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続・眺めのいい部屋

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夜の街にさまよい出た私は、Googleマップを頼りに目的の物件へと向かいました。ビル、工事、ビルビル、工事、ビル、工事、みたいな街並み。埃っぽさがスゴい。

10分弱歩いて、目的の物件に到着。さっきの物件も見た目はラグジュアリーでヤバかったけど、こっちもまたスゴい。タワマン。クワマンじゃなくてタワマン(おやじギャグ)。

どこが入り口なのかよく分からず、なんとなーくな感じで侵入してみると、「怪しいやつめ!ちょっと待たれよ!」と、またもやセキュリティに止められました!ナイスセキュリティ!

先ほどと同じ塩梅で説明をすると、「オーナーに迎えに来てもらえ」と言われたので、テキストメッセージで「ごめん!またセキュリティに捕まってるから迎えに来て!」とお願い。

ほどなくしてフィリピン人の、恰幅が良くていかにも裕福そうなマダムがやってきました。うーん……めちゃくちゃ感じが良い。

簡単な挨拶をし、建物の中に入っていく。

まだ真新しい建物で、なんか、まったく人の気配がしない。廊下も新築のホテルの匂いがした。悪くない。悪くないぞ。こういうがらんどうな感じ、嫌いじゃない。

テクテクと歩いていって目的の部屋へ到着。中に入ると……おっさんとおっさんがいた。

彼らはどうやらマダムの家族のようです。推察するに旦那と、息子。

息子はおっさんかと思ったんだけど、まだ若いみたい。髪の感じというかボリュームがアレなのであまり若い感じがしない。金正男みたいな風貌。

で、肝心の部屋ですけど、第一印象は、

「ビジネスホテルだな」

というものでした。

おそらく20平米ぐらいしかないと思う。とてもコンパクト。完全な東横インサイズ。「新築のホテル」と思ったんだけど、「新築の東横イン」だったのかもしれない。

設備は簡単な台所に冷蔵庫、テレビとエアコン。ベッドに変形するソファ。机と椅子。以上。猛烈に簡潔な部屋。

でも、めちゃめちゃ気に入りました。なにせキレイだし、東横イン好きなんで。

大した荷物もないし、何かを買う予定もないし、誰かを招く予定も、ホームパーティをする気もない。もう十分じゃん、これで。もっと広い部屋を求めて賃料が上がったり、設備が古びてたりする方が嫌。聞けば私が最初の入居者だそうです。

オーナーに「いいじゃんいいじゃん。いい部屋じゃん」と言うと、満更でもない表情。互いに好感触です。

しかし、気になる所が一点。

「Wi-Fiって使えるの?」

「あー……やっぱ使う?今んところ無い」


Wi-Fiないかー。そうかー。もちろん自分で準備すれば良いのですが、月々2000ペソ(4000円ぐらい)ちかくかかるし、もちろん端末代もかかるので、できれば備え付けだとありがたい。

そこで、私は人生で初めての賃下げ交渉を始めました。

「Wi-Fi込みの賃料にしてくんない?」

「えー……元々(賃料が)すごい安いのに……それは……」

「頼むよー。お願い!なんでキミってそんなに美しいの?優しさが顔ににじみ出てるよ。セブでキミみたいに魅力的な女性に初めて会ったよ。今度、旦那がいない時に連絡して。電話が難しかったらテキストメッセージでいいよ。今から合言葉を決めよう。『XYZ』ね。これ、ホントは駅の掲示板に書くやつだけど、セブに駅、ないからさ。いつでも送って。ジプニーで飛んでいくよ」


後半はもちろん言ってませんが、「なんでキミってそんなに美しいの?優しさが顔ににじみ出てるよ」までは言いました。

そうしたらなぜか、今度は旦那が私を褒め始めました。

「あんたはハンサムだ」

「年齢いくつ?え?ホントに22歳ぐらいにしか見えないよ」

「とにかくハンサムだ」

「○○○(紹介してくれたイラン人)、あれ、まだ20歳だってさ。見えないだろ?あんたの方が全然若く見える」

「そしてとどのつまりハンサムだ」


「若く見える」と「ハンサム」しか言われてないけど、互いを褒め合い、地獄のような膠着状態。

業を煮やした旦那が私の手を取り、「窓の外を見てごらんよ、いい眺望だぞ」と言いました。

言われるがまま窓に近寄り、カーテンを開くと、

ほぼ、闇、でした。

私は「暗いなぁ」と思いながら旦那に向かって、「Good View」と言いました。英語でお世辞が言えるなんて。英語力の高まりを感じます。

結局結論は出ず、「夜に連絡するね」という話になって内見はお開き。最後に握手をして別れたのだが、息子には握手を拒否されました。なんでやねん。

タワマンを出て、ドミトリーまでの道を歩く。

あぁ、もうすぐドミトリー出れるかもしれないんだなぁ。嬉しいな。共有スペースに誰かいないか気にしたり、無駄に早起きしてシャワー浴びなくてもいいんだな(遅いとシャワーの取り合いになるので)。最高。

とても楽しい気分のまま夕食をとるためマクドナルドへ。

ビッグマックのセット。飲み物はコーラ。セブで炭酸飲むの初めてだなぁ、なんて思っていたら、小さな子供たちが寄って来て、突然私の前でわちゃわちゃと歌い始めた。

「良かったね。良かったねったら良かったね。もうすぐドミトリーを出れるんだ。しょぼ水圧のシャワーとおさらばさ。表で騒ぐパリピももういない。自分の城はすぐそこさ。ここから新生活がはじまるよ♪」

たぶん、いや、絶対違うけど、子供たちはそんな歌をうたってくれていた気がします。

私がニコニコしながら聞いていると、ガードマンがやってきて子供たちを追い払いました。ナイスセキュリティ!

楽しい気分でポテトをディップするためのケチャップを開けようとしたら、なんか上手く切れなくて、ケチャップが爆発し、着ていたパーカーが返り血を浴びたみたいになりました。

それでも私はまだ、楽しい気分のままだったのです。


今日はパイナップルを食べました。炒め物にもパイナップルが入っていました。私は料理に入っているあたたかいパイナップルもOK派です。

※分かってると思いますが、アイキャッチの写真は今回の部屋とはまったく関係ありません。

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