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運命からは逃れられないの? 彼は微笑んだ。 逃れられない。 だからいいのさ。 全てを忘れてし…
残されたのは飴色の手帳。 寂しさが覆いかぶさる。 大丈夫。 置いていかれたんじゃないわ。 …
ポットに沈む茶葉を覗き込む。 これが未来を教えるのですかと問えば、 彼女は可笑しそうに笑っ…
作家から預かった世界を丁寧に 張って重ねて立ち上げる。 広げすぎてはいけない。 けれどどこ…
草の大海原を行く船上で問う。 花の海にはいつ? そうですね、すぐとも気の遠くなるような先と…
奥庭への扉を開けてはいけない。 けれど甘い香りに誘われた。 薔薇の盛り。 風に揺れるたび花…
その旋律を僕らは分け合った。 二人だからこそ生まれたもの。 満たされ熟した音符を摘み取り、 しかし噛み砕いて血肉とする。 残酷で美しく、眩暈すら感じる。 愛とは身勝手なもの。 けれど何よりも僕らを酔わせる。 二度とない、二度とは必要ない。 何が本当かは僕らが決める。 幻かどうかは、僕ら次第なんだ。
トランクに詰め込むのは白い服だけ。 手を繋いで木陰を行き 窓を開け放して果汁を飲む。 土埃…
傘を貸していただけますか? 月が私に尋ねた。 まあ。宇宙にも雨が降るのですか? 月はほんの…
それは小川脇の古い水車小屋だった。 粉がご入り用でしたら挽きますが。 案内の老人が問う。 …