芸術家という名のマゾヒスト
人は芸術家になるときがある。ならねばならぬときがある。それはやはり苦痛を強いられているときだと思う。
多くの場合、苦痛にはやり場がない。友人に相談しても、パートナーに相談しても、苦痛は巧妙に形を変えて私たちを苛む。
ほんとうに行き詰まったと感じる。ただ痛いだけではなくて、ただ苦しいだけでもない。痛いほど苦しくて、苦しいほどに痛む。ほんとうに行き詰まったと感じる。
結局、私たちは苦痛と格闘することに疲れてしまう。だから、受け容れるしかないことに気づく。でもどうやって受け容れよう。そもそもやり場がないんだ。
芸術家という名のマゾヒストがいる。苦痛を芸術に変える魔術師たちだ。彼らは苦痛を受け止め、それを栄養にして芸術をつくる。高尚なマゾヒズムだ。
ほんとうに行き詰まったと感じる。どこにもやり場のない苦痛を感じている。でも私たちはそれを受け容れなければならない。では、どうやって?
苦痛の先に芸術を展望するんだ。芸術のために、苦痛を受け止めるんだ。マゾヒズムに身を投じて、黙して芸術を作り続ける。それが、生きる術なんだ。
私は芸術家という名のマゾヒスト。この苦痛を芸術にして、そうやって生きていく。