7日後に死ぬカニ
業務スーパーで買ったサワガニを1週間だけ飼うことにした。
20匹590円だった。安いのか高いのかわからないけど。
なぜかと言うと、今まで、植物を育てて食べたことはあるけれど、動物を育てて食べたことがないなと思ったから。食べるとき、自分がどんな気持ちになるのか、知りたい。「ひよこから育てたにわとりを…」というのは、私にはなかなかツラいけど、カニならまだいけるかも…と。
それから、サワガニ側のドラマも見たかった。だってサワガニからすると、すごい奇跡かもしれない。私のこと、女神に見えてるかもしれない。だって、業スーに並んだところを私に救われたわけで。「もうあかん」って思ってたやろうな…まあ、食べられるんやけどな……
インスタのストーリーにアップすると、「7日後に死ぬカニ」とリプが付いた。(※その秀逸なリプをタイトルにさせていただいた)
サワガニたちは、一度パック詰めされたからか、結構ぐったり。でも少し揺らすと、もそもそと静かに動いた。外が暑いので、ダンボールに保冷用の氷を少しだけ入れ、氷には触れないようサワガニパックを置き、家まで運んだ。
家について、とりあえず仮水槽として、先日壁から取り外したプラスチック製キャビネットを選ぶ。浄水を入れて、家に飾ってた石や流木を入れる。そして、そこにサワガニをまんべんなく入れる。(あってるのかな…)水に触れて、ちょっと元気になった感じに見えた。
何も食べてないだろうな、おなかすいているやろうな。でもサワガニって何食べるんやろう?調べると、「なんでも食べます」とある。米でも虫でも、なんでも食べるらしい。
米……炊いているのはないけれど、ポン菓子があったな。米農家の巽和好さんがつくったポン菓子。ポン菓子、ほぼ米だし、食べるやろう。
数粒のポン菓子が、水にぷかぷかと浮く。サワガニたちがそれを見上げている。あれ…、これなんか見たことある。この既視感、…ああ、あれだ、小学校んときのあれ、「クラムボンはわらったよ」だ!宮沢賢治さんの!リアルクラムボンはわらったよ!!!(大興奮)
ポン菓子は少しずつふやける。そうすると、サワガニがそこに集まってきて、ハサミを使ってポン菓子をちまちま取り、口に運んでいく。
小さいカニは大きなカニに阻まれて、なかなかポン菓子に到達しないので、おはしであげてみた。すると、ちゃんと手で受け取って、両手でポン菓子を持って、パクパク食べだした。子どもみたい。可愛い。カニからすると、ポン菓子はたぶんおむすび。カニとおむすび。もう、ほぼ「日本昔ばなし」。市原悦子さんの声が聞こえる。
わたしは女神なので、全サワガニにポン菓子を均等に配給した。みんな同じポン菓子を食べていた。ポン菓子を食べる業務スーパーのサワガニ。それだけでなんかもう面白かった。
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瀕死状態に見えたカニたち、ポン菓子を配給した2時間後、めちゃくちゃに元気なった。もう、業務スーパーでの危機感が全然ない。仮水槽の中でカニたちはとにかく動き回っていた。うれしい。
▼危機感のあるカニ
さらに30分後。
1匹のカニが、流木や石の上に登り、精一杯足を伸ばし、仮水槽から脱出しようとしてた。でももちろん届かない。「無理やからな。」って言った。
1時間後。
パッと目をやると、たぶんさっきの1匹が水槽から出て、靴箱のすみっこでホコリまみれになってショボンとしていた。どうやって出たんやろと見てみると、石が積み重なっている部分に登り、絶妙な角度で仮水槽のヘリに足をかけ、脱出したらしかった。水で洗って、戻した。石も、置き場所を変えた。あと、「外に出てもまじでいいことないからな。」って言った。
1時間30分後。
私は目を疑った。カニたちが3匹重なり、その上にさらにカニが乗っかって、また仮水槽のヘリに足をのばしている。すごい急成長。すごい連携プレー。あなたたち、会社やったら成功するよ。
ここで気づいた。
わたしは25分に1回サワガニを見に行き、5分サワガニを観察している。つまりこれはポモドーロ・テクニック。25分仕事をして、5分休憩するアレ。サワガニにタイムマネジメントされている。いや、これは「1週間後にトマトパスタに入れてください」という暗示かもしれない。そんな、自らレシピを提案してくるなんて、健気すぎて、私はどうしたらいいかわからない。
サワガニ。
7日目に食べられる気がしない。
でも、食べる。
食べると決めている。
私はどんな調理法で、
どんな気持ちで、
彼らを食べるんだろう。
未知すぎて、震える。
▼おまけ
▼追記:完結編を更新しました🦀https://note.com/cchan1110/n/n58c3c538ea47
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