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第292号(2025年1月20日) ベロウソフのロシア軍改革計画と中露軍事協力の行方 ベラルーシに配備される「核」と「オレシュニク」
【今週のニュース】北方領土駐屯師団がロシア陸軍最優秀部隊に ほか
混乱相次ぐウクライナの軍事政策
戦争が長引く中でゼレンシキー政権の戦争指導についての批判・不満・混乱が報じられることが増えてきた。そのうちの一つが陸軍第155独立機械化旅団「アンナ・キエフスカヤ」の新編問題である。同旅団は西側の支援で新編される14個旅団の一つという位置付けであったが、当初から指揮官の不足など問題が山積しており、訓練のために送られたフランスでは50名以上の兵士が脱走するという失態まで引き起こした。そのほか、無許可離隊(というか無許可外出のようなものが多いようだが)は1700人に及んでいるという。
他方、第93旅団のように前線で戦い続けている部隊は消耗し切っており、ある大隊では戦闘可能な人員が8人しかいない時期があった。したがって、新編旅団など作っている余裕があったらその人員を前線への補充に使えという声が出るのは当然であろう。この辺の批判の急先鋒であったのが、ジャーナリストのユーリー・ブトゥソウである。
その後、ゼレンシキー大統領の命令で第155独立機械化旅団の編成は中止されることになり、集めた人員は既存の旅団への補充に回されることが決定した。
さらにゼレンシキーは、空軍の人員が歩兵として戦場に送られているという問題でも非難を受けている。MiG-29の整備を10年以上やってきたというベテラン下士官ヴィタリー・ゴルジェウシキーによると、これまでに空軍から250人が前線送りとなり、さらに218人が同じように前線に送られようとしている、という。
こういう話が現役の軍人から実名で出てくる、というあたりからして相当空軍側の鬱憤が溜まっているようにも見えるが、これについてもゼレンシキー大統領は「そういうことはやめさせる」という姿勢を示した。
問題が出ては修正し、また問題が出ては修正し、という柔軟性というか節操のなさというか、とにかくウクライナはウクライナらしく戦い続けてはいる。
ウクライナ軍がロシア戦略爆撃機基地の燃料施設に大規模ドローン攻撃を実施
ウクライナ軍はロシア西部の爆撃機基地エンゲリスに付属する燃料施設をドローンで集中的に攻撃している。1月8日に行われた最初の攻撃に続き、13日に行われた追加攻撃では更なる大規模な火災が発生した模様である。BBCロシア語版は、そのほかの地域に対してもウクライナ軍のドローン攻撃が行われたことを報じている。
北方領土駐屯師団がロシア陸軍最優秀部隊に
ロシア国防省は、北方領土に駐屯する陸軍第18機関銃・砲兵師団(18PulAD)を2024年度の戦闘訓練・日常活動における最優秀の自動車歩兵兵団に選んだ。この功績により、同師団師団長のアンドレイ・アルヒポフ大佐が国防省拡大幹部評議会の場で表彰を受けた。
最優秀認定の理由は次のとおりとされている。
・今年(2024年)、クリル諸島に駐屯する兵団の軍人たちは専門的技能の習得に関して最も高い成績を示した。
・該当するのは戦闘車両及び自走対空車両の照準・操作要員及び操縦要員、自走榴弾砲の操縦要員、通信科の専門要員である。
このほか、18PulADでは最新型のシミュレーターを使った訓練が行われていることや、同師団が依然としてロシア陸軍唯一の機関銃・砲兵師団であることが明らかにされた。
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ベラルーシ国家安保会議書記が語る戦術核兵器と「オレシュニク」
1月16日、ベラルーシのアレクサンドル・ヴォリフォヴィチ国家安保会議書記が『ベラルーシ・セヴォードニャ(ベラルーシ・トゥデイ)』のインタビューに答えた。以下、TASS通信に転載されたインタビュー内容を紹介したい。
・ベラルーシへの(ロシアの)戦術核兵器配備は1990年代の戦略的誤り、すなわち自国への侵略抑止手段を失うという事態を正すものである
・ベラルーシ領内への「オレシュニク」中距離ミサイルの配備も決定された
・イスカンデル-M短距離弾道ミサイル、戦術核兵器、オレシュニクによって、いかなる潜在敵に対しても受け入れ難い損害を与えられる打撃力を得ることになった
・ベラルーシの軍需産業は発展を遂げており、国産の「ポロネズ」多連装ロケット・システムは米国のHIMARSなど諸外国のシステムよりも優れている
・今日の軍事作戦に不可欠な無人航空機の生産も進めている
・領域防衛システムや民兵システムの設立により、国防に「全人民的」な性質が付与される
【インサイト】国防省拡大幹部評議会報告 打ち出された「ベロウソフ色」とロシア軍の今後-2
おさらい:「システマティック」なベロウソフ報告
連休を挟んで少し間が空きましたが、前回取り上げた国防省拡大幹部評議会でのベロウソフ国防相による報告の続きをご紹介したいと思います。前回の内容はこちら。
↑ここで指摘しているように、ベロウソフによる拡大幹部評議会の特徴は、そのシステマチックさにあります。考慮すべき重要ファクター4つ、それに対して導き出される優先課題10個。それぞれの優先課題には下位優先課題が設けられている、という具合で、多分マインドマップとかにすると綺麗なツリーができるでしょう。
前回はこのうちの重要ファクターと優先課題-5までを紹介しました。簡単におさらいすると、それぞれ以下の通りです。
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