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ザ・ピーナッツバター・ファルコンと岸田奈美さんと小説現代

二十歳を過ぎた頃から、その道の著名人に会いに行く習性がある。ケンタロウさん、飯島奈美さん、ジャンポールエヴァン、鏡リュウジさん、草刈民代さん、ヘレン・ミレン(!女優さんは舞台挨拶だけど)などなど。

今日もそんな調子でnote界の大スター・岸田奈美さんとそのお母さま・岸田ひろ実さんのトークショーへ行ってきた。映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の上映後のトークショーだ。

映画自体はダコタ・ジョンソン狂として昨年からチェックしていて、たまたま観ようとしていた時期にトークショーが重なった形だ。

作品は、論理で説明するというより、ダウン症のザックと兄を失ったテイラー、夫を亡くしたエレノアの旅路を叙情的に見つめたもので、流れに身を任せることのできる心地よい感覚を味わえた。

トークショーで岸田奈美さんが語っていたこととして印象に残ったのが、障害者には「何かできることはないですか」と必ず確認して、やってあげてる感を出さないことNASAが宇宙飛行士の家族として直通の連絡ルームに通すのは原則、配偶者と子供だけ=つまり自分が選んだ家族だけ、という話だった。

福祉業界は障害や疾病を排除せずにその人の強みを生かす・伸ばす、という共存型支援にどんどん切り替わっている。健常者もその影響なのか、ダメなところやできないことを考えないようにするのではなく、ダメな部分も甘んじて受け入れようという人達が増えてきた。とてもいい傾向だ。

大人になってからも毒親に苦しんでいる子供にも、逃げ場や居場所を作ろうと奔走している自治体や民間人にスポットが当たるようになってきた。さすが福祉を俯瞰的に捉えてビジネスにしている方の視点だと思った。

ああ、いい時間を過ごせたと思って映画館を出ると、向こうから岸田さん母娘がやってくるではないか。奈美さんと目があって会釈をすると気に留めてくださっているようだったので、まるで知り合いのように、ありがとうございました、と声をかけてみた。そのまま小説現代を取り出し、サインいただけますか、と言ったら快諾してくださった。そんなこともあろうかと、一応ボールペンを買っておいたのだ。

奈美さんは「でっけーのにありがとうございます!」と言って、サインしながら私の名前も聞いてくださった。イメージ通り気さくオブ気さくな方だった。お母さまにもサインをお願いしたら、邪魔にならないところに…と言って控えめなお人柄が垣間見えた。表札みたいなサインですけど、という言葉に奈美さんが突っ込んでいたのが素敵だった。

最後は適当な言葉が見つからず、頑張ってくださいと声をかけながらお二人に握手を求めてその場を後にした。お母さまがしみじみと、嬉しいねーと呟いていたのが耳に心地良く残った。

東京砂漠を拠点にする自分にとって、関西人はアメリカ人のようなホスピタリティを持っていると感じる。周りをよく見ているし、知らない人にもTPOをわきまえて声かけができる人が多い。岸田さん母娘もまさにそういうタイプの方々だった。

奈美さんは、写真とか大丈夫ですか?と訊いてくださったけど、申し訳なくて、大丈夫です、と即答してしまった。下の階のスタバで頭を冷やして裏口から出たら、自販機で飲み物を買う奈美さんとそれを待つお母さまがいらっしゃった。いつか仕事でご一緒することができますように、と願掛けしておいた。

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