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第235号(2023年9月4日) ロシア地上軍の機構改編について


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【今週のニュース】ロシア軍の機構改編 ほか

対日戦勝記念日のロシア極東部

 9月3日、ロシアは対日戦勝記念日を迎えた。
 対日戦勝記念日をめぐっては複雑な経緯がある。メドヴェージェフ政権時代の2010年に9月2日が「第二次世界大戦終結記念日」とされ、2020年にはこれが9月3日に移された。ここまではあくまでも「戦争終結の記念日」ということであったのだが、今年6月にはこの日を「日本軍国主義に対する勝利と第二次世界大戦終結記念日」と改める法律が通り、正式に日本に対する「戦勝記念日」と位置付けられるようになった。
 この辺の経緯については『北海道新聞』の以下の記事を参照されたい。

 いずれにしても、メドヴェージェフ政権期の記念日制定自体、当時のロシア政府が展開した対日強硬策(メドヴェージェフ自身が国後島を訪問したことは多くの人の記憶にあろう)の一環であったことはたしかであろう。日本政府が厳しい対露制裁を課している現状では、この種の「記念日ポリティクス」が激しさを増すことは別段驚きとは言えまい。
 なお、北方領土では昨年と同様、何らかの記念行事をやるという話であったが、本稿を書いている現在(9月3日夕方時点)ではまだ現地メディア「クリル・ニュース」などに目立った情報は出てきていないようだ。唯一目についたのは、国後島行政当局の市長と議会議長による祝辞が掲載されていたくらいである。

 一方、その2日前には択捉島駐屯部隊である第46機関銃砲兵連隊(第71435部隊)の創立記念行事があった。

 興味深いのはこの記事が編制にごく簡単ながら触れているところで、機関銃大隊(複数)、自動車化歩兵大隊(複数)、戦車大隊(単数)、医療大隊(単数)、補給中隊(単数)、地対空ロケット大隊(単数)、ヘリコプター飛行隊(単数)が置かれているという。ただ、これは明らかに連隊の規模を大きく超えるものであるから、もう一つの駐屯地が置かれている択捉島(司令部もこちらにある)併せて、ということだろう。
 なお、以上の内容は概ね知られている情報と一致するが、機関銃大隊と自動車化歩兵大体が別に編成されている、という話は初耳ではないだろうか。

千島列島沖合で日米加が合同海上演習

 以上に先立つ8月末には、北方領土周辺でまた別の軍事的展開が見られた。日本、米国、カナダが合同で海上演習を実施したというもの。
 海上自衛隊によれば、演習名は「ノーブル・チヌーク」で、「千島列島東方から関東南方」において8月21日から同28日まで実施された。参加兵力は以下の通りとされている。

・海上自衛隊:護衛艦「ひゅうが」
・米海軍:駆逐艦「ベンフォールド」
・カナダ海軍:フリゲート「オタワ」・「バンクーバー」、補給艦「アステリクス」

 訓練内容は対水上戦と艦載機のクロスデッキ程度であり、今や日本が米国以外とこうした訓練を行うことは全く珍しくない。ただ、千島列島の沖合まで展開してみせたというのは、対露関係上「踏み込んだな」という印象をやはりもたらすものである。
 実際、この件を報じたNHKは、「千島列島の沖合で海上自衛隊の艦艇が訓練を行うのは初めて」としており、やはりこれまでは千島に近づくのは遠慮していたのではないかと思われる(潜水艦は多分オホーツク海の中まで侵入していたはずであるが)。

サルマート重ICBMを「実戦配備」?

 9月1日は欧州式の学制では新学年の始まりである。ロシアも同様だが、同国ではこの日を「知識の日」と呼び、大統領はじめ要人が特別講義を行なったりする伝統がある(全校集会での校長先生の訓話が国家的スケールと迷惑さを帯びたようなものと考えればよい)。
 その中で、今年は、国家コーポレーション「ロスコスモス」(旧連邦宇宙局と国営宇宙企業群をくっつけたもの)のユーリー・ボリソフ総裁が子供達に特別講義を行なった。月探査機ルナ25号が失敗したばかりなのでさぞかしやりにくかったのではとも思うが、代わりにボリソフは、新型重ICBM RS-28サルマートの実戦配備について語った。あんまり新学期から子供相手にする話ではないと思うのだが。

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