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透析患者のかゆみに対する治療薬「レミッチ(ナルフラフィン)」とは?

透析患者のかゆみは生活の質(QOL)を大きく低下させる症状の一つです。

かゆみの原因は皮膚の乾燥、尿毒素の蓄積、副甲状腺ホルモン(PTH)の上昇などさまざまですが、その治療法として レミッチカプセル(一般名:ナルフラフィン塩酸塩) という内服薬が広く使用されています。

今回は、レミッチの作用機序や効果、副作用、服用時の注意点について詳しく解説します。



1. レミッチ(ナルフラフィン)の作用機序

レミッチは 「中枢性Kオピオイド受容体作動薬」 に分類される薬で、透析患者に特有のかゆみを軽減する効果があります。

オピオイド受容体とかゆみの関係

  • 体内には「オピオイド受容体」と呼ばれる神経の働きを調整する仕組みがあり、主に「μ(ミュー)」「κ(カッパ)」「δ(デルタ)」の3種類が存在します。

  • その中でも「κ(カッパ)オピオイド受容体」は、かゆみを抑える働きを持っています。

  • 透析患者では、尿毒素などの影響でオピオイドバランスが崩れ、かゆみが増すと考えられています。

レミッチはこの κオピオイド受容体を刺激 することで、かゆみを和らげる効果を発揮します。


2. レミッチの効果

レミッチは透析患者の 難治性のかゆみ に対して有効とされています。

臨床試験での効果

  • 透析を受けている患者さんの 約6割 において、レミッチの服用後にかゆみの軽減が確認されています。

  • かゆみの 頻度や強さが軽減 し、夜間の睡眠の質が向上することで QOLの改善 も報告されています。


効果発現までの期間

  • レミッチは 服用開始後2週間程度で効果 が現れるとされています。

  • ただし、個人差があり、1ヶ月以上かかる場合もあります。


3. レミッチの服用方法

  • 通常、1日1回、就寝前に2.5μgを服用 します。

  • 効果が不十分な場合は 5μgに増量 することがあります。


4. レミッチの副作用

レミッチは比較的安全性の高い薬ですが、以下の副作用が報告されています。

  1. 幻覚・錯乱(意識障害)

    • 高齢者に多く 見られる副作用で、「幻視」「錯覚」などが起こることがあります。

    • もし 「見えないものが見える」「現実と違うことを話す」 などの症状が出た場合は、すぐに医師に相談する必要があります。

  2. 便秘

    • オピオイド系の薬のため、腸の動きを抑制し、便秘を引き起こす ことがあります。

    • 食物繊維を意識した食事や、適度な水分補給が推奨されます。

  3. 食欲不振・吐き気

    • まれに食欲が低下したり、気持ち悪くなることがあります。

  4. 眠気

    • 服用後に強い眠気を感じることがあります。運転や危険作業には注意が必要です。


5. 服用時の注意点

  1. 飲み忘れた場合

    • 翌日に2回分をまとめて飲むのはNG!

    • 飲み忘れた場合は その日の分をスキップし、翌日から通常通り服用 してください。

  2. 他の薬との相互作用

    • 抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピンなど)や、他のオピオイド系薬剤と併用すると副作用が強く出る可能性 があります。

    • 必ず主治医に服用中の薬を報告しましょう。

  3. 長期服用の注意

    • 透析を続けながらレミッチを服用することで、かゆみが軽減するケースが多いですが、 長期的な使用により効果が減少することもある ため、定期的に医師と相談しましょう。


6. レミッチを使うべき人・使えない人

使用を推奨される人

  • 透析を受けていて、保湿や食事療法を行ってもかゆみが改善しない人

  • かゆみがひどく 夜に眠れない人

  • かゆみが QOLを大きく低下させている人


使用できない人

  • 透析を受けていない人

  • 肝機能障害が重度の人

  • 過去にレミッチでアレルギーを起こした人

  • 認知症や精神疾患があり、幻覚が出やすい人(要注意)


まとめ

レミッチ(ナルフラフィン)は、透析患者の 難治性のかゆみを軽減する有効な治療薬 です。

κオピオイド受容体を刺激することで、かゆみを抑える作用を持ち、特に 夜間のかゆみやQOLの低下を防ぐ効果 があります。

しかし、副作用(幻覚・錯乱・便秘など)もあるため、注意が必要 です。

服用中に異変を感じた場合は、速やかに医師に相談しましょう。

透析患者のかゆみは、 生活の質に大きな影響を与えます

レミッチのような薬をうまく活用しながら、スキンケアや食事管理、透析の適正化を組み合わせて、快適な生活を目指しましょう!

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