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透析現場での消毒剤:次亜塩素酸ナトリウムと過酢酸水素の役割と併用の理由

透析の現場で使われる消毒剤には、次亜塩素酸ナトリウムと過酢酸水素(過酢酸を含む薬剤)があります。これらの消毒剤は、透析機器の清潔を保ち、感染を防ぐために重要な役割を果たしています。今回は、なぜこの2つの薬剤を併用するのか、その理由を初心者向けに説明します。


次亜塩素酸ナトリウムの役割

次亜塩素酸ナトリウムは、強力な酸化力を持つ消毒剤です。細菌やウイルスの細胞膜やタンパク質を破壊し、これらを無効化する効果があります。特に、細菌やウイルスの「外側」を破壊するのに効果的です。透析機器のチューブやダイアライザーの内部に残った有機物や細菌の除去に優れています。

しかし、次亜塩素酸ナトリウムはバイオフィルム(細菌が作る膜のようなもの)には効果が弱いという弱点があります。バイオフィルムは、細菌が生き残るために作る保護膜のようなもので、一度形成されると普通の消毒剤ではなかなか除去できません。


過酢酸水素の役割

過酢酸水素(過酢酸)は、バイオフィルムに対して非常に強力な消毒効果を持つ薬剤です。バイオフィルムを分解し、中に隠れている細菌まで殺菌することができます。また、次亜塩素酸ナトリウムよりも幅広い範囲の微生物に対して効果があるとされています。

ただし、過酢酸水素単独では、有機物の除去能力が低いため、汚れを十分に取り除くことが難しい場合があります。


なぜ2つを併用するのか?

次亜塩素酸ナトリウムと過酢酸水素を併用する理由は、それぞれの弱点を補い合うためです。

  • 次亜塩素酸ナトリウムは、機器内の有機物や表面の細菌・ウイルスをしっかりと除去しますが、バイオフィルムに対しては効果が弱い。

  • 過酢酸水素は、バイオフィルムを分解し、細菌が隠れている場所まで届いて殺菌しますが、有機物の除去は得意ではありません。

このため、まず次亜塩素酸ナトリウムで表面の汚れや有機物をしっかりと除去し、その後に過酢酸水素を使ってバイオフィルムや微生物を完全に除去するという手順が一般的です。この2剤併用により、透析機器の内部がしっかりと消毒され、感染リスクを最小限に抑えることができるのです。


まとめ

次亜塩素酸ナトリウムと過酢酸水素は、それぞれ異なる強みを持つ消毒剤で、透析機器を清潔に保つために欠かせません。この2つを併用することで、より効果的に細菌やバイオフィルムを除去し、透析治療が安全に行えるようにしています。

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