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第228号(2023年7月3日)衛星画像分析 ロシアの核兵器はベラルーシのどこに配備されるのか?

【インサイト】衛星画像分析 ロシアの核兵器はベラルーシのどこに配備されるのか?

プリゴジンの乱から1週間

 えー、前号ではプリゴジンの乱について次号で扱う、ということを申し上げました。しかしその後、『フォーサイト』さんから緊急に依頼を受けまして、「乱」については現状で考えていることを概ね語りきったかな、と思っています。
 もちろん、その後も続報は出てくるのですが、これらも含めた今回の件についての再評価はもう少し時間を置いてからにするつもりです。ということで、有料記事で申し訳ないのですが、プリゴジンの件についてはこちらをご覧いただきたく。

ベラルーシへの核兵器配備の意味

 さて、代わって取り上げたいのは、ベラルーシへの核兵器配備の動きです。
 3月25日にプーチンがこの話を持ち出した当初は7月1日までに核弾薬庫を完成させるということだったのですが、その後、弾薬庫は7月7-8日に完成とやや期限が後ろ倒しになり、実際の核弾頭搬入はそれから、ということになりました。

 というわけで次の229号が出る頃には「ベラルーシに核弾頭配備!」というような見出しがあちこちで踊っているかもしれません。7月11日から12日にかけて、リトアニアのビリニュスではNATO首脳会合が開催される予定ですから、おそらくその辺も意識したスケジュールなのではないかと思います。
 リトアニアのすぐ隣にはカリーニングラードもあるので、こっちでもいいじゃないかという議論もありますが、おそらくはリトアニア「と」ウクライナ双方に隣接し、西側とウクライナをいっぺんに威圧できるということでベラルーシになったのではないでしょうか。

鉄道職員たちのデジタル・パルチザン

 ただ、ベラルーシのどこに核弾頭を置くのかというのはよくわかっていませんでした。
 プーチンの核兵器配備発言があった後、ベラルーシ南部のルニニェツ基地で大規模な工事の兆候が見られたので「すわ、ここか」と思ったのですが、結局は防空陣地を拡大しているだけでした。
 核搭載可能なように改修されたとされるSu-25攻撃機の基地(リダ)やロシアが供与したイスカンデル-M戦術ミサイルの基地(ツェリ)なども目立った動きが見られなかったり衛星画像の更新が遅かったりして、核兵器の受け入れ準備が真面目に行われているのかどうか、いまいちはっきりしない状態が続いてきました。
 こうした中、ロシアへの戦争協力に批判的なベラルーシ国鉄職員たちの団体「ベラルーシ鉄道職員組合」は、鉄道による核弾頭の移送計画とされるものをサイト上で暴露しています。彼らが通常弾薬の移送状況を暴露したことは前号でも触れましたが、今度は核です。身の安全は確保されているのか、部外者としてはちょっと心配になってしまいますが…

 ともかく、彼らの勇気ある告発を簡単にまとめると、核兵器の移送は以下の二段階で実施されるようです。

・第1段階は6月までのフェーズであり、ベラルーシ鉄道ヴィテフスク線のプルドク駅に、ロシア各地から3編成の列車が送られる。
・第1段階の内訳は以下のとおり。

 南ウラル鉄道ポタニノ駅発:特別有蓋貨車4両、護衛車両1両(その他の軍用弾薬)
 西シベリア鉄道ロジャク駅発:特別有蓋貨車2両、護衛車両1両(その他の軍用弾薬)
 ゴルコフスキー鉄道チェボクサリ駅発:特別有蓋貨車10両、護衛車両1両(その他の軍用弾薬)
・第2段階は11月に実施予定であり、ベラルーシ鉄道ヴィテフスク線のプルドク駅に、ロシア各地から3編成の列車が送られる。
・第2段階の内訳は以下のとおり。

 南ウラル鉄道ポタニノ駅発:特別有蓋貨車4両、護衛車両1両(その他の軍用弾薬)
 西シベリア鉄道ロジャク駅発:特別有蓋貨車2両、護衛車両1両(その他の軍用弾薬)
 ゴルコフスク鉄道チェボクサリ駅発:特別有蓋貨車10両、護衛車両1両(その他の軍用弾薬)

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