第二十五回「てんせいのてんさい」
黒幕側の動きが見えてきた第二十五回。
それでは解説と参りましょう。
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巻き戻し
これは実際、どのくらい前の話なのか。
実を言うと、具体的には決めていません。
理由は、あとあとネタを差し込める余地をあちこちに残しておきたいからですが、とはいえ、おおまかな時間軸の想定は存在します。
まず六道丸の話から、この会合は彼が柳生と戦って以降というのは明らかです。
となると第十話以降なのは確定的ですが、第十一話で石谷村に万象が現れ、武蔵四郎たちを遊郭に誘いますから、この会合が行われたのは、武蔵四郎らが石谷村に行くまでの間ということになります。
それまで何日経っているかは明確に決めていませんが、いずれにせよ、修羅百八はそれから相当なスピード感で遊女屋を支配下に置いたことになります。
ただ、安槌遊郭自体は、前々から万象一味が目をつけていた場所であり、修羅百八が落とす前から、大小さまざまな実験が行われていたようです。
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狐
九郎判官義経二世の正体は狐でした。
と、いきなりの超展開で面食らった方もいるかと思います。
これは浄瑠璃または歌舞伎の演目として有名な『義経千本桜』の源九郎狐が元ネタです。
その演目には源義経の家臣・佐藤忠信に化けて大活躍する狐が登場し、元となった狐伝説も存在しています。
裏設定としては、自分のことを人間と思いこんでいるかのようにふるまう狐を万象が見つけた際、その伝説を思い出し、知能を高めたり、人間に化けられるような改造を施したりしたものです。
狐の肉体の外側に細胞をまとわせて肉体を作っているため、実体が存在しています。
一九素饂飩の分身と同じく生体部品で出来ており、死亡と同時に蒸発したため、煙と消えたように見えますが、幻ではありません。
万象としては、「自己認識と肉体の関係」を調べるための動物実験であり、この実験テーマは彼の中で重要な位置づけとなっています。
なお、この狐が己を義経の生まれ変わりと信じて疑わなかったのは、万象の洗脳ではなくもともとの性格によるもので、その思い込みの強さが実験を成功させました。
他の狐や狸にも同様の実験を施したようですが、結局成功したのは九郎判官義経二世だけでした。
さて、次回、第二十六話ブログは9月18日(水)、『しごにんの侍』第二十六話はその前週、9月11日(水)に公開予定です。
といったところで、今回ここまで。また次回のおたのしみ。