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読んでるだけじゃつまらないね、 確かめに行こう。 やってきた黒猫には翼があった。 そして僕…
時を駆けるとか時を超えるとか、 もういい加減にしないと どれだけ想いを拗らせているのかと …
目覚めた時、残り香があった。 さっきまで見ていた夢と同じ。 早朝、雨上がりの庭。 濡れた石…
想いが溢れそうになったら紅茶を淹れる。 お気に入りの茶葉を入れたポットに、 あなたを想う夜…
熱帯雨林に生息する蝶はね、 嵐みたいに群れで移動するんだよ。 夏休み、駅に向かう坂道で そ…
山積みの本と共に出発の朝、 手渡されたのは紙の花。 細い茎、丸まる葉、向こうが透けてみる花…
雨降る午後の画廊。 指先を青に染めて微笑む彼の後ろで 画面から立ち上がる 海と空が溶けあって一つになった。 待っていたよと彼が言った。 ずっと、ずっと。 音もなく時間が巻き戻り、 打ち寄せる波のように私を包み込む。 全身を駆け巡る世界に息をのんだ。 ねえ、ほら。 誰の心の奥底にも 遠い日の約束がある。
擦り切れた本の、箔押しの凹凸を指でなぞる。 煌めきはとっくの昔に消えうせた。 それでも私は…
あなたと二人、森を彷徨いゆけば、 紅色の実がどっさり採れた。 私の亜麻布のエプロンは膨らん…
午後の図書館で、 読みかけの本に矢車菊の栞を挟んだら、 向かいに座っていた人が顔を上げた。…
月のない晩にと声を潜めれば、 従姉妹たちは肩を竦ませた。 恒例の怪談。 お開きになった深夜…
草むらに寝転がれば、 ぐるりと花たちが私を覗き込む。 その向こうに空が見えた。 風が吹いて…
一夜だけの花。 空が紫に染まる中それを見つめた。 今だけなんて寂しいかと思ったけれど、 そ…
かの作家のように薔薇の棘で永遠の眠りに。 どの花よりも儚げな彼女が呟いた。 その吐息は香り高く、その指先は甘く震えて。 花たちはこぞって彼女に恋をする。 棘はどれ一つ彼女を傷つけることはないだろう。 彼女に許されたのは永遠の微笑みだけで、 その麗しき檻に僕は一歩たりとも近づけない。