職場の安全衛生というテーマ
スイスの国際標準化機構(ISO)が認証を出している14001、27001などのマネジメントシステムの規格があります。良く工場などで見かける言葉ですが、9001は品質、14001は環境、27001は情報というように、時流や世界的な関心の高まりに合わせてテーマが追加されてきています。その中に、比較的新しい45001という「安全衛生マネジメントシステム」があります。つまり世界基準で言えば、今の職場の中心課題は「生産」や「品質」よりも「安全・衛生」に移っているのだと思います。
この安全・衛生についてはすでに企業の社会的責任として世界では認知されています。これまでも多くの事例があるのですが、私のいたスポーツ業界関連では、1997年、NIKEのベトナムの下請け企業が許容範囲を超えた有害化学物質の暴露環境の中で従業員を働かせ、その8割が呼吸器系疾患にかかった事件があります。下請け企業の不祥事にもかかわらず、同社は世界的な批判にさらされ不買運動などが起きています。
また、2001年にはソニーがEUへ出荷したプレステの部品に有害なカドミウムが混入されていたことが発覚し、オランダで100億円以上の損害を出しています。
エアバッグの欠陥問題があった自動車部品メーカーのタカタなど、破綻した企業の例もあります。世界の自動車メーカーがそのダメージを受けてしまっていました。
従業員やユーザーを危険にさらすような安全・衛生のリスクに対し、市場はどんどん敏感になっており、NIKEやタカタの例のように、下請けのトラブルが企業グループ全体にマイナスの影響が及ぶようになってきています。自社だけが注意するだけではなく、取引先や関係者全体で取り組まなければならないテーマであり、経営上の大きなリスクなのですが、安全・衛生が経営課題になっているという認識を明確に持っている企業はまだまだ地方には少ないという印象を受けています。
これからは従業員の安全と健康を守れる企業、誰もが働きやすい職場を作れる企業、が、規模の大きい企業や知名度のある企業よりも魅力を出せるようになってくるでしょう。いずれは採用や定着にも直接影響するテーマになるかもしれません。一刻も早く職場環境を整え、売上や規模ではないところで「良い会社」と言われるようにしないと、人がどんどんいなくなることになるでしょう。