家族の変化と新しい仕事
じいちゃんが入院した。
脊椎の圧迫骨折で、歩けなくなったからだ。
さらに悪いのは、つぶれてしまった骨が神経を圧迫しており、本人がひどい痛みを感じていることだ。
身体を起こすのがやっとなようで、あんなに人に頼ることを嫌っていたじいちゃんが、トイレに行くために私に抱っこされるのをすんなり受け入れていた。よっぽど痛いんだと思う。
どうにもこうにもできないため、救急車を呼び、じいちゃんはそのまま入院となった。
それで困るのは、ばあちゃんである。
ばあちゃんは認知症で、短期記憶が保持できない。時間感覚もあまりないので、誰かが声をかけてくれないと、昼ご飯を食べるのを忘れちゃったりする。その程度ならまだいいが、味噌汁を温めようと鍋を火にかけたことを忘れちゃったりするので、割と危険なのである。
じいちゃんが家にいれば、「12時よ。お昼食べるよ。」「今日はデイサービスよ。準備しときなさい。」「火が付きっぱなしよ。止めなさい。」などと声をかけてくれていた。それがなくなってしまったので、ばあちゃんは大変だ。
いや、ばあちゃんはそんなに大変だという自覚がない。多分、私が大変だ。
今日もじいちゃんのお見舞いに行ったが、「う~ん、なかなか立てるようにならんねぇ…」と、浮かない表情だった。
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新しい職に就いて、1か月が過ぎた。
この職場の社員さんは仕事ができる。各々が自立・自律していて、与えられた仕事をきっちりこなしている。窓口業務や電話対応も、誰かに負担が集中しないように、阿吽の呼吸で協力し合っている。業務中におしゃべりもしているが、ほどよい時間で切り上げる。そして、基本的に定時でサッと帰る。頭脳明晰かつ協調性がある人たちの組織には多くのルールが不要であるということを、私はこの職場で早くも学んだ。
ひそかに尊敬している社員さん(わくわくさんに似ているので、以下わくわくさんと呼ぶ)がいるのだが、彼の部下に対する声のかけ方が素晴らしい。「●●さん、今話しかけていいですか?」「この仕事をお願いしたいんだけど…」「●●さん、今抱えてる仕事どのくらいあります?キャパオーバーになってないですか?」「もし難しかったらいつでも言ってくださいね。こちらで引き取ることもできますので。」こんな配慮に満ちた言葉を、わくわくさんはサラッと涼しい顔で言うのである。すごいなと思った。
自分の仕事をこなすのは当たり前・周囲の動きを見てフォローするのも当たり前、という職場文化。そしてみんなそれができている。
この職場の中で、明らかに自分が一番仕事ができない。
それはそれでメンタルにくるものがある。
自分より下を見て安心する、という選択肢はない。
ただただ自分より上の人たちを見上げ続けるだけの日々が続く。
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新しい職場での人間関係の作り方がわからない。
いま、それにとても困っている。
業務上の会話はちゃんとできている(と、思う)。
けど、もう少し相手に踏み込むというか、グッと距離を縮める方法がよくわからない。
社交的な人はうまく自己開示しつつ、相手の情報も引き出しつつ、関係性を構築していってるなと思う。
私にはそれができない。
もう30年も生きたので、原因はハッキリわかっている。他人<自分に興味があるからだ。自分本位が過ぎるのだ。
自分の感情の動きや考えを深めることに興味がありすぎて、他者への関心を疎かにしてしまう。
考えを深めるというと聞こえがいいが、答えが出ないような問題についてウジウジ考え続けるだけなので生産性はまるでない。頭の中で思考することで安心しようとしていたり現実逃避していたりするので、そもそも問題の解決を目的としていない。
そんな人間なので、ランチタイムを同僚とワイワイおしゃべりしながら楽しむということは、天地がひっくり返ってもできない。
今の職場でも、私はマイペースに1人でお弁当を食べている。
会話があんまり好きじゃない自分にとって、ランチタイムに会話なし(他の人はほどほどにおしゃべりしている)なのは問題ないし、むしろ助かっているのだが、一人黙々とお弁当を食べる新入りの存在は周りに気を遣わせていないだろうかと気になったりはしている。
こういうときに気にするだけで自分から周りの人に話しかけないのが良くないなと思う。
が、無理して興味のない話題を振って、会話を盛り上げられず&続かず、結果気まずい沈黙になるくらいなら、黙ってた方がマシな人間関係が作れることを私はこれまでの人生から学んだ。なので、今後も黙々とお弁当を食べると思う。
業務に関する会話はちゃんとしますから、このままの私で許してください…と祈りながら食べる。
自分からもっと自己開示していくべきなのか??
しかし開示するほどの自己もない。
だからといって黙っていればいるほど、周りの人からの「この人何なん?」みたいな空気が濃くなるような気もする。被害妄想かな。
そんなことを思いながら、明日出勤したくないなぁなどと生ぬるいことを考えている昼下がり…。