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かつて叡智の都と謳われたそこでは 輝く水晶が心を伝達した。 曇りなき想い、 その全てを受け…
読んでるだけじゃつまらないね、 確かめに行こう。 やってきた黒猫には翼があった。 そして僕…
擦り切れた本の、箔押しの凹凸を指でなぞる。 煌めきはとっくの昔に消えうせた。 それでも私は…
あなたと二人、森を彷徨いゆけば、 紅色の実がどっさり採れた。 私の亜麻布のエプロンは膨らん…
午後の図書館で、 読みかけの本に矢車菊の栞を挟んだら、 向かいに座っていた人が顔を上げた。…
月のない晩にと声を潜めれば、 従姉妹たちは肩を竦ませた。 恒例の怪談。 お開きになった深夜…
草むらに寝転がれば、 ぐるりと花たちが私を覗き込む。 その向こうに空が見えた。 風が吹いて花たちの頭が揺れて、 空色のハートが切り取られる。 誰かが私を想ってくれるのか、 私が誰かを想うのか。 心の奥がさわさわと音を立てた。 午後の微睡みが私を包み込めば、 その先で誰かが優しい微笑みを見せた。
一夜だけの花。 空が紫に染まる中それを見つめた。 今だけなんて寂しいかと思ったけれど、 そ…
かの作家のように薔薇の棘で永遠の眠りに。 どの花よりも儚げな彼女が呟いた。 その吐息は香…
深夜の食堂で 彼女は白い花を浮かべたグラスを掲げ 青い花をナイフで優雅に切り分け 赤い花に…
指の間から滑り落ちるものは黄金の砂なのか、 果てしない時間なのか、迷子の私の心なのか。 駆…
裏口を出れば庭はまだ眠りの中にいた。 やがて薄闇の中を 白銀の鱗を煌めかせた蜥蜴が横切り、…
いいかい、お嬢さん、世の中には偽物が溢れてる。 だけど同じだけ本物もある。見極めることだ…
眼下に走る稲光は圧倒的だった。 雲の上に突き出した山城からそれを見る。 ねえ、空はすべて私のものみたい。 私の言葉にあなたが微笑む。 闇夜を切り裂く光、肩に感じる温もり。 沈黙の森、優しい吐息。 二人だけの世界は未来永劫終わらない。 鮮やかな一瞬が繰り返される中、 私たちは甘い時間を貪り続ける。