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歓声と空砲に僕らは飛び出した 白波を蹴立てて前へ前へ 百万の帆が ひしめき合ってざわめいて …
夜明け前の空は不機嫌そうだった。 一晩中待った伝令は現れず 最後の花は萎れて落ちた。 ちょ…
喧騒から逃れた旅先で 朝露に濡れた廃墟の苔に触れれば 風の中で何かが嗤った 私たちは愚かな…
積んでいた本がすべて 黒い蝶になって飛び去った後、 僕は一人テラスに出た。 満月を映して輝…
友人宅で綺麗な人形が僕を見ていた。 あら坊や、いつぶりかしら。 四百年程でしょうか、マダ…
夜明けの気配が世界を包むとき、 僕らはそっと一歩を踏み出した。 揺らめく青の王国は どこま…
言葉が溢れてどうしようもありません。 押し合い圧し合い道を譲りません。 けれどどれもが愛おしく 選び取ることはできないのです。 あなたはがそっと 湯気の立つカップを差し出した。 待ってみては? 在るべき場所を知るのは己のみ。 始まりの時を前にみな心震わせるもの。 新しい扉がきっと開かれるのですよ。
新しい料理本をじっくり読む。 素材を揃えて調理開始。 実験ですか? 振り返って微笑む。 いい…
入り組んだ路地奥には寡黙な中庭。 壁に並んだ精巧な仮面は何のため。 滴り落ちる緑は闇の気配…
午後の庭で指し示されたものは 未来だったのか過去だったのか。 風の中で私はため息を零した。…
すべてがじんわりと滲んで それから世界に貼りついた 首を傾げればあなたが笑う わかりやすく…
黒々とした森の上を 花咲く丘の上を 砂糖菓子のような街の上を 真っ白な飛行船が緩やかに渡っ…
誕生日に贈られたガラス皿。 小さな円盤は色の氾濫で 何が何だかわからない。 空の色、風の色…
中庭の水槽には 見たこともない魚が泳いでいた 新種ですか? 問うた私に彼は微笑んだ どうでしょう そうあってほしいと願った形 描いてみたかったのです 私もですか? 瞳を揺らして聞けば 微笑みがぐっと甘くなる ええ あなたは私の夢 この世界の理 だけど私はわがままですから 世界の秘密は誰にも内緒のままなのです