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第222号(2023年5月22日)ウクライナへのF-16供与とG7をめぐるつば迫り合い
【今週のニュース】敵後方を狙うロシアとウクライナの応酬
クリミア半島で鉄道が脱線
クリミア半島のシンフェローポリ付近で、穀物を運んでいた貨物列車の大規模な脱線事故が発生した。現地メディアのいくつかは爆発があったと報じており、ウクライナ軍による破壊工作の可能性が指摘されている。
一方、5月13日にはフメリニツキーに置かれていたウクライナ軍の弾薬庫がロシア軍のミサイル攻撃を受け、大爆発を引き起こした。爆発の模様やその前後を比較した衛星写真についてはこちらのスレッドを参照されたい。
New footage of the colossal detonation of an ammunition depot in Khmelnitsky, Ukraine, early this morning. pic.twitter.com/b49ItSWPQ5
— Clash Report (@clashreport) May 13, 2023
スタヴロポリに第40軍団を編成?
ロシアの軍事シンクタンク、戦略技術分析センター(CAST)が興味深い記事を掲載した。カバルディノ・バルカル共和国の軍事委員会が春の徴兵について行った会見の中で、「第40軍団」なる言葉が登場したというものである。
昨年末にショイグ国防相が提案した兵力大増強案に従い、いくつかの新しい部隊が編成されつつあることが読み取れよう。
【インサイト】現実味を帯びるウクライナへのF-16供与とG7をめぐるつば迫り合い
ゼレンシキーの欧州歴訪
長らく対ウクライナ軍事援助の焦点であったウクライナへのF-16戦闘機供与に大きな動きが見られるようになってきました。この問題は第209号で一度取り上げていますが、それから3ヶ月、大きな進展が見られませんでした。
しかし5月13日から15日にかけて、ウクライナのゼレンシキー大統領は欧州歴訪で巻き返しに出ました。戦闘機供与の重要性を改めて各国首脳に訴えたと見られ、中でも英国はF-16供与に向けたウクライナ軍パイロットへの訓練提供(前掲の第209号で紹介した2月のゼレンシキー訪英で合意されたもの)をこの夏から始めるとNHKの取材に対して表明しました。
ただ、今回の欧州歴訪でゼレンシキーが巡ったイタリア、ドイツ、フランス、英国はどれもF-16を装備していません。このうちフランス以外は欧州共同開発のタイフーン戦闘機を空軍力の主力としていますが、どうも「タイフーン連合」のような話は聞こえてこない。同じくタイフーンを保有するドイツも1月段階で戦闘機供与はしないと早々に表明していますし、この点は今月17日にピストリウス独国防省が改めて確認する声明を発出しました。
正確に言えば、ピストリウスが述べているのは「ドイツにはそのような機材も訓練能力もない」ということなので、供与の本命はF-16だからドイツにできることはないよ、という話なのでしょう。とすると、ゼレンシキーが欧州各国で要請してきたのは、直接の戦闘機供与というよりは米国への働きかけだったのではないでしょうか。
F-16の供与がついに具体化へ?
こうした中で注目されるのは、英国とオランダの動きです。ゼレンシキーが帰国の途についた後の16日、英国のスナク首相はオランダのルッテ首相と会見し、F-16をウクライナに供与し、パイロットを訓練するための「国際連合」結成に向けて動いていることを明らかにしました。
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