第285号(2024年11月18日)ついに認められたATACMSによるロシア領攻撃
【今週のニュース】ついに認められたATACMSによるロシア領攻撃
ヤーセン級SSGNが宗谷海峡を初めて通過
防衛省統合幕僚監部によると、11月11日、ロシア太平洋艦隊の艦艇4隻が宗谷海峡を通過した。「ウダロイ級フリゲート(艦番号「543」)、マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦(艦番号「331」)、バクラザン級救難えい船及びヤーセン級原子力潜水艦の計4隻」とされている。このうち水上艦3隻は10月のオケアン2024演習後、カムチャッカ半島に留まっていたもので、ウラジオストクに帰港する途上であったと考えられる。
他方、ヤーセン級(885M型)は元々カムチャッカを母港としている。従来、カムチャッカに配備されていた885M型は2022年配備のノヴォシビルスク1隻のみであったが、今年9月には2隻目のクラスノヤルスクが配備されて2隻体制となっていた。今回宗谷海峡を通過したのは、そのいずれかであったと思われる。
ウクライナにおける国産ミサイルの開発・生産状況
ウクライナのゼレンシキー大統領は、2024年の年初から現在までに100発の国産ミサイルを生産したとTelegramチャンネルで明らかにした。800社以上の企業が関与しており、生産量はさらに拡大させるとしている。また、ゼレンシキーは、デンマークおよびフランスからもミサイル生産に関する協力を受けていることを明らかにした。
現在、ウクライナ軍が運用している国産ミサイルで最も射程が長いのはネプトゥン対艦ミサイルの対地・射程延伸型で、350kgの弾頭を搭載して400km飛行する能力があるとされる。単純に射程だけで言えば、ウクライナがロシア領への使用を熱望し続けている西側製ミサイル(ATACMSやスカルプ/ストームシャドウ)よりも長い。ただ、それでもウクライナが西側製ミサイルの使用許可にこだわる理由は、おそらく以下の通りであろう。
したがって、ウクライナによるミサイルの国産化は(今のところ)ロシア領内奥深くへの攻撃能力の不足という問題を根本的に解決するものではない。実際、9月には英国のスターマー首相がバイデン米大統領に対してせめて英国製のストームシャドウだけでもロシア領内に対して使用できるようにしてほしいと要請したほか、同月末にウクライナが米国に提示した「勝利計画」でもこの問題が改めて取り上げられた。
伝えられるところによると、スターマー首相は改めてバイデン大統領にストームシャドウの使用許可を求めて直談判を行う意向であるとされる。ATACMSの使用許可はもはやどうにもならないとしても、せめて英国製ミサイルだけでも使わせやってくれということのようだ。これと併せてスターマーは、ウクライナに200億ドルの借款を供与するよう要請するとも伝えられており、バイデン政権がどう反応するのかが注目されよう。
トランプ政権成立を前に「駆け込み軍事援助」を準備中
米国のバイデン政権は4月に成立したウクライナ向け援助予算608億ドルのうち未執行分約60億ドルを大急ぎで執行してしまおうとしている。『ポリティコ』にコメントを寄せた米国政府関係者によると、これは来年成立するトランプ政権がウクライナへの軍事援助を停止しかねないことを懸念しての措置であるという。
4月に承認された予算のかなりの割合はウクライナ向けに放出した米軍装備の補充を目的としており、実際にウクライナ軍に届く装備用の予算はPDA(大統領引き出し権限)に基づく既存装備の供与枠と、USAI(ウクライナ安全保障援助イニシアティブ)に基づく新規購入枠は一部に過ぎない。このうち、現在も未執行で残っているのがPDA43億ドル分、USAI21億ドルで、これをトランプ政権成立前に送ってしまおうというのが今回の話であるようだ。
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