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第295号(2025年2月10日) この戦争の行方を考える ロシアの戦争目的と「トランプ的なるもの」の狭間


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【インサイト】この戦争の行方を考える ロシアの戦争目的と「トランプ的なるもの」の狭間

トランプ政権3週間

 トランプ政権が成立してから3週間になります。
 と自分で書きながら「えっ、まだそんなもんだっけ」となったのですが、トランプ政権成立は先月20日成立なわけですからたしかに3週間。まぁ昨年11月の当選以来、トランプは事実上の大統領の如く振る舞ってきましたし、さらに2026年11月には中間選挙も控えているのでとにかく猛烈なスタートダッシュを切らねばならないのだ、ということはテレビなどでも米国専門家の先生方が指摘してこられたところであります(テレビ番組に出る一つのメリットはこうして耳学問が割と蓄積できるというところです)。だから良くも悪くもとにかくトランプイズム全開でやっているのでしょう。
 そうした中で7日には日米首脳会談が行われ、我が国としてはとりあえず最初の関門をどうにかこえた、という感じでしょうか。USスティールの買収問題がもしかしてうまいこと軟着陸できるかも、というのが世間的には一番大きなニュースでしょうが、安全保障界隈ではアジア防衛に関する米国のコミットメントがかなり明確に表明されたことに安堵する雰囲気が強いようです。

ウクライナ「早期停戦」は何故難しいのか

 一方、ロシアのウクライナ侵略についてはまだトランプ政権の姿勢ははっきりしません。早期停戦を目指す方針は変わらないとしても、それをいかにして実現するかはやっぱりまだ明確になったとは言えない状況です。「双方とも現状で満足して戦闘を止めろ」ということなのでしょうが、それがなかなか難しい。この間、いろんなメディアで書いたり話したりしてきたことですが、見返してみるとこのメルマガではちゃんと書いていなかったので改めて私の考えをまとめてみたいと思います。
「双方とも現状で満足して戦闘を止めろ」論が成立するためには、まず戦争を引き起こしている側であるロシアが現状で「満足」するかどうかが問題になります。つまり、ウクライナ国土の約2割を占拠している現状をプーチンが「それなりの成果だ」と見るかどうかです。
 もしもプーチンの戦争目的が土地であるなら、たしかにその見込みもあるでしょう。しかし、1700万平方kmという世界最大の国土を持つロシアにとって、10万平方kmかそこからの土地がそんなに欲しいものでしょうか?まぁそういうこともあるのかもしれませんが、プーチンが開戦前から言っていることを鑑みるに、どうもそういう気はしません。
「みんかぶ」に書いたように、プーチンの戦争目的は複合的です。歴史的にウクライナはロシアの一部であったものがソ連の失策で失われてしまった、コントロール不能になったウクライナがNATOに加盟してしまうかもしれない、ウクライナが「反ロシアの基地」となってロシアの体制を脅かすかもしれない…プーチンの主張をまとめるとこんなところでしょう。つまり、プーチンが「満足」するための条件は、土地を何万平方km取ったというように数字で表せるもの(定量的指標)ではなく、ウクライナがどのような立ち位置の国家であるのかという、より定性的な指標によって規定されるというのが私の考えです。より詳しくは「みんかぶ」に書いた最近の記事を参照願いたいと思います。

 

プーチンの「停戦条件」

 それゆえに、プーチンが繰り返してきた停戦条件は非常に高いところに置かれています。これも上記の「みんかぶ」記事に書いたように、土地の引き渡し(とNATO不加盟)は停戦交渉の「開始条件」とされているに過ぎません。昨年6月14日にプーチンが外務省幹部の前で述べたことを素直に解釈するなら、ロシアが2022年に「併合」を宣言したウクライナ四州(ルハンシク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン)の行政境界線からウクライナ軍が撤退=州全部の引き渡しに同意するなら交渉のテーブルにつくというのが「開始条件」であり、交渉はそれから始まるということになるでしょう。

その上でプーチンが挙げた「停戦そのものの条件」は以下のとおりです。

・中立化
・非ブロック化
・非核の地位
・非軍事化
・非ナチス化

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