酢酸不耐症とは?透析患者ケアのための基礎知識
透析治療の現場で患者さんから「透析中に気分が悪くなる」「血圧が急に下がる」などの訴えがあった場合、それは「酢酸不耐症」の可能性があります。
この記事では、酢酸不耐症とは何か、どうして起こるのか、そしてスタッフとしてどのように対応すればよいかを分かりやすく解説します。
酢酸不耐症とは?
酢酸不耐症とは、透析液に含まれる酢酸(アセテート)に対して患者さんの体が適応できず、様々な症状が出る状態のことです。
透析液に使われる酢酸は、体内で重炭酸イオン(酸を中和する物質)に変わる役割があります。
しかし、酢酸が過剰に入ると肝臓での代謝が追いつかず、血管拡張や電解質バランスの乱れを引き起こします。
その結果、患者さんに不快な症状が現れることがあります。
酢酸不耐症の主な症状
酢酸不耐症では、透析中や透析後に以下のような症状がみられることがあります。
血圧の低下(低血圧)
酢酸が血管を広げるため、血圧が急に下がり、ふらつきや脱力感を訴えることがあります。
吐き気や嘔吐
消化器系に影響を与え、気分が悪くなる患者さんもいます。
筋肉のけいれん
酢酸が電解質のバランスに影響を与えることで、筋肉のけいれんが起こる場合があります。
倦怠感や疲労感
酢酸の代謝にエネルギーが使われることや、低血圧が原因で透析後に強い疲労感を訴えることがあります。
動悸や息切れ
酢酸が循環器系に影響し、心拍数が上がることがあります。
酢酸不耐症が起こる原因
酢酸不耐症の背景には、患者さん個人の体質や病態が関与しています。
肝臓の代謝負担
酢酸は肝臓で重炭酸に変わります。肝機能が低下している患者さんでは、この代謝がうまくいかず、酢酸が体に溜まりやすくなります。
循環器への影響
酢酸には血管を拡張させる作用があるため、元々低血圧の患者さんや心臓に負担がかかっている方では症状が悪化しやすくなります。
透析液の組成
酢酸濃度が高い透析液を使用することで、患者さんの体への負担が増加する場合があります。
スタッフができる対応策
酢酸不耐症を疑う症状がある場合、患者さんが快適に透析を受けられるよう、以下の対応を心がけましょう。
透析液の変更を検討する
酢酸を含まない「酢酸フリー透析液」や、酢酸の代わりにクエン酸(シトレート)を使った透析液の使用を医師に相談します。これにより症状が軽減することがあります。
透析中のバイタルサインの観察
血圧や心拍数をこまめに測定し、異常があればすぐに対応できるよう準備します。
患者さんへの説明と安心感の提供
酢酸不耐症について患者さんに簡単に説明し、症状が出たらすぐに知らせるよう伝えます。「なんだかわからないけど辛い」と思わせないよう、安心感を与えることが大切です。
肝機能や体調の確認
酢酸を代謝する肝臓の機能が低下していないか、定期的な検査結果を確認します。また、普段の体調や薬の使用状況についても聞き取ります。
透析中の体外循環の調整
血流速度や透析液の流量を適切に管理することで、循環器系への負担を軽減できます。
まとめ
酢酸不耐症は透析中の患者さんが訴える不調の一因となることがありますが、透析液の調整や患者さんへの細やかなケアで対応可能です。
患者さん一人ひとりの症状や背景に合わせて柔軟に対応し、透析を快適に受けてもらうための工夫を続けましょう。
スタッフ間で情報を共有し、早期対応を心がけることが重要です。