
シャッターアートのコーディネートを振り返る
2020年7月〜2021年2月にかけて三鷹台エリアの5箇所で実施されたシャッターアートについて振り返ります。
5箇所でシャッターアートを実施することに
当初は「旧・アンティーク日本の心」のシャッターアートだけと考えていたのですが様々なご縁やご協力のおかげで、最終的に三鷹台エリアの計5箇所でシャッターアートを企画運営、コーディネートをすることになりました。
▲三鷹台シャッターアートマップ
シャッターの掃除
まずやったことはシャッターの掃除です。シャッターの掃除をしてみて初めて分かったのですが、シャッター掃除はとても大変だということです。
塗装が剥がれかかっていたり、錆びていたりするため、ナイロンたわしで研磨したり、
シャッターの溝の部分の埃や汚れをブラシで掻き出したりして掃除をしました。
友人や、
ご近所さんに掃除を手伝っていただきました。本当に感謝です。
結論を言うと、ケルヒャーなどの高圧洗浄機で一気に掃除をするのが時間も手間もかからず効率的です。店内の床や壁、階段箪笥の掃除のためにケルヒャーを結局購入することになりました(ケルヒャーの動画はこちら)。
消耗品の購入
次に塗料や筆などの消耗品の購入です。アーティストと一緒にホームセンターに行き、シャッターに絵を描くにあたって必要な物を選んでもらいました。
▲車を出してくださる方の存在も非常に重要
塗料や筆以外にもブルーシートや養生テープなども必要です。ペンキを使用して描くため目の安全のためのゴーグルやゴム手袋なども購入しました。
学生には交通費を支給
今回のシャッターアート企画は、まだ実績が少ない若手アーティストに表現の場を提供する、という趣旨でした(参考)。SNSやインターネットで描き手を募集したところ都内近郊の各地から学生がたくさん集まってくださいました。そのため学生に関しては交通費を支給することといたしました。
不動産/店舗オーナーとアーティストとの利害の調整
一番のメインとなった仕事は不動産/店舗オーナーとアーティストとの連絡やお互いの思いの調整です。不動産/店舗オーナーとアーティストとがコミュニケーションを取りながら絵のコンセプトを決めるというスタイルが基本でした。
営業店舗のシャッターアートの場合、マーケティング的な目線で絵を描くことにどうしてもつながりがちです。自分や自分たちの表現を気兼ねなく自由にしたいアーティストと経営的な目線を当然持つ不動産/店舗オーナーとの調整、あえて冷静に言えば利害を調整することがコーディネーターの役割だと考えました。
▲サンドイッチ屋さんの「サンドーレ三鷹台店」は人気商品のミックスサンドが描かれている
▲お茶処「西野園」は店舗名称と営業時間、定休日が表示されている
アーティストのサポート
実際に体を動かしてアーティストのサポートもしました。塗料や筆など絵を描くために必要な道具をシャッターの前まで持っていく、
アーティストが来る前に現場に置いておく、ということも。
高所作業をする際は大型の脚立をお借りして、支えたりもしました。しかもこちらの場所は道路沿いで危険ということで、アーティストの安全を第一にサポートをしました。
旧・アンティーク日本の心が道具置き場になっていました。後半くらいまでアーティストが絵を描きにくる時間に合わせて旧・アンティーク日本の心を開けにいっていましたが、キーボックスをセットしておいてキーナンバーをアーティストと共有しておけば鍵開けの手間は削減できると思います。実際、最後の方はキーボックスを使用しました。
余ったペンキの処分
一番大変だったと言って過言ではないのが余ったペンキの処分です。改めて確認したのですがペンキはそう簡単に捨てられないのです。余ったペンキは新聞紙などに染み込ませて、さらに乾かせてから可燃ゴミに出せるのですが、この作業が膨大でした。
▲余ったペンキたち
どの色をどのくらいの範囲(面積)に使用するか、あらかじめ計画をしっかり立ててからペンキを購入するのが重要です。余らせてしまうと処分が本当に大変です。結局、民間の不用品回収サービスも利用することになりました。
▲余ったペンキを塗った木彫りの熊
記録を残し記憶をつなぐ
最後は文章や映像で記録をアーカイブし、シャッターアートを観る人たち、そしてシャッターアートに関わった人たちの記憶をつなぐことです。一過性の取組に終わらせることなく、まちの人たちに継続的に愛されるシャッターアートになったらいいな、という思いでキャプション(絵の注釈文)を絵の側に設置しています。
そして5箇所全てを動画にまとめ、YouTubeで公開しています。
まとめ
5箇所全てのシャッターアートにかかった消耗品費やアーティスト(学生)の交通費の合計は20万円近くです。イノイチサードプレイスプロジェクトの活動費としていただいていた寄付金を全て注ぎ込んでも足りなかったため、私の自己資金で不足分を賄いました。
「うちのシャッターにも描いてほしい」と言ってくださる不動産/店舗オーナーさん、「シャッターに絵を描きたい」というアーティストさんから、別途お話をいただいたため、コーディネーターができる人を集めようと募集をしたりもしました。
資金面を考えると、不動産/店舗オーナーさんが一部負担する、基金のようなものを作る、クラウドファンディングのような形で寄付を集める、といったことが今後ありえます。
継続的にまちの人たちに愛されるシャッターアートに育てていくためには、予算単年度主義な行政による補助金や助成金に頼るのではなく、不動産/店舗オーナーやまちの事業者、NPO、個人など民間の主体による自律的な資金を使うことが長い目で見ると重要です。自分たちのお金ならば使途を深く考え、最小の経費で最大の効果を挙げようとするインセンティブが強く働くからです。
シャッターアートに興味や理解のある不動産/店舗オーナー、自由な表現を求めるアーティスト、両者をつなぎ利害を調整するコーディネーターの三者が有機的につながることで、魅力的なアートという目に見える価値のみならず、一つの作品を創り上げたという共通体験や関係性という目に見えない価値をも生み出すことができたのだと実感します。
補足:シャッターでなくてもいい
シャッターに限らず、まちの中には自由な表現や創作の舞台となりうる余白や可能性が点在しています。そうしたまちの余白や可能性のポテンシャルを活かすことができれば、まちはもっと素敵な感じになると思います。みんなで取り組んだ今回のシャッターアートの試行錯誤を、次の展開のヒントにしていきたいです。
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