
GLOBE・GLOVE(3)
前の話はこちらです
3
一方、僕にも年の離れた姉ちゃんがいる。両親が共働きで遅くまで帰ってこないので、僕の面倒は姉が見てくれていた。だから裏を返せば、僕は姉ちゃんに逆らって生きていく事が出来ない。一言でも文句を言えば、晩御飯を抜かれたり風呂上がりにパンツを隠されたり、姉ちゃんに悪逆非道の限りを尽くされてしまう。
そんな姉ちゃんに対抗するため、僕は男らしく強くなりたかった。二言目には「あんたトロい」とバカにする姉ちゃんを、運動神経を鍛えて見返してやりたかった。
美緒は、そのコーチ役を引き受けてくれた。
放課後の公園で、僕らは毎日ドッジボールを投げ合った。美緒の投げるボールは、何度も言うが強かった。その上、ボールを取りにくい膝下、逃げにくい腹と柔軟に狙いを替えてきた。「取れる!」と思っても、強烈なスピンのかかった美緒のボールは僕の手をはじいてしまうのだった。
何度も何度も失敗し、僕は頭を使った。
まず、美緒の視線を見て、僕のどこを狙ってくるかを読んだ。膝下なら、最悪避ければいい。腹や胸に来たとしたら、手だけでは取れないから、少し腰を落としてボールの正面に移動し、腹をクッション代わりに腕でがっちり抱え込む。理論に体が追いつくよう、僕は必死で頑張った。
そしてどうにかボールを受け止められるようになった時、とてつもないご褒美が待っていた。学校では決して笑わない美緒だが、二人で練習しているときだけは、僕がボールを取ると、
「取れたやん」
と、あのぴかぴかの瞳をさらに光らせて笑ってくれるのだ。
おかげで、投げる方はともかく、ボールをキャッチする方はメキメキと上達した。美緒のボールが取れるようになると、クラスの他の子達のボールなど訳はない。おかげでクラス対抗戦でも、僕は美緒と並んで主力として活躍する事が出来た。
第三話です。次の話も読んでくだされば嬉しいです。
第一話はこちら。