熱帯のハロウィン

おばけが出るぞ、おばけが出るぞ、トリック・オア・トリート!

皆さま、ハッピーハロウィンでございます。

私、生まれてこの方、ハロウィンとは縁遠い人生を歩んできましたが、ここ熱帯ではハロウィンから逃れることができません。街が総ハロウィン状態。エレベーターに乗り込めばそこはモンスターハウス。私自身は何もしておりませんが、ハロウィンの末席にお邪魔させていただくことができました。

社内もめっちゃうるさかった。個人としてはハードめな案件が降りかかってきたので、周囲との温度差がなかなかのものでした。しんどかったー。

さて、そんなハロウィンですが、今日はこの熱帯にやってきて初めてのデートをしてきたのでご報告させていただきます。

ハロウィンが10月31日で、11月1日はAll Saint's Dayというフィリピンの祝日(日本で言うお盆みたいなものらしいです)。んで、11月2日はAll Souls Dayと呼ばれるこちらも祝日。そこから11月3日と4日は土日。

弊社で言うと11月1日は休みなのですが、11月2日は通常営業日でして、まぁ、享楽的なフィリピン人の国民性を考えると、11月2日は休むよねぇ。ここさえ休めば4連休だもんねぇ。ハロウィンでがっつり楽しんで4連休。最高ですもんね。

しかし、多くの社員に休まれると大変に困る。人がいないとお話にならない職種であります。もちろん無理くり出勤させる訳にはいきませんが、できれば、なるべく、なんとか、出勤してきてほしい。

そういう意味もあって、2日にちゃんと出勤してきた社員のための特別なイベントとして、抽選で高級なギフトセットが当たりますよ、というイベントを催すこととなりました。

そして、私が特命係長(係長ではない)として、そのギフトセットを調達する係に任命されたのです。きつー。何あげれば喜ぶのかまったくわかんねー。

で、さすがにおれ一人じゃ心細かろうということで、一人ローカルスタッフがあてがわれて、このプロジェクトの人員は私とそのローカルスタッフとなり、今日は2人で終業後にギフトセットを買いに出かけたのです。

「おれ、セブに来て初めて、女性と二人で出かけますよ」

「おめでとうございます。初めてが○○かー。良いんじゃないですか。何言っても笑ってくれるし」

「そうですね。胸が高鳴ります」


先輩とそんな話をし、

「え? 二人でどっか行くんですか?」

「もちろんデートです」

「え? え? なんでその組み合わせ? おかしくないですか?」

「おかしくないです! ハロウィンなので!」


事情を知らない日本人女子社員に無意味な衝撃を与えつつ、極秘裏のプロジェクトは進行していきます。「極秘裏」っていうか、周知するまでもないプロジェクトなだけなんですけどね。

決戦の前に社食でパイナップル。パイナップルも美味いけど、久々に飲んだ味噌汁が落涙するほど美味い。全然大したもんじゃないけど染みた……。

腹を満たした私と彼女は、会社を出て、タクシーに乗り込んでショッピングモールへ。

ショッピングモールには人があふれていました。私はまあまあ高額な予算が入ったバッグをギュっと握りしめてモールの中を歩きます。スラれたらエアタンクなしでセブの海にダイブする羽目になるかもしれません。

ま、そんな心配は杞憂で、モールに入ったらすぐに目的のスーパーマーケットを発見。で、続けざまにレジ脇に積まれたギフトセットを発見しました。


これはどうやらクリスマスに使う食材のパッケージセットらしいのですが、値段も予算にぴったんこ。同行しているスタッフに聞くと、「これはいいわよー。もらえたら嬉しいもん」ということで、これに即決。店に入って2分で決まりました。今日の買い物、おしまい!

スーパーの店員が商品を出してくれるのを待つ間、私は同行のスタッフにひとつ提案をします。

「お子さんがいるって言ってたよね。今日はハロウィンだから、おれからお菓子をプレゼントするよ」

「そんなのいいわー。悪いわよー」

「いいのいいの。あなたにあげる訳じゃなくてお子さんにあげるんだから。お子さんはきっと遠慮しないよ」


という訳でお菓子売り場へと移動。

ちょうどよくパンプキン型のバケツがあったので、そこにチョコレートとか、マシュマロとか、キャンディーとか、そういったものを詰め込んで彼女に渡しました。

「はい、どうぞ。ちゃんと歯磨きするように言ってくださいね。じゃないとおばけが家に乗り込んでくるよ、と伝えてください」

言ってて「ハロウィンじゃなくてなまはげだな」と思いましたが、細かいことは気にしちゃいけません。和洋折衷。ここは熱帯。10月からクリスマスムードが高まる国なのです。

帰りの車では彼女が毎日ジプニーに乗って2時間かけて通勤しているという話を聞き、ここ熱帯で、熱帯の人間が働くのは大変なことだなぁ、などと感じました。それでも彼女の給料は、フィリピン人の平均所得より高いはずです。

街のネオンがきらびやか。改めてもうクリスマスモードなんだなぁ、などと思います。あっついから、そんな気分にはまったくなれないけど。

やがてタクシーが会社の前に到着すると、彼女はそこで降りていき、私はそのまま自宅へと向かいました。

で、コンドミニアムのエントランスからひーひー言いながら運びこんだのが、これ。

写真では伝わりきらないと思いますが、缶詰が多くてめちゃくちゃ重い。これを会社に持っていかなくてはいけません……。

ここは熱帯。朝から汗だくで荷物を運ぶ自分を想像しながら、いまはサンミゲルライト(缶ビール)で晩酌しております。なんか、良いハロウィンだったな。

いまふと、「どうせ会社の前で彼女を降ろしたんなら、会社に運び込んじゃえば良かったな」と思いましたが、すべては後の祭り。そのような思考はアルコールと共にまどろみとして溶けていくでしょう。

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