売予定の14巻に収録される分量はまだあらすじだけ把握してる状態なのでそこから新しい情報があったらまた追加するかも。

日本語版は現在6巻まで出てるんでしたっけ?これは内容としては7巻以後になるのだけど、公式翻訳が出ているコミックだから未翻訳分の本当に重大なネタバレみたいなのは避けるべきかと思って、こういう具合になりました。

  • 「このキャラは最終的にはこうなります」みたいなのは伏せる

  • どうしても「これはこうなった」みたいなものを書かなければならない場合は(スターラインはワープトパーズを失います、とか)「どうしてそうなったか」の詳しい経緯をなるべく伏せる

中途半端で申し訳ない。強いて言うなら英語版idwソニックを追っている方や、ネタバレはある程度大丈夫だからサージとキツナミについてもっと情報が欲しい!という方向けですかね。英語版とかなり間が空いちゃってネタバレ判定がどんどんややこしくなっていく。公式翻訳もっとください…

まずはスターラインさんの足取りを追わないと成立しないので、半分くらいは彼の話。この人マメに映像記録で日記みたいなのを残すタイプだから正直すごく助かった。



本編7巻(正確には#25から後くらい)

自他共に認めるドクターエッグマンの大ファンであるスターラインさん、メタルウイルス編終盤でそのエッグマンと決別(というより一方的に放り出された)することになるのだけど、手を切るつもりはさらさら無い。この捨てられた直後と思われる映像記録では「私の助力が受け入れられないなら無理やりにでも認めさせるまで」(Imposter Syndrome #3)と言っていて、ここではかなり取り乱しているけどこの感情は動機としてこの後もずっと変わらなかったりする。またここのカットにメタルソニックをも上回る代物として作ったらしきメカのプロトタイプがある。サージとキットの姿は無し。


本編8巻(#31のところ)

その少し後と思しき状況が1ページだけ描かれる。「スターラインの倉庫」とあるけど、ハッキングか何かで従わせたエッグポーンたちを使ってエッグマンの基地から盗んできた資源を運ばせているように見える。そこでの独白がこれ。

「ああ、ドクター…どうして間違っていることに気づけないんでしょう。
エッグマン様は思った通りの天才ではあるが計画の遂行能力に難あり、対してソニックは期待通りの強者ではあるがあまりにも無鉄砲すぎる!
可能性を腐らせるにもほどがあります。だが私は目が覚めている。彼らから学んでより良い方向に変わることが出来る。
ご心配なく、ドクター。酷い仕打ちを受けてなお、私の忠誠心は揺るぎません。この私が世界征服を果たしてみせましょう。貴方が学びを得られるように、貴方を超えてみせましょう。
勝利の座に貴方を座らせる暁にこそ、私が正しかったと認めてもらうのです。耳を傾けてもらうのです。そして対等な存在として共に君臨しましょう」

IDW Sonic #31

メタルウイルス編でドクターの無謀かつ無茶なやり方を見てちょっと幻滅した上に捨てられちゃったからこんな感じに目的が変わっている。しかしそれでも最終的にはまた側に戻りたいとか拗らせすぎる。超える云々言ってるけど多分この時点ではまだ「エッグマンと違って失敗から学ぶことが出来るから、その点では自分の方が上」くらいのニュアンスなのかな…?まだ「対等」であることにこだわっているのを見ると、本気でエッグマン超えを目指すようになるのはこの後のはずなので。


スピンオフのBad Guys

色々あってワープトパーズは失われ、スターライン本人の戦闘力は限られており(催眠グローブとかかとに付けた電撃針/毒針があるけど、基本的には戦闘員じゃないからね)、なのに計画を進めるために必要な資源と道具は多すぎる現状。くすねてきたエッグマンのロボットたちを使おうにも限界があるので、とにかく当面の仲間が必要。そこでエッグマンとソニックの両方に恨みがある面々に復讐の機会をちらつかせて集め、働かせて用済みになったら全員始末するというのを思いつく。これで始まるのがBad Guysの作戦。
サージとキットが入ってると思しき培養タンク?がちょくちょく出ているので、この時点で2人はもうスターラインの手元にいたと見える。たまに言及する最重要発明品とか未完成の部下というのは彼らのことだろう。

この作戦のメンバーはスターラインの他にザボック、ミミック、ラフとタンブルで、スターラインにとってはあまり思い通りにいかなかったりするけど(めっちゃ疑われていたし結局誰も始末できなかった)目的は達成。その目的とはトライコアなる新しい武装の制作(エッグマン帝国の機械に幅広く使われているパワーコアというエネルギーの結晶から作られたもの。本来パワーコアは3種類あって赤は力、黄は飛行能力、青は速度のバフを使用者にかけるものだけど、トライコアは一つだけで3つの能力全部使い分けが出来るというトンデモアイテム。というかこれまんまヒロズから来てるよね)。そしてエッグマン帝国シグマ基地の乗っ取り。これで数多くの高性能設備を自由に使える基地が手に入っただけでなく、基地を守るロボット軍勢の支配まで可能になる。

更に、計画の修正点が一つ。スターラインはソニックへの執着を捨てない限りエッグマンは野望を叶えられないと見ているので、2人の延々と続く戦いも唾棄すべき悪循環として見ている。自分がエッグマンの代わりに世界征服を果たすというのもその一環。なおこの時点での最終的な目的は「エッグマンに自分を認めさせて対等なパートナーになる」というものだった。それを少し変えたのがザボックの言葉。つまり、まだ協力していた頃の「エッグマンが貴様を再び受け入れることは無い。そして貴様に奴は必要ない。エッグマンになろうとせず奴を超えてみせろ」という励まし(?)と、同盟が破局した後の「結局貴様にエッグマンの後継者は務まらんようだ。計画は雑で意味も無く非情な上に慢心がすぎる。おっと、それではエッグマンと同じか?」という嘲笑。それでエッグマンを真似ようとしたままでは彼の弱点まで引き継ぐだけだと悟り、エッグマンに対等な存在として認めてもらうための手段としてではなく自分がエッグマンより優れていると証明するために世界征服を目指すことになる。
これよく考えるとアプローチが変わっただけで認めてもらいたいのは結局同じなんだよね。後の最終決戦ではエッグマンに「貴方さえ言うことを聞いてくれれば世界は我々のもの」と言っているので、世界征服を果たしたら一緒に支配したいというのも実は変わらなかったりするし。より優れた継承者を目指すにしても前任者を突き落とす気は無いのである。ある意味健気。

余談だけど、このスピンオフ悪役同士の啀み合いと腹の探り合いがめっちゃ面白いからぜひ読んで…というか日本公式さんスピンオフも翻訳出して…(切実)


本編9巻(#33~#36)

ここからのスターラインはトライコアを使っている。
ここでの目的はチャオレースが行われるリゾートホテルでテイルスを攫うことだったらしいが、案の定ソニックたちに敗れてそれは失敗。でもテイルスの尻尾の毛をゲットしたので目的達成とする。


本編11巻(#42と#44)

レストレイション本部に侵入してベル(木製の人形みたいなロボットの女の子。このキャラの素性は一応ネタバレかもだから伏せておく)を拉致。ベルは生き物のような豊富かつ複雑な感情を持つロボットであり、スターラインが必要としたのはその人格のプログラミングに使われたコード。特に「忠誠心、家族愛、その他多彩な感情の数値化。そして再現可能なコードで描かれた目的意識と所属意識」に注目した模様。ベルとの遭遇自体偶然だったので、彼女からのデータで本来なら数ヶ月も研究してやっと得られるはずの成果がいきなり転がり込んできたのは願ってもないことだった。


本編12巻(#45~#49)

ここから「完成」されたサージとキットが本格的に動き出す。本編ではソニックたち視点で2人が起こす事件を追う感じだけど、サージとキットメインのスピンオフであるImposter Syndromeではその裏側の目的とかが描かれる。それも踏まえて順に追っていくと

  • キャンプ場の火災:事故に見せかけて遊びに来ていたエミーたちを殺すことが目的。わざわざ事故を装うなどという回りくどい方法を取るのはスターライン曰く「仲間を殺され復讐に燃えるヒーローは執念深くモラルにも味方してもらえるが、不幸な事故で失ったのなら壊れて失意の底に落ちる」から。結果として大規模な山火事は起こせたがエミーたちの尽力があってキャンプ客たちを含め人命被害も出ず失敗。

  • セントラルシティでの破壊工作:サージはシンプルな破壊行為、キットは地下ケーブルの操作による交通信号と電力網の混線を担当。これは成功してシティ中が大混乱になる。この間スターラインは近くのエメラルドタウンでテイルスのラボに行っていた。テイルスならスターラインがベルを攫った意図にすぐ気付いて対策を立てる可能性があるから、留守中に忍び込んでそれを確かめて証拠隠滅するため。でもメタルウイルスの経験から警備を固めてあるテイルスのラボに侵入することは叶わず撤退。

  • 各地のエッグマンのロボットたちにかけられた召集令:これをやったのはスターライン。元々「エッグマンのロボット軍団の制御権限を奪う」というのも彼の計画の一部で、そのために組んだプログラムをアルファ基地の乗っ取りで試した後、エッグマン帝国の首都となる予定の未完成都市(エッグペリアルシティという名前)の掌握にも成功したので、そこを新たな拠点として本格的に軍勢を集めようとしているところ。


スピンオフのImposter Syndrome

ここでスターラインが問題視している「エッグマンとソニックの戦いの悪循環」について説明が入る。名付けてSonic Cycle(海外ではソニックシリーズの新作が良ゲーだったり残念ゲーだったりするサイクルをこう呼んだりもするけど、まあそういうメタ的なのは小ネタ程度のつもりで入れたんじゃないかと)。これはエッグマンが世界征服を企んで、ソニックと仲間たちが阻み、一般市民にとって日常が戻ってまた最初から繰り返すことを指す。この「進化も未来もあったものじゃない」現状を打ち砕くための計画がOperation Remaster。具体的にはスターライン自身がエッグマンの「代わり」となり、同じくサージとキツナミがソニックとテイルスの「代わり」となるというもの。ヒーローの存在に頼りきりの一般社会はソニックvsエッグマンの派手な戦いに慣れすぎているから、そのvs構図そのものを自分のものに出来るなら世界をも支配出来るという寸法だね。

つまりサージとキツナミは根本からして意図的にソニックとテイルスを模倣して作られた存在。制作者であるスターラインから見たソニックとテイルスなので「短気かつ凶暴な“英雄”とただ卑屈に仕える“相棒”」という歪んだ形になっているのがポイント。まあサージもキットも実はそういう枠で簡単に片付けられるような子ではないけども。あと読者に散々指摘されてるけど水と電気(雷)でソニックとテイルスが苦手なものをそれぞれ能力にしてるのも(メタ的には)狙ってやってる設定じゃないかなと。

スターラインはBad Guysの経験でロボットは強力で忠実なれど生きた戦士の意志と適応力には届かないということを学んだので、「初期案同士を融合させる」ことにした結果がこの2人でもある。最初の回想にメタルソニックを超える云々のプロトタイプメカが出ていたから、元々は「メタルソニックのような機械の配下」と「生身であるサージとキット」は別々のプロジェクトだったのかも知れない。「今までドクターエッグマンはロボットの中に動物を入れてばかりだったが、答えはその逆にこそあったのだ」とのことで、つまりサージとキットは生き物の中に機械を入れる試しであり、生身のまま機械的な強化を施されたサイボーグ

この上に本編やスピンオフで集めたリソースを色々と組み込んでいく。まず、メタルソニックから得られたソニックとシャドウのバイオデータ、パワーコアによるバフ、そしてテイルスの尻尾の毛(から得たDNA情報?)。これらでソニックたちとも対等に渡り合える力を与える。サージはシンプルに戦闘力メインの強化だろうけど、キットの場合は知能系相棒に相応しい知力を与えるために必要だった素材がテイルスのDNAサンプルだったんじゃないかな。更にベルの感情・人格形成に使われたコードを用いて本来の人格を上書きし、スターラインが望んだままの新しい人格を与える。「ソニックが憎い、倒す」「サージを支える、彼女のためならなんでもする」という目的意識は催眠で植え付けたもの。

ある種の安全装置として、2人はスターラインの催眠がよく効くように作られているので、反抗的になったり都合の悪いことを知ってしまった場合は眠らせて「リブート」できる。2人は本来の記憶と人格を消されているから「会ったこともないソニックを殺したいほど憎んでるのは何故?」「何があってもサージの役に立ちたくて彼女の望みが自分の望みなのは何故?」という疑問を持つこともあって、そういう時もリブート。ただしサージには少しづつ催眠への対抗力が出来ていて、スターラインもそれを危険視してはいるけど今更彼らを処分して計画をやり直すわけにもいかないし、任務を開始すれば2人の不安定な精神も落ち着くだろうと楽観的に考えている。

また、メタルウイルスの再生力を安全な細胞レベルのアップグレードにリメイクして組み込んであるので、サージとキットは死んでもおかしくないダメージを負っても傷一つない程度には頑丈。しかし性能や戦闘データを取るための幾多の実験で積み重なった苦痛と臨死体験がトラウマとして残り、2人が精神的に不安定な原因となっている。そのためにも催眠は便利。成長のためには記憶を消すわけにはいかないから、上手い具合に操作してやり過ごしているという感じ。

そもそも改造と洗脳で今の姿になったということは元々一般人だったわけで、何らかの経緯でスターラインの手に落ちる以前の人生があったはずなんだけど、その記憶と記録は全部スターラインによって消されている。よって2人は「本来」の自分を知らない。サージ曰く、拉致されたかも知らなければ志願して被験者になったのかも知れないし、英雄だったのか犯罪者だったのかも不明。「志願者だったのならどうせ碌な人生じゃなかったし、攫われたなら誰も探してくれないような存在」とも。
サージとキットにはスターラインに与えられた現在の性格、目的、願望が全てなのだから、全部紛い物だと知った後も容易くそれらを捨てて自由になることはできない。違う生き方なんて選べるはずもない。この認識が後々2人の新しい目的に繋がることになる。と言えばなんか前向きな感じだけど全然そうじゃない。お先真っ暗でお辛いです。


本編13巻の出来事はこの先の展開に繋がるネタバレ判定にギリギリかかるかと思い割愛。

サージとキツナミの物語、メタルウイルス編で見せられるびっくりするほど重い展開が刺さった方なら高確率でこっちも刺さると思うので、もっと多くの方々に知ってもらいたいですよね。と言ってもメタルウイルスとは方向性が全然違うしんどさですけども。
悪役がみんな個性があって魅力的なのは前からidwソニックの長所ですね。


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