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硝子の靴はいらないわ 硬くて冷たくて 綺麗なだけではダメなのよ 心外だと彼は眉を顰めた 綺麗…
贈られたガラスの小箱に花を詰めた。 枯れてしまいますよ。 綺麗な色なんて残らない。 誰もが…
虹色のバスに乗ればいいんですね? 僕の問いに彼女は頷いた。 ええ、でもちゃんと伝えてくださ…
たっぷりと重い湿気をまとって 雨の匂いが僕を包み込む。 白き花の気配はいつしか薄れ、 伸ば…
船べりで君が歌う。 聞いたことのない歌だ。 なのになんとも懐かしい。 湖に沈んでいた歌です…
鮮やかな青がめくるめく展示 鑑賞後のショップで 私は青い染料瓶を買った 素敵なものを買った…
ある日、僕の人魚姫が言った。 バスタブを星で満たしたい。 ヒトデの置物は重すぎたし、 金平糖は儚く溶けた。 嘆く彼女にしまいこんでいた 家庭用プラネタリウムを差し出す。 満天の星の下、 人魚姫は青く輝く尾ヒレを脱ぎ捨てた。 高原を歩くから足にするね。 得意そうな彼女は、 とてもとても可愛らしかった。
小さな瓶に詰めた庭を彼がくれた。 好きな時に来て、好きなだけ過ごせばいい。 この庭の主人は…
丁寧に紅茶を淹れる。 もう直ぐ扉を開ける人のために。 街の香りを纏ったままの彼は 海からの…
全てが眠りにつく中、 僕は一人湖に漕ぎ出す。 暗闇に慣れきった世界の中で 美しいものを垣間…
星が降る、満天の星が。 誰と見たのかどこで見たのか、 曖昧な記憶の中に、けれど確かなもの…
待ち合わせは誰そ彼時。 今日を最後に別れゆく人。 紫紺の闇は一層深く、 もう顔を見ることも…
想いが溢れそうになったら紅茶を淹れる。 お気に入りの茶葉を入れたポットに、 あなたを想う夜…
雨降る午後の画廊。 指先を青に染めて微笑む彼の後ろで 画面から立ち上がる 海と空が溶けあって一つになった。 待っていたよと彼が言った。 ずっと、ずっと。 音もなく時間が巻き戻り、 打ち寄せる波のように私を包み込む。 全身を駆け巡る世界に息をのんだ。 ねえ、ほら。 誰の心の奥底にも 遠い日の約束がある。