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メーデー
あけましておめでとうございます。
本日の大阪は曇天。
空気が抜けたボールのように
はずまない足どりの人たちが正月あけのど平日を満たす。
はあ。
なんて。
大したボリュームじゃなかったけど
うねりにも似たため息に耳もとがビクッとして
振り返ってみたが
交差点で立ち止まったのは僕だけのようだった。
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派手な装飾も思わせぶりな機能性も必要はない。
時代を象徴するデザインを投影し、削ぎ落とし、美しく仕立てる。
裾に向かって広く通常のコートより大胆なシルエットのAライン。
高級感のある生地を贅沢に、用尺をたっぷり使って作られているにもかかわらず羽織ってみると、軽い。
じゃあ軽いから寒い。かと言われれば寒くない。
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アイコニックなディスク調のメタルボタンがひとつ。
あとは特筆するディテールもないシンプルなコート。
ただ、ブランドが今まで積み上げてきた
レガシーとも呼べる【プリミティブモード】を体現しているかのような。
そんな一着。
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右: Omar Afridi 24AW BALMACAAN COAT
このオマールのコートじゃないけど
実は昔からこういう渋めな、大人っぽい外套が好きで。
背伸びして買ってみたけど、そこまで着ないでいる。
とっておきの一着がある。
どうしても洋服の力を借りたい時にパンパンのクローゼットの中から探し出して、
自分以上を引き出してくれと願って街に繰り出す。
空模様なんて関係ない。
好きな服をひっかけて、こころ晴れやかなののだ。
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久しぶりに着たそのコートは。
僕の記憶よりもシルエットは細く、それでいて重い。
暗い部屋から日の明かりに照ると色は渋いというより少し古臭くうつった。
わずかなためらいの念。
それから少し歩いては行ったものの
梅田のど真ん中。
まるで激流に押し流されているかのような人の流れに反し、雑踏のなか呼吸を整え踵を返す。
静かに。
点滅した信号を横目に交差点を渡り切る。
あれ。
さっき聞こえた声。
あの声の主はもしかしたら、、、。