両隣があしたのジョーだった:King Gnu
あたりめです。
King Gnu 5大ドームツアーのファイナル・札幌公演が無事終演しました。
私はツアー初日と2日目にあたる京セラドーム公演に参加していて、初日帰宅後に脳直で書き殴ったレポもあります。(脳直で書いた結果 今読むと若干語弊がある気も…訂正…すべきか………?)
ヌーのライブは毎度 脳みそがショートするような爆発的な良さがあるのだけど、今ツアーはこれまでの良さを遥かに超えてきていた。ニュアンス的には『熟してる』のほうが近いかも。
「いつも最高だけど、今回だけはまじで見逃さないでほしい」、札幌公演のライブビューイング&オンライン配信が決定してから、ちっぽけなSNSアカウントで何度も宣伝した(つもり)。観たよという方が1人でも居たらめでゃぐちゃにゔれじいな。洗いたてホヤホヤの手をスタンバイするので握手させてください。
私は迷うことなくライビュのチケットを確保し映画館へ足を運んだ。普段 映画を観に行くタイプではないため、ライビュでのみ映画館を活用する人間になりつつある。それぐらい、ライビュは良すぎるのだ。
すべての公演が終わったので、気兼ねなくセトリに沿って感想が言えるな〜〜、Spotifyではすでにセトリのプレイリストも出ている。
(※ 'W●RK' は東京公演、'It’s a small world'・'Prayer X' は札幌公演のみ)
ライブって、恥じらいみたいなライブ特有の "もじもじ感" が序盤の空間に漂っていると思うのだけど、ヌーは今回それを最初の4曲でべりっべりに剥がしにきていた。(※映像は今ツアーの東京公演)
映像・演出含め5曲目の 'MIRROR' からが本番ですよ〜、という雰囲気があったのだけど、フロアの全員がそこにアップを終えた状態で臨んでいる感じがした。喉も身体も心も完全にほぐれていてまさにマッパ、温泉行って裸の付き合いを経た空気感だった。何の話してんだっけ?
4曲目の 'STARDOM' のサウンドに関しては実際、"まさにこれから勝負が始まるその瞬間" みたく思っているところがあるので、この位置に入っていたのは個人的に完璧すぎた。
ライブを目撃した全員の記憶に最も濃く焼き付いているのは間違いなく 'DARE??' だと思う。アルバムではインストとして収録されていたこの楽曲、今ツアーではバンド改名前のSrv.Vinci時代から大切にしている未発表曲 'vividred' とのマッシュアップで披露されてしまったのである。
これについては とある雑誌で言及していたようなので、読んでいた方は心構えが出来ていたかもしれないが、そんなことを微塵も知らなかった私はあまりの事態に初日の京セラは仁王立ちのまま聴いてしまった。何が起こっているのか全く飲み込めなかった。確実にアホの面をしていたと思う。
札幌公演ではこの曲間、常田さんと理がお互いのかおをみて微笑みながら歌っていた。
これはどの公演も同じだったかもしれないけれど、私は現場では肉眼で表情を捉えられなかった。そういうこともあり、現場では音楽に軸を置き音に全身を委ねて楽しむ要素が強かったのだけど、ライビュではメンバーひとりひとりの表情がよく映し出されていたので、現場とはまた違う感情を抱きながら楽しむことができたように思う。
'DARE??' と 'vividred'、それぞれが纏う衣装を交換している様子を五感を通じて味わわせてもらっている感覚だった。常田さんと理の微笑みはまるで、そんな一張羅を纏った楽曲が ドームという大舞台で踊っているその背中をやさしく見守る親のようだった。
私は '硝子窓' が大好きなのだけど、この楽曲は正直、もっと世界にバレるべきだと思っている。
King Gnuらしい音楽、King Gnuにしか出来ない音楽、そういうものを考えたときに 今ド真ん中・頂点に立っているのは間違いなく '硝子窓' だと思うのだ。
『綺麗』だけではなくそこに『廃れ』を共存させ、双方のなかに潜む "うつくしさ" を濃度高く抽出して楽曲を描く。これが私が個人的につよく感じている彼ららしさであり、同時に彼らにしか出来ないことなのだ。'硝子窓' はそういった要素がこれでもかと凝縮された至極の一曲なのである。
ボーカルについては、声の太さ(パワフルさ・エナジー)が生む表現は幅に限界があって、ある程度天井が見えていると思っているのだけど、対して 声の細さが生む表現にはそこまでの限度を感じない気がする。ピラミッド図でいうところの下層が細さ。幅が広くどこまでも拡張できるイメージ。
理のボーカルはこの『細さが生む表現』、脆さ・繊細さ・儚さ、呼吸そのものに近づくような表現がずば抜けて深く、広い。本当に底なし(幅なし)沼なのだ。
'硝子窓' はサウンド面での魅力に続いて、こういった理のボーカルの魅力までもがメーターを吹っ切ってしまっている。まじでヤバイ。アンタら、こんな楽曲生み出して一体おれらをどうするつもりなんだ。一旦そこに正座してほしい。落ち着いて話をしよう。(お前が落ち着けよ)
音源の時点で盛大にヤバイが、ライブで聴くこの楽曲、まじでうちのめされる。一周回ってもう何も出来なくなる。かろうじて肺呼吸のみを継続している状態。
理のボーカルがもはやセリフにしか聞こえないのである。これは歌ではなく語り、歌うための呼吸ではなく言葉とともに漏れる吐息なのだ。
ライブ映えする楽曲として、私がひとりで何度も口うるさく挙げているのが '泡' である。今回も今回とて、最高ダッタ〜〜〜。
ボコーダーをはじめとして、様々なサウンドを用いて表現される『泡』。それに夢中になるうちに、気付けば海の深いところまで溺れてしまっていたかのような、そういう不思議な感覚におそわれるのが私はとても好きだ。
'泡' は常田さんが初めてつくった楽曲としてひろく知られている。初期の 'ABUKU' はサビが存在せず難解で とても大衆的とは言えない楽曲だったが、数年越しに装いを変え '泡' として今もなおバンドに大切に愛されている楽曲のひとつである。
ヌーは比較的新譜(アルバム)をリリースするのがローペースなのだけど、これについては以前「一つひとつ、丁寧につくっていたらこれくらいはかかる」と言っていて、空に向かって軽率に告白しかけたことがあった。
それから、アルバムが既発曲(シングル)で埋まるのはいかがなもんかと思いつつも、昨今の音楽業界における異常な消費スピードに対し「そんなに短期間で消費されるような音楽をやっているつもりはない」と想いを述べた上で、今作に含まれている既発曲は その多くが『ALBUM ver.』として再度手を加えられ作品の一員となっている。
好きすぎるだろ。もう面と向かって告白させてくれ。
King Gnuを好きな理由なんて数え切れないほどあるけれど、そのなかでも私は彼らのこういう、音楽に対してどこまでも真摯なところが本当に、本当にたまらなく好きだ。
'Sorrows' のサビ終わりに毎回トーン違いで繰り出される常田さんの「Sorroooooooooows」、今回はどうかと楽しみにしていたら あろうことか口元をニヨニヨさせながら「サッポロォォォォォゥズ…」と叫び その後も一生かおをモニョモニョさせていたので思わずデカい声を出して笑ってしまった。あれぜってぇに何日も前から考えてただろ。確実にそのかおだったぞ。こういうところもたまらなく好きですね。ハイ。
自分は今 映画館でライビュを観ているのに、終始 札幌に居るんじゃないかと思うほどの没入感で最高の時間だったな〜〜。これは現地組の方々が熱狂と呼ぶにふさわしい大歓声を沸き起こしてくださっていたことが間違いなく大きい。本当に素敵でした、ありがとうございました。
同時に、ライビュにはライビュにしかない良さがあることも改めて感じられた。低音のエッジがくっきりするし、表情は当然ながらライビュのほうがよく見れる。
ライビュの雰囲気は各会場に集った方々の個性が出る。なんだかガチャのようで それもまたライビュの楽しさのひとつだと私は思っているのだけど、今回私の両隣に座っていた男性の方がどちらもあしたのジョーになっていて大変だった。まじで燃え尽きていた。
左隣の方は開始直前おもむろに上着を脱ぎ始め、どこまで脱ぐんだと横目にチラチラ見ていたら最終 理グッズのタンクトップスタイルになっていた。彼は公演中 終始手を振りフォーーーと声を上げ続けていた。まさに『本気タイプ』だった。
右隣の方はタンクトップではなく私服のパーカーだったのだけど、こちらは逆に声を上げることなくひたすらうちのめされ項垂れる『降参タイプ』だった。ヌーがぶっ飛んだ演奏を畳み掛けるたびに 絵に描いたような頭の抱え方をしていたので、笑いを堪えるのに必死だった。
めちゃくちゃ愉快で最高の両隣さんでした。
ツアーファイナルにしてアンコールの楽曲追加、粋すぎた。
'It's a small world' は私がヌーのなかで最も愛する楽曲のひとつである。'Prayer X' は追加することが決まっていたみたいだけど、イッツアは常田さんの思いつきから披露された完全アドリブだったとのこと。
子どものようにすこしわるい笑みを浮かべギターを鳴らし始めた常田さんと、彼に「エッやるの?」という戸惑いの瞳を向けた理、そんなふたりをやさしく見守る勢喜遊と新井先生、ぜんぶが愛おしかった。常田さんって本当に『子ども』をもっている。すこしテヒョンに似たものを感じるところがあるなぁ。
「それもいい、いっそ君だけでいい」とカメラを見つめ柔らかに弧を描いた彼の目尻と口角をみて、ここから続く4人のアジアツアーの道が花だけで満ちることを願い ほんのすこし涙がでた。
刀を持たないサムライたち、どうか身体には気をつけて、余すことなく世界に魅せてきてください。あなたたちの音楽とともに今を生きていること、心から誇りに思っています。