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第207号(2023年1月30日)ウクライナへの戦車供与決定をめぐる舞台裏
【今週のニュース】
高速ステルス無人攻撃機を開発へ?
ロシアのミサイルメーカーとして知られる機械製造科学生産合同(NPOマシノストロイェニエ)は、次世代の無人攻撃機開発を検討している。TASS通信が伝えた。
TASSの記事によると、この非世代無人攻撃機はジェット推進の高速ドローンであり、尚且つ高い機動性と低観測性を備える。レイアウトについては、機体下面インテイク、最小限のサイズ、結合翼(前後を遊動させて最適形状化する)といったあらましが伝えられている。
【インサイト】ウクライナへの戦車供与をめぐる舞台裏
ゲラシモフ参謀総長の総司令官任命に関する評価
2023年に入っても戦争は案の定終わっていませんが、その中でもいくつか重要な動きが見られます。その一つはバフムトを中心とする東部一帯でロシア軍の攻勢が強まっていることで、特に同市北部のソレダルが陥落したことは大きな動きと言えるでしょう。過去半年くらい、ロシア側からは民間軍事会社ワグネルがバフムトへの正面攻撃を繰り返し、徒に死体の山を築いてきたわけですが、やり方が巧妙になってきたのが窺われます。
また、最近ではバフムトへの攻勢で正規軍の空挺部隊(VDV)が前面に出つつあるという話もあり、当面は東部が重要正面であり続けそうです(ロシア軍の大攻勢に向けた陽動、という可能性も排除できませんが)。
こうした事態の背景には、プーチン大統領がウクライナ作戦の総司令官にゲラシモフ参謀総長を任命したことがあるのかもしれません。この件については前号でも触れましたが、改めて取り上げてみましょう。
まず、この人事の全体像ですが、ゲラシモフが総司令官になったといっても前任のスロヴィキンは罷免されたわけではなく、副司令官として戦争指導部の一員に留まりました。このほかにはサリュコフ陸軍総司令官とキム副参謀総長が副司令官に任命されており、全体的に参謀本部と陸軍総司令部が一丸となって戦争指導を行う体制となったように見えます。また、昨年9月のハルキウ敗北でワグネルのプリゴジンやチェチェンのカディロフ首長から袋叩きにされたラピン西部軍管区司令官(当時)が陸軍参謀長に任命されており、軍の権威を取り戻す人事、という見方もできそうです。
これについてニコライ・ペトロフは、プーチンが戦略立案と戦争指導を完全に軍に任せることにしたのだという見方を示しています。
一方、パーヴェル・バーエフは、この人事がプリゴジンの政治的地位に掣肘を加えるものであると同時に、「自らと戦争の距離を縮める」ものであるとして、ペトロフと少し違う見方をしています。ただ、ゲラシモフの総司令官就任が大きく状況を変えないだろうという点では両名は一致しており、この意味でも東部での、あるいはさらなる大攻勢の行方が注目されます。
ついに決まったウクライナへの戦車供与
この間、ウクライナへの軍事援助に関しては重要な動きがありました。1月20日に開かれたラムシュタインでのウクライナ援助国会合前後に激しい議論の的となった、戦車の供与がついに正式決定されたことがそれです。どの国がどれだけ出すのかという話は情報が錯綜していますが、『フィナンシャル・タイムズ』が26日時点でまとめたところによると、既に英国が表明したチャレンジャー2戦車14両に加え、米国からM1A2エイブラムスが31両(ソ連式縮小編成の1個大隊分)、ドイツとオランダからレオパルト2が各14両とされています。
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