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オタクって何でも供給になるから:Vaundy


脳みそが好きだな〜〜〜って人、いますか?



あたりめです。

わりと久しぶりに書いた文章だというのに、ド頭から若干狂気じみた問いかけをしてしまった。


「この曲は抽象表現が多くて__《大脳》と《心臓》が出てきますけど、自分の魂が、大脳に宿ってるのか心臓に宿ってるのか、いや、どっちにも宿ってて、そのふたりがしゃべってて血圧を上げていく__という内面を描くためにキャラクターとして出てきていて。」

ROCKIN'ON JAPAN 12月号 より


これはVaundyが楽曲 '風神' のMVについて語っているインタビューの一部である。




私、今いちばん『脳みそが好きな人』、バウくんなんだよなぁ。彼は物事に対する考え方や視点に必ず『受容と尊重が滲むユニークさ』を持っている。少なくとも、私の瞳にはそう映っている。

彼が話すことについては、私は相変わらず半分も理解できていないように思うけれど、その『分からなさ』にモヤモヤしたことは一度もなく、不思議といつも面白さを感じている。バウくんの脳みそは、今の私にとっていちばんの興味の対象なのだ。




インタビューにある『脳に宿る魂』と『心臓に宿る魂』、バウくんはどちらかといえば脳に宿る魂のほうが、より色濃いエネルギーを持っている気がする。私は過去も現在も、もうず〜〜〜っと心臓魂!!!!!のアーティストばかりに惹かれてきた自覚があったので、この異質感も相まって深い面白さを感じているのかもしれない。


風神に関するインタビューやロンドンの密着ドキュメンタリーについて、書き残したいことがそれはそれは山程あるのだけど、何せ時間がかかりそうな気配しかしない。なのでそれとは別に、先にこちらについての脳直感想を。

※現在はツアーに沿って各地域ごとに特別上映中



マジでこれ、圧っっっっっっっ倒的『体感』だった。

YouTubeにも何曲か映像をあげてくれているけれど、こういうものはやはり映画館で観るべきだな〜〜と痛感した。



この作品の『体感』がどんな感じだったかというと、両方が同時に存在したんだよな。

一つは身体全部に覆い被さってくるようなデカさで、激しさや華やかさを意識するもの。もう一つは、自分の身体で包み込めるようなちいささで、繊細さや鼓動を意識するもの。
打ち上げ花火と線香花火のダブルパンチ的なそれ、遊園地で抱く感情と家で抱く感情のダブルパンチ的なそれ、だった。体感の全部盛りである。




それから、私は計2回を違う劇場で観たのだけど、絶対に音がデケェ劇場を選んだほうがいいなとも思った。
設備云々から言われる音の良し悪しについてはさっぱりだけど、この手の作品を観るときは「うるせェ〜〜〜」と言いたくなるぐらい音がデケェ劇場をおすすめします。なぜなら振動までもが体内に届くので。スクリーンはちっちゃくて問題なし。どんだけちっちゃかろうが家のテレビよりデカいからね。というか前のほうに座ればいいんです。攻めれば視界がスクリーンで埋め尽くされます。するとなんかデカい気がしてきます。いいな攻めるんだ。サイズ問題は、己で攻めろ!!!!!!!〜完〜



個人的に楽曲によっては、過去に実際のライブで聴いたときより熱を帯びて突き刺さってきたものもあった。'replica' は、間違いなくそのひとつだった。



バウくんは創作・音楽活動について、作ることと半々くらいでそれを引き立てる・伝える努力が大切なんだと言い、映像面に関して画力えぢからという言葉を出すことがしばしばある。それを考えたとき、この場所が持つ力は言わずもがな強烈であったし、歴史・地層の重なりがハッキリと目に見える場所で奏でられるからこそ生まれる 'replica' の説得力、本当にとんでもなかったな〜〜。

「真似、コピー、パクりとか言われるけど、僕はその先が重要だと考えているので。真似した先に自分の好きなものがあって、その好きなものと僕の生活の中のものが混ざるから作品になると思っているんですよ。最初からポーンって出てくるみたいなことはありえないので。頭で理解せずにレプリカの作業をやっているだけなんです。僕はその工程はすごく大事なことだと思うし、理解してやるからこそより面白いものが作れると思っているので、僕らが作っているのはレプリカだと言うことで "オリジナル" の意味を改めて考えようという。」

「もの作りが全部レプリカであることは間違いないと僕は思ってるんですよ。"オリジナリティがすごい" って言っている人もいるし、それはそうなんだけど、"これがもとだよね" っていうのは基本あって。もとっていうか、そこにいろんな人が見えるのは当たり前なので。それの粘土というか、くちゃくちゃに混ぜてどういう色を完成させられるのかがアーティストの技量で、僕はそれをどうする?って縛りを課したのが今回。でも楽しんで作りました。」

Skream! より


映画がお昼をまたぐ時間だったのでポテトを買って入ったのだけど、先述したあまりの音の体感に、あろうことか始まった瞬間 時が止まったシーンを撮影している人と化してしまった。もはや瞬きをした記憶すら残っていない。口はずっと開いているにも関わらず、そこにポテトが入場することはその後しばらくなかった。


中盤に差し掛かったところでようやく硬直状態(=衝撃・虚無)から解放され 空間の魅力を味わうフェーズに突入したのだけど、ここで間髪入れず別の問題が発生した。制御不能のむき出し歯茎である。

あれですあれ、ニヤケが止まらなくなってしまったということですね。Vaundyのせいです。ついでに鼻の穴も2割増でデカくなっていたような気もするな。あれもこれも、全部Vaundyのせい。(やめなさいよ)


スクリーンから目を離せない状況が影響し、歯茎問題(歯茎問題)と並行して フォークで刺したポテトを口元まで持ち上げることすらままならない時間が続く。



いやあの、これ今、そのときのことをめちゃくちゃ素直にそのまま書いてるんだけど、

何してんのおれ???映画始まってからずっと一人で何してる?????いけてる???????




しばらく真顔で硬直してたかと思えば突如として歯茎むき出しになり、食べるわけでもなくポテトをひたすらぐさぐさし始める客、よく考えなくてもヤバいだろ。出禁コーナリングのガン攻め。教習所から出直せ。



とにかくすべての音がこぼれることなく掬われてそこで響き漂うから、街の中ではまず聞こえない音、静寂のなかで耳を澄ませてようやく聞こえるかどうか、みたいな音たちが もはや聞こうと意識しなくても耳に飛び込んでくる感覚がヤバかった。


マイクを掴み直す手のひらの音、一歩一歩踏みしめるソールのゴムの音、心臓をつよく叩くたびに擦れる被服の音、そして、呼吸の音。

ライブのようなお互いへの投げ合いは存在せず、ただ受け取ることのみに集中する時間。空間を出来る限り吸収しようと、自分のなかで自然と神経を尖らせる感覚が強くなっていた。



スポットライトでの演出が入ったときは埃とか塵がそこに浮かび上がってたけれど、すっごい純粋に「美しいな」って思ったんだよな〜〜。

それ単体としては決して綺麗なものではないんだけど、あの場所、あの瞬間、あの画に関して、そして私にとっては、紛れもなく美しいものだったのだ。『綺麗なもの』と『美しいもの』って全然違うと思っているので。なんだか照らされたときにしか見ることの出来ない雪みたいだった。レア感が漂っていていい感じだ。



ずっと肘置きに置いていた腕を膝上に動かしたのが、ちょうど '呼吸のように' が始まったタイミングだった。


ごく自然と、膝に置いていたバッグに腕を添えるような形になったのだけど、楽曲がサビに差し掛かった瞬間、私は思わず息を呑んだ。



バウくんの声の響き、音の響き、その振動で、バッグがちいさく震えていたのだ。



そのたったひとつの認識が、なぜかものすごく自分にとってのスイッチになってしまい、もうその瞬間から、本当にダバ〜〜〜〜〜と、号泣。あらゆる水分の大放出。鼻水はほぼボーちゃん。(かみなさいよ)



実際音というのは振動だけど、自分の鼓膜がそれを受けて震えていることを、人間は五感で認識できないじゃないですか。挙げるなら、ライブのときにドラムによる振動を鼓膜というより身体全体で認識する、そんな程度だと思う。


なんというか、『自分以外のモノが音を受けて震えている』現実を触覚だけでこれほど意識したことがなかったのだ。それがなぜ泣くことに繋がったのか、という部分は自分でも不思議な感覚のまま残っているけれど、ふと思い出されるインタビューが、ひとつあった。


「同じ空気を吸うのってなんか、…尊いじゃないですか、ものすごく」
「空気の中に宿る愛みたいな。愛だったり、熱だったり、心の動きだったりとか。音も空気の振動ですから、なんか、愛っていうのも空気の振動で伝わってもおかしくないと思いますし」

Spotify Liner Voice+ より



映画には、ロンドンで行われた密着ドキュメンタリーの映像も組み込まれていた。見入るシーンばかりだったけれど、特にバウくんが外のテーブルで絵を描いていたシーン、あれまじで良かったな〜〜。



蚊「プゥゥゥ〜〜〜ン…」

バウ「………(手の甲を見つめる)」


0.3秒後


ビチィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(滅)




ロンドンにも蚊は居て、Vaundyでも蚊はブチ叩く。オタクとしてこの上ない供給でした。ありがとう世界。




※参照


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あたりめ
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