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見上げる月はあなたのよう 微笑みは全てに注がれ けれど全てを通り抜け 誰のものにもならない…
私はね 彼女は片目をつぶって見せた 青い夜明けが忍び足でやってきたら すぐにベッドを抜け…
夜明け前の空は不機嫌そうだった。 一晩中待った伝令は現れず 最後の花は萎れて落ちた。 ちょ…
午後の庭で指し示されたものは 未来だったのか過去だったのか。 風の中で私はため息を零した。…
すべてがじんわりと滲んで それから世界に貼りついた 首を傾げればあなたが笑う わかりやすく…
誕生日に贈られたガラス皿。 小さな円盤は色の氾濫で 何が何だかわからない。 空の色、風の色…
思い出そうとするほど曖昧になる。 薄紅の紗が幾重にも重なり 古い映画のように四隅は黒く滲んで溶けた。 音もなく風が吹き花が舞い誰かが笑った。 二度とはない時間はどこまでも美しい。 思い出など偽物。 けれどそれはあなたそのもの。 それ以上に素敵なことがありますか? 彼の言葉が甘く世界に染み渡った。
残されたのは飴色の手帳。 寂しさが覆いかぶさる。 大丈夫。 置いていかれたんじゃないわ。 …
その旋律を僕らは分け合った。 二人だからこそ生まれたもの。 満たされ熟した音符を摘み取り、…
いいか。 砂漠を渡って行くときには星を見ろ。 叔父の言葉に頷いたものの、 本当のところ星が…
ものすごい勢いで 走り出した列車に僕は乗っていた。 轟々と唸る風、 原形をとどめない景色が…