ネットワークの安定性を守る鍵!STP(Spanning Tree Protocol)の基本と活用法
ネットワークエンジニアにとって、ネットワークの安定性を維持することは最重要課題の一つです。その中で、L2ネットワークにおけるループ障害を防ぐために欠かせない技術がSTP(Spanning Tree Protocol)です。本記事では、STPの仕組みや設定方法、そして実際の運用における注意点をわかりやすく解説します。
STPとは?
STP(Spanning Tree Protocol)は、L2ネットワーク上のループ障害を防ぐためのプロトコルで、IEEE802.1Dで標準化されています。ネットワーク機器を冗長構成にすると、障害時のバックアップが可能になりますが、その一方で、何もしないと「ブロードキャストストーム」や「L2ループ」といった障害が発生する可能性があります。
STPは、物理的にはループが存在する構成でも、一部のポートを「Blocking」状態にすることで論理的にループを回避します。この仕組みにより、冗長性を維持しながら安定した通信を可能にします。
ブロードキャストストームの恐怖
STPがなぜ必要なのかを理解するために、ブロードキャストストームについて知っておきましょう。L2ネットワーク上でSTPが無効の場合、以下のようなことが起こります。
PCがブロードキャストを送信すると、スイッチが全ポートに転送。
他のスイッチも同じように転送を繰り返し、無限にトラフィックが流れる。
結果として、帯域が圧迫され通信が輻輳する。
こうした事態を防ぐために、STPがトポロジを制御するのです。
STPの仕組み
STPは、ネットワーク全体をスキャンし、ルートブリッジや各ポートの役割を決定します。その仕組みを簡単に説明します。
1. ルートブリッジの選出
STP有効化スイッチは、**Bridge Protocol Data Unit(BPDU)**を交換。
最小のブリッジIDを持つスイッチがルートブリッジに選ばれる。
2. ポートの役割決定
STPでは、以下のようにポートを分類します。
ルートポート(RP): ルートブリッジに最短経路のポート。
指定ポート(DP): トラフィックをフォワードするポート。
非指定ポート(Blockingポート): 論理的にループを防ぐため通信を停止。
3. ポート状態の遷移
ポートは初期状態で「Blocking」から始まり、以下の遷移を経て「Forwarding」へ至ります。
Blocking
Listening
Learning
Forwarding
STPの課題と改良:RSTPの登場
従来のSTPでは、障害発生後の収束(ネットワークの回復)に最大50秒もかかることがありました。この問題を解決するために、RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)開発されました。
RSTPの特長:
収束速度が1秒以内に短縮。
新たなポート役割(代替ポート、バックアップポート)を導入。
RSTPはSTPと下位互換性があり、既存環境との共存も可能です。
STPをさらに強化するオプション機能
STPには、運用効率を向上させるための便利なオプション機能があります。
1. PortFast
通常、ポートが通信可能になるまで50秒かかりますが、PortFastを有効化すると即座に通信を開始可能です。PCやサーバー接続用のポートに設定することで、無駄な待機時間を削減します。
2. BPDUガード
PortFast設定ポートがBPDUを受信した場合、そのポートをerr-disable状態にして通信を遮断。誤接続によるループ発生を防ぎます。
3. ルートガード
新たにブリッジIDの低いスイッチが接続された場合、そのポートをroot-inconsistent状態にし、STPトポロジの変更を防ぎます。
実運用での注意点
STPを有効活用するためには、以下のポイントに注意してください。
冗長構成の設計
必要以上に冗長な構成を避け、適切にポート役割を設定。
適切なオプション設定
PortFastは、PCやサーバーポートに限定。
BPDUガードやルートガードを併用して、障害リスクを軽減。
収束時間の短縮
可能であればRSTPを導入し、ネットワーク回復を迅速化。
まとめ
STPは、ネットワークの安定性を維持するための重要なプロトコルです。特に以下の点を理解しておくことが重要です。
ルートブリッジや各ポートの役割。
STPとRSTPの違い。
PortFastやBPDUガードなどのオプション機能。
これらを踏まえて運用することで、より信頼性の高いネットワーク環境を実現できます。
本記事が、皆様のネットワーク構築・運用に役立つことを願っています。
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