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中国現地人材が定着しないのは、あなたのせいかも知れない
中国事業を展開する日系企業が、現地人材の定着に躍起になっている。
日系企業は中国の商品市場・労働市場において、
徐々に競争力を失ってきた結果、
中国現地人材の定着/撤退に向けた現地人材の解雇という2パターンの問題を抱えるようになった。
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「人を採ってもすぐ辞める」
「『農耕民族』的人材しかうちには残っていない」
と嘆き、
その解消のために現地人材への研修等の投資を増やしている企業も多い。
しかし、現地人材の定着のためには、
実は現地人材への投資よりも、
むしろ日本人駐在員が果たす役割を考える方が重要である。
本記事では、日系企業の事例をもとに、
その理由を深堀りしたい。
日本人駐在員が果たすべき役割とは?
日本人駐在員が果たすべき役割とは、周辺環境づくりである。
周辺環境には、
給与・評価・ポジションなどのハードなものと、
リーダーシップのようなソフトなものとがある。
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そして現地人材が日系企業を去る大きな理由の1つが、
日本人駐在員がつくる周辺環境の不備に端を発する不満である。
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筆者は、
周辺環境の整備に関する日系企業の取り組みには、
企業間で明らかなフェーズの違いが存在すると感じている。
フェーズごとの主な施策を一覧化すると、
概ね以下のようになるだろう。
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改めて見てみると、
先進的な日系企業の取り組みも、
特に奇抜な施策をしている訳ではない。
「こうあるべき」ということは、
多くの日系企業にとっても納得いくものであるように思う。
では、
「べき論」はある程度定まっているのにも関わらず、
なぜできる企業・できない企業が分かれてしまうのだろうか?
なぜ役割を果たせないのか?
日本人駐在員が周辺環境の整備について、
「べき論」を実施できない企業がいることには理由がある。
それは、
多くの日本人駐在員が、
社内に残る農耕民族的な現地人材と、
一方で狩猟民族的人材を獲得するための追加投資に踏み切れない日本本社との間で板挟みとなっており、
負のスパイラルから抜け出せていないからだ。
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では、
この「構造的な機能不全」とも言える状況の中でも、
「べき論」が実施できる企業は、
そうでない企業と何が違うのか?
役割を果たせている企業は何が違うのか?
筆者の知る限りでは、
「べき論」が実施できる企業には、
日本本社経営陣が中国事業に本腰を入れる覚悟を決めたか、
そうでない場合は現地で「上手くやれる」個人の存在があったか、
の2つのパターンがある。
前者の「日本本社経営陣が中国事業に本腰を入れる覚悟」は、
現地の日本人駐在員からすると、
自身ではコントロールできない要素も多い。
一方で、後者の「現地で『上手くやれる』個人」の行動を詳しく見てみると、
現地で実績を積み上げつつ、
その成果をもとに日本本社経営陣を強かに利用している、
という共通点を持つ、
というのがこれまでの日系企業とのディスカッションを経て得た筆者の見解だ。
具体的な行動としては、
以下のようなものが挙げられる。
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では、現地で「上手くやれる」個人は、
具体的にどのような行動から着手してきたのだろうか?
今日からできること
筆者の見る限り、
現地で「上手くやれる」個人に共通するのは、
早急に誰かを変えようとするのではなく、
社内外にシンパをつくる、ということだ。
社内向けには日本本社のグローバル人事部等も巻き込みつつ、
社内のコミュニケーションでは、
例えば「改革」は敵をつくりやすいため、
あえて使用しない、というような細かな工夫も行っている。
一方で、社外においてもネットワークをつくり、
日系他社や最新の現地企業事例へのキャッチアップを行いつつ、
「背中を押してもらう」機能として利用している例もある。
ときにはその伴走者として、
弊社のようなコンサルティングファームを起用して頂くこともある。
日本人駐在員にとっての周辺環境づくりは、
ときに孤独で、時間のかかる取り組みではあるものの、
今回のような記事が最初の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いである。
本記事の執筆者は株式会社コーポレイトディレクションの外山一成です。
お問い合わせ先:sotoyama@cdi-japan.co.jp