トレードのルール

こんにちは、cba manです。
質問箱にてトレード関連のルールについて多くいただくので、記事にまとめていきます。

概要

NBAはサラリーキャップの仕組みがあるため、
サラリーキャップを超えた状態で新たに選手を獲得する場合には例外条項を用いる必要があります。

それはトレードにも当てはまります。
            
逆にいえば、サラリーキャップを超えなければトレードは自由に行うことができます。
(正確にはサラリーキャップ+0.1Mまでは自由)

(2022-23シーズンのサラリーキャップは123.655Mです)

ほとんどの例外条項はFA選手との契約に用いるものですが、
トレードにおいて使用できる例外条項は以下の3つです。

①Trade Player Exception
直訳するとトレード選手例外条項です。
トレードによってサラリーキャップを超えることができる仕組み全般を指します(詳しくは後述)。

②Minimum Player Salary Exception 
日本語ではミニマム例外条項と呼ばれることが多いです。
トレードでは、2年契約以内のミニマムサラリーの選手は後述のサラリー合わせをしなくても獲得することができます。

③Disabled Player Exception 
DPEと略されるものです。トレードにおいてはシーズン全休選手や死亡してしまった選手のサラリーの半分か、
フルミドル例外条項の額(2020〜21シーズンは9.258M)
のどちらか安い方までのサラリーまでの、
契約最終年の選手を1人獲得することができます。


またトレードを行うには、


・契約下にある選手

・直前のドラフト+7年以内の指名権

・直前のドラフト+7年以内の指名権のスワップ権

・NBA選手になる可能性が十分にある(リーグオフィスが判断)選手の交渉権(=ドラフト指名後NBAチームと契約を結んでいない選手)

・0.11M以上の現金


のいずれか1つ以上を必ず含める必要があります。 

つまりTE(後述)、DPE、ミニマム例外条項などはあくまで選手を引き受けるための枠であり、トレードの対価とはなり得ません。

また3チーム以上の場合は、


・契約下にある選手

・0.11M以上の現金

・プロテクトによって譲渡が消滅する可能性のない指名権

・交渉権(上記の内容と同じ)


のいずれか1つ以上の要素を2チーム以上に送る必要があります。

選手がトレードされると、
その選手のサラリーは元チームのサラリーから除外され、トレード先のチームにカウントされます。

一応例外があり、ミニマムチームサラリーの計算の場合にはレギュラーシーズンの日割り分をそれぞれのチームが支払います。
(ほとんど気にすることがないルールです)

Trade Player Exception 

トレード選手例外条項(以下TPE)は
「トレードによってサラリーキャップを超えることができる仕組み全般」
と述べました。

これによりチームはサラリーキャップを超えてもトレードを行うことができる、ということですが当然制限があります。                                   

TPEは

Simultaneous Trade(同時トレード)
Non-Simultaneous Trade(非同時トレード)

の2つに分類されます。
それぞれ見ていきましょう。                          


①同時トレード                                     同時トレードでは即時に完了させる代わりに放出額よりかなり多くのサラリーを得られます。

俗に言う「サラリー合わせ」です。
放出する選手のサラリーに対して、受け取ることのできる選手のサラリーの上限が定められています。         

トレード後のチームサラリーがタックスラインを超えない場合は以下の表の通りです。


放出した選手のサラリーの合計を用いて計算します。                                       

トレード後のチームサラリーがタックスラインを超える場合は放出選手のサラリーにかかわらず、

表の一番下と同じく
放出選手のサラリー×1.25+0.1M
となります。
(2022-23シーズンのタックスラインは150.267M)


同時トレードは複数人の選手のサラリーを集計して計算を行うことができます。
(例:非タックスチームが12Mの選手と3Mの選手を放出し、20Mの選手を受け取る) 


また、
例外条項によって獲得した選手は2ヶ月間、他のトレードで放出する際に集計をすることができない
というルールがあります。

これは忘れがちなルールなので注意が必要です。
                                 

サラリーは集計をしないほうが非タックスチームにとって有利な場合があります。

例えば10Mの選手2人を放出する場合、

集計をする場合は
10+10=20M、
20×1.25+0.1=25.1M
までの選手までが受け取れますが、

集計をしない場合は、
10+5=15M
までの選手を2人受け取る事ができます。               


また、集計をしない場合は後述のTEが発生することがあるというメリットもあります(非同時トレードの部分で解説します)。


トレードの際のサラリー合わせでは、基本的にその選手のサラリーの満額が使用されますが、
放出する側、受け取る側それぞれで異なる額が使用される場合があります。


◯放出する側
・当該選手のサラリーが部分保証あるいは無保証の場合、その時点で保証されている額
(シーズン終了後からモラトリアム開始前日の間にトレードする場合はそのシーズンの満額のサラリーか、
次のシーズンに保証されているサラリーかどちらか小さい方)

・NBA在籍3年目以降のミニマム1年契約の選手の場合、3年目の選手のミニマムサラリー

・ギルバートアリーナス条項の対象となった選手の場合、トレードするチームに計上されているサラリー
受け取る側はそれを継承する(気が向いたら解説します)

・サイン&トレードにおいてBYCの対象となる選手は、
前シーズンのサラリーか、新しい契約のサラリーの50%のどちらか大きい方(別途解説します)   

・2way契約の選手は0として扱う


◯受け取る側
・ルーキースケールの選手が契約延長を行い実際にその契約が開始される前にトレードされる場合、
ルーキースケールの最終年の額と新契約の総額の平均(俗に言うポイズンピル規定)

・トレードボーナスが付いている契約の場合、分配された額を含めたサラリー
(別途解説する確率は15%ぐらいでしょう。トレードボーナスはベースサラリーに対して最大15%であるという高度なギャグです)

・チーム成績に基づくパフォーマンスボーナスがトレードによってlikelyからunlikely、あるいはunlikelyからlikelyに変更される場合、変更後のサラリー
(別途解説する可能性は15%ぐらいでしょう。ボーナスはベースサラリーに対して最大15%であるという高度な(ry) 

細かいですが、一見成立しそうなトレードが成立しそうでできなかったりするので、こういったものがあるということを意識していただけたらと思います。


②非同時トレード
非同時トレードでは放出額より0.1Mまでしか多く受け取れない代わりに1年の時間が得られます。

例えば
① チームAが10Mの選手を放出し5Mの選手を獲得
② ①から1年以内に3.1Mの選手をチームBから現金で獲得
③ ①から1年以内にチームCから2Mの選手を指名権で獲得
といったことができます。

最終的にチームAは10Mの選手を放出し、10.1M分の選手を獲得しました。

このようなトレードが非同時トレードであり、
また例のように5.1M分を取り戻すのは必ずしも同じトレード先である必要がなく、複数人獲得することも可能です。


見方を変えると、サラリーが減少するトレードを行ったとき、その差額が別の選手を獲得できる
「1年間使えるクーポンのようなもの」
に変化するように見えます。

この「クーポンのようなもの」
はTrade Exception(以下TE)と呼ばれています。

現地のCBAに明るい記者の中にもTEのことをTPEと呼ぶ方がいますが、
TPEは最初の方に書いたように「トレードによってサラリーキャップを超えることができる仕組みそのもの」のことなので注意が必要です(紛らわしいですね)。

ただTPEという言葉をを本来の意味で使用することは基本的にないので、TPEでも問題ないはずです。

◯その他
・選手のサラリーを集計するトレードは必ず同時である必要がある
(例:10Mの選手と5Mの選手を集計し15Mとし、9Mの選手を獲得しても6MのTEを得ることはできない)

・TEを使用してFA選手と契約することはできない
(サイン&トレードを除く)

・TEそのものをトレードすることはできない

・TEを集計することはできない
(例:TE+TE、TE+選手のサラリーなど)


上記を読むと複数選手を放出する際には必ず同時トレードである必要があるように思えますが、必ずしもそうではありません。例えば…

チームA(非タックスチーム)放出:11Mの選手、9Mの選手
チームB(非タックスチーム)放出:15Mの選手

というトレードの場合、

チームA目線
①11Mの選手で15Mの選手を同時トレードで獲得(+5M以内)

②9Mの選手を「何もないところ」に非同時トレードで放出し、
9MのTEを獲得


チームB目線
①15Mの選手で11Mの選手と9Mの選手を同時トレードで獲得(+5M以内)


というようになり、一つのトレードを分解してそれぞれのチームが各々で処理を行うことができます。
これを用いたより複雑な例を紹介します。

チームA(タックスチーム、4MのTEあり)放出:10Mの選手
チームB(タックスチーム)放出:7Mの選手、5Mの選手、4Mの選手

というトレードの場合、

チームA目線
①10Mの選手で、7Mの選手と5Mの選手を同時トレードで獲得する(×1.25+0.1M以内)

②TEで4Mの選手を獲得する

チームB目線
①5Mの選手と4Mの選手を集計して10Mの選手を同時トレードで獲得する

②7Mの選手を「何もないところ」に非同時トレードで放出し、7MのTEを獲得する


となります。

つまり、それぞれの目線で受け取るサラリー合わせをクリアさえできれば処理は最も都合の良い形に組み替えることができます。

近年は様々な工夫によって「何もないところ」への放出をすることで大きなTEを得るというケースが増えていますね。

トレードにおけるドラフト指名権の扱い

NBAではトレードでドラフト指名権を放出することができます。

指名権は直接的に戦力に関与しないという特殊な立場でありながら、
現在・未来のチームビルディングに大きく影響を与える存在なので、
色々なルールが設定されており複雑になっています。


◯サラリーについて
ドラフト指名権、また指名後未契約の選手の交渉権はトレードのサラリー合わせにはカウントされません。

実際に契約を結んだ場合にサラリー合わせにカウントされるようになります。

サラリー合わせではノーカウントですが、
1巡目指名権の場合は指名後実際に契約を結ぶまでの間もルーキースケールの120%がチームサラリーに計上されます。

これは、キャップペースをフルに使用したあとにルーキースケール契約を結ぶという抜け穴を防ぐためです。

トレードされた場合もトレード先のチームに同様にカウントされます。
(ルーキースケールはこちら)

要するにルーキー契約を結びたいのであればその分のサラリーは確保しておいてね、ということです。

その選手がNBA以外のチームと契約を結ぶか、
そのシーズンにNBAチームと契約を結ばないことを書面で同意した場合はこの計上分を削除することができます。

2巡目指名権の場合は専用の例外条項がないので、契約を結ぶまではサラリーに計上されません。


◯7年ルール
トレードで放出することができるのは、将来7年分の指名権までです。

2022-23シーズンの場合は2029年のものまでということです。


◯プロテクトについて
指名権を放出する場合は「プロテクト」を付与することによって、
不測の事態で成績が落ちてしまった場合などのために保険をかけることが多いです。
(例:1〜14位の場合は来年に持ち越しなど)

2021年は1〜14位プロテクト、
かかったら2022年は1〜10位プロテクト、
そこでもかかったら2023年は1〜6位プロテクト、
それでもかかったらプロテクトなし、

というように段階的にプロテクトを付与することで、
良い順位を引けるようなうちは渡らないようにするというのが一般的です。

プロテクトは55位までしか付与することができません。

また、プロテクトされた結果7年先の指名権も譲渡されない場合は、
譲渡自体をなくすか、
2巡目指名権に変換するなどをして7年以内に収める必要があります。

これらのルールを守っていれば、
基本的に交渉次第で自由にプロテクトを付与することができます。


◯Ted Stepienルール
チームは、「将来の」1巡目指名権が2年連続でなくなってしまうようなトレードを行うことができません。

これはTed Stepienルールと呼ばれ、
GMなどフロントオフィスが交代した際にアセットが全然ないということを防ぐためにあります。

「将来の」なので、直前の指名権を放出したかどうかは考慮しません。

2年連続でなくならければよいので、
もし自前の1巡目指名権がなくても他チームから獲得した1巡目指名権があればこのルールは回避することが可能です。

また同じ年の1巡目指名権どうしのスワップの場合もなくならないので、なくなる年と連続させることは可能です。

プロテクトによって2年連続でなくなってしまうことも回避する必要があります。

例えば1巡目指名権2つを放出するトレードで片方にプロテクトを付与し、
プロテクトが付与されたものが譲渡されてからもう1つを譲渡するという内容の場合、

1年空けて放出しなければならないので、
プロテクト付きの方は5年目までに譲渡されるように設定する必要があります(7年ルールもあるため)。


◯その他
・まだ所有していない将来の指名権を放出することは不可能
(例:トレードを2021年に行ったとして、2024年のドラフトの日に持っている1巡目指名嫌のうち最も低い順位のものをトレードする、というケースで、その時点で2024年の1巡目指名権を1つしか持っていないといった場合)

・プロテクトが付与されていない、他チームから獲得した指名権を放出する際にはプロテクトを付与することができる

・Ted Stepienルールを回避するために、2つの1巡目指名権を1年空けて放出するということを決めた場合、
後からその間の年の1巡目指名権を獲得したとしても1年空けることは変わらない
(例:プロテクト付きの1巡目指名権が譲渡されてから2年後にもう1つの1巡目指名権を譲渡するという条件で、
最終的に2024年と2026年の1巡目指名権がトレードされる場合、
所持している2025年の1巡目指名権が後から2つに増えたとしても、
2番目に譲渡されるのが2026年なのは変わらない)

・指名権の受け取りを1回だけ1年間延期することができるというオプションを含めることができる。
プロテクト付きの指名権は延期できず、7年ルールも適用される。

・譲渡延期のオプションを除いて、トレードの際には指名権が譲渡される年を正確に指定しなければならない。
プロテクトの結果別の対価に変換されるというケースでも正確に指定しなければならない
(例:2023年の1巡目指名権に1〜14位のプロテクトを付与し、譲渡されなかった場合は2巡目指名権を2つ譲渡する、
という内容の場合、具体的にいつの2巡目指名権なのかを必ず指定する)

・譲渡延期のオプションと順位のプロテクトは組み合わせることができない。

・ドラフト指名選手との契約はサイン&トレードにすることはできない。

・ドラフトの日には、指名が行われる前の指名権をトレードすることはできない。

・ドラフトロッタリーの前日18時(現地時間)からロッタリーが終了するまでの間、ロッタリーピック(1〜14位)をトレードすることはできない。


トレードにおける現金の扱い

NBAではトレードパッケージに現金を含めることが可能です。

トレードを成立させるための形上の対価という側面が強いです。

各チームが1シーズンに支払うことができる総額、受け取ることができる総額はそれぞれ制限されています。

各シーズンの限度額は、
2017-18シーズンの5.1Mをベースにサラリーキャップの変化率と同じ割合で増減します。
2020-21シーズンは5.617Mです。

各チームは最大5.617M受け取ることができ、最大5.617M放出することができるということです。

プロテクト付き指名権によって将来に現金を放出する可能性がある場合は現在シーズンの総額にカウントします。

現金はトレードのサラリー合わせのサラリーとしてカウントすることはできません。
あくまで選手のトレードは前述したTPE等のルールに則る必要があります。

と、ここまでがトレードの基本的なルールです。
お読みいただきありがとうございました。

まとめ


・サラリーキャップ+0.1Mまでのトレードは自由に行うことができるがそれを超える場合は例外条項を使用する必要があり、
トレードにおいて使用できる例外条項はTPE、DPE、ミニマム例外条項の3つである

・トレードを行うにはお互いが必ず選手、交渉権、指名権、スワップ権、現金のどれか一つ以上を放出する必要があり、3チーム以上の場合は追加の条件がある

・TPEには同時トレードと非同時トレードの2種類があり、
同時トレードはいわゆるサラリー合わせ、
非同時トレードはTEが作成される。
指名権、交渉権、現金はサラリーとしてカウントしない

・ドラフト指名権は将来7年分までしかトレードできず、
1巡目指名権が2年連続でなくなるようなトレードはできない

・現金はシーズンごとにトレードで使用できる総額が制限されている


その他ルールは追記か、別記事で出していこうと思います。何か質問等あればTwitterまでどうぞ。

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