06.【自分に適した「環境」を選べ!】職業選択理論/ホランド
本日ご紹介するのは、アメリカの心理学者ホランド。
ホランドは第二次世界大戦で従軍し、現場の兵士を適材適所に配置する仕事を勤めていました。数多くの兵士の経歴、パーソナリティ、適性を見ているうちに、「特定の職業環境にいる人には、類似した性格特性と性格形成史を示す者が多い」という規則性を発見します。それを後に理論化したものが「職業選択理論」です。
本日は、ホランドの理論および、彼の理論が今日の日本におけるキャリアコンサルティングにどう活かされているのか、解説します。
目次
▼職業選択理論
▼ホランドの六角形
▼アセスメントツールへの活用
▼まとめ
▼職業選択理論
ホランドの提唱した「職業選択理論」の概要は、以下の4点にまとめることができます。
①個人の行動は、その人の性格とその人を取り巻く環境との相互作用によって決められる。
②人間の性格は「現実的」「研究的」「芸術的」「社会的」「企業的」「慣習的」の6つのタイプに分けられる。
③(職業)環境も性格と同様に、6つのタイプに分類される。
④人間は、自分の持っている技能や能力が活かされ、価値観や態度を表すことができ、自分の納得できる役割や問題を引き受けさせてくれるような環境を求める。
「職業選択理論」は、パーソンズが提唱した「マッチング理論」のように、個人と職業のマッチングを基礎としているものの、個人の能力・スキルよりもむしろ「心理的側面」に焦点を当てている点や、「個人と環境の相互作用によって、個人の能力や興味は発達していく」という「キャリア発達」の観点も取り入れている点で特徴的です。
▼ホランドの六角形(RIASEC)
ホランドは、個人も環境も6つのタイプに分類され、自分の性格タイプと同じ職業環境タイプで仕事をすることで、より「職業的満足」を得ることができると考えました。
そして、その6つのタイプを可視化したものが「ホランドの六角形」、通称RIASEC(リアセック)です。
現実的 R(Realistic):機械や物体などモノを対象とする、具体的で実際的な職業を好む。現実的・粘り強い・控えめ・落ち着いている傾向がある。
研究的 I(Investigative):研究や調査など、探索的、研究的仕事を好む。合理的・分析的・独立心が強い・知的・几帳面・内向的な傾向がある。
芸術的 A(Artistic):音楽、美術、文芸など芸術的な仕事を好む。繊細・感受性が高い・内向的かつ衝動的な傾向がある。
社会的 S(Social):人と接するなど、対人的な仕事を好む。協力的・洞察力がある・責任感がある・社交的で思いやりがある。
企業的 E(Enterprising):企画や組織マネジメントなどの仕事を好む。野心的・積極的・社会性に富む傾向がある。
慣習的 C(Conventional):定まった方式や規則に従い、反復的な仕事を好む。協調的・自制心に富む・几帳面・粘り強い・人の和を重んじる傾向がある。
▼アセスメントツールへの活用
ホランドの理論は、主に大学生以上の若年層向けに使われる「VPI職業興味検査」や、まだ職業理解が不十分な学生に対して行われる「職業レディネステスト」など、多くのアセスメントツールの基礎になっています。
これらのアセスメントツールの結果が、必ずしも正しいわけではないことを念頭に置く必要はありますが、以下の観点で結果を分析していくと、新たな気づきがあるのではないかと思います。
①自己評価と客観評価の一致・不一致
②「自分の興味・性格特性から見た適職」と「スキルなど他の側面から見た適職」の一致・不一致
③「自分の興味・性格特性から見た適職」と「希望職業」の一致・不一致
▼まとめ
このように、ホランドの理論は自己理解の促進、特に自分の「興味」を可視化して明確にすることに役立てることができます。
そのため、職業への興味が一貫していない、あるいは自分の興味・適性への理解が不足している若年層を支援する上で、よく用いられる考え方です。特に、アセスメントツールを活用した支援は、「自分の興味や特性に適した職業は何か?」「自分が希望する職業の特徴・求められる行動特性は何か?」について考えを深めるきっかけになる点で有用です。
キャリアデザインにおいて、自己理解と職業理解は両輪の役割になっているのだということを教えてくれる、ホランドの理論をご紹介しました。
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