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第64号(2019年12月9日) 北朝鮮、次なる一手は?
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【インサイト】北朝鮮、次なる一手は?
12月8日、北朝鮮の朝鮮中央通信が、東倉里(トンチャンリ)の西海(ソヘ)衛星発射場で「非常に重大な実験」を行ったという国防科学院報道官の談話を発表しました。東倉里には人工衛星打ち上げ用のロケット発射施設と液体燃料ロケットエンジン用の試験設備が置かれています。
軍の研究機関である国防科学院が、ロケットエンジン試験設備のある施設で「重大実験」を行なったと言っているわけですから、素直に考えるとなんらかのロケットエンジン試験を行なったのでしょう。ミドルベリー大学国際研究所がリリースした衛星画像からも、なんらかのロケットエンジン試験設備で噴射があったこと自体は間違いなさそうです。
Oh yeah, that left a mark. @rsimmon from @planetlabs made an NIR false color image showing the impact of North Korea's December 7 static engine test. pic.twitter.com/6yjShPFIjp
— Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk) December 10, 2019
また、韓国の中央日報は噴射試験が2回以上実施されたとの見方を伝えています。
それが「重大」であるという意味は様々に考えられますが、従来の火星シリーズに搭載されていたRD-250系統のエンジンのさらなるパワーアップ型とか、より小型で同等の出力を持つエンジンではないでしょうか。この点は米国が衛星で噴射炎を捉えてスペクトラム分析をしているはずですが、今のところ中身は伝わってきません。
あるいは単にRD-250系統のエンジンをまた試験して、その再会が政治的に「重大」だったという理解も可能でしょう。東倉里は米朝の「非核化」合意で解体されたはずの施設ですから、それが再活性化されること自体が大きな政治的メッセージになり得るからです。
一時期は固体燃料エンジンではないかという話もあり、私も一つの可能性として考えましたが、北朝鮮の固体燃料エンジン試験施設は東部の咸興(ハムン)にあり、どうも東倉里とは結びつかなさそうです。
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