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第83号(2020年5月18日) 「ポスト・コロナ世界」とロシアの「勢力圏」
存在感を増す「軍事大国ロシア」を軍事アナリスト小泉悠とともに読み解くメールマガジンをお届けします。
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【インサイト】「ポスト・コロナ世界」とロシアの「勢力圏」
あまりコロナの話ばかりしているのもどうかと思いますが、もう少しだけお付き合いいただきたく。今日は実務者の方と「ポスト・コロナ世界」のことを話していて思うところがあったのでここで整理させていただきたいと思います。
新型コロナウイルスで世界は大きく変わるだろう、というのが最近の論調なわけですが、具体的にはどう変わるのでしょうか。
前回のメルマガでは、輸送需要の激減がエネルギー価格を構造的に低止まりさせ、結果的にロシアがグローバル大国としての地位を保てなくなる可能性を指摘しました。
現実には、コロナ禍が去った後の人類のライフスタイルとか、エネルギー価格を決める複雑なメカニズムであるとかの変数がたくさん挟まっていますが、無数に考えられるシナリオの中で「エネルギー価格低止まりシナリオ」はある程度の蓋然性を持っていると思います。このシナリオが実現した場合、旧ソ連空間内では、ロシアの凋落以外にも色々と影響が出るでしょう。
ひとくちに旧ソ連諸国といっても、「資源が出るのでそれで割といい暮らしができている国々」と「それ以外」とでは事情が大きく異なります。
前者の親玉がロシアですが、このほかにもカザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンなんかがこのグループに含まれると考えてよいでしょう。これらの国々は資源で食えているので改革への圧力はあまり強くなく、むしろ「強い」指導者がオイルマネーで国民の不満を巧妙に抑えながら(同時に警察力なんかも使うわけですが)権威主義的統治体制を敷いている場合がほとんどです。
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