野球の深み
こんにちは!
9月から10月にかけて、
東京六大学野球の実況を3試合担当させていただきました。
担当カードは
慶應義塾大学va明治大学(9月30日)
慶應義塾大学東京大学(10月7日)
早稲田大学vs明治大学(10月20日)
の3試合。
それぞれBIG.6TVで無料アーカイブが公開されています。
その中でも印象に残ったのが先日担当した10月20日の早稲田と明治の試合。
元慶應監督で現ENEOS監督の大久保秀昭さんと喋らせていただきました。
試合前からは多くのお客さんが来場。
2万に迫るファンが集まっていました。
ドラフト直前の試合と言うのもあり、
一層注目度は高かったように思えます。
早稲田先発宮城と明治先発毛利の投げ合いからスタート。
5回まで得点がなかったのですが、
ピッチングはもちろん両投手の守備が素晴らしかった。
得点圏に背負うシーンが何度かありながらも、
お互いホームは踏ませない両大学鉄壁の守り。
明治はこの試合の前まででノーエラー、早稲田もわずか3つの両大学。
解説の大久保さん曰く、
ランナーがいる状況では考えられるケースが多く有り、
打球の種類による動き、さらに攻撃側の走者や打者のによる動きによる対応も頭に入れないといけないとのこと。
例えば、
早稲田の攻撃で一死一塁の状況で走者が俊足の小澤選手だとして、投手の横に弱い打球が転がったらショートの宗山選手はどのタイミングで捕球したら二塁に投げるべきなのか、それとも一塁を選択するのか。
さらには、
プッシュバントがニ塁方向に来た場合、強さまたはどの方向によってセカンドが出るのかファーストが出るのか、そしてその場合の各塁のベースカバーは誰がするのかなど。
練習の段階で多くのことを頭に入れながらケースバイケースでの守備練習が必要とのことでした。
さらに早稲田で言えば、
バスターエンドランも良くやってくるチームなので、
そのあたり走者に対するカバーや他の野手との連携など考えることは山ほどあるようです。
これらケースは一例にすぎませんが、
守備や相手の攻撃のサインによる事前練習が出来ているからこそ、
秋のノーエラーに繋がっているのだと思います。
守備中にあれこれ考えていたのでは混乱すると思うので、
打球の性質、相手の攻撃のサインにより自分の動きはこうする、
といった一種方程式のようなものがあると感じます。
この段階でも既に相当面白い。
野球は見る視点のよって面白さが変幻自在に変化します。
放送内では時間の尺もあるので多くは話せませんでしたが、
これらに関してCM中にさらに詳しい話もしてました。
キャッチャー出身で監督もされている大久保さんのお話は、
私にとっては宝石のような話ばかり。
野球の深部に少しばかり触れられた気がしました。
加えて、
ゲーム展開の中で投手交代が肝になるという話がありました。
宮城、毛利の両投手が非常に良いなかでどこで代えるか。
先発ブルペン含めて秋の防御率が1点台の両チームなので、
代えたあとにどうなるか。
先に動いたのは明治。
毛利に代打を起用し次の回から大川にスイッチ。
クローザーの役割を担う大川を投入した段階で、
2番手の役割が非常に重要だということは私でも分かります。
しかしこれが裏目。
ワンナウトしか取れず、
後続の投手も打たれ3失点。
次の回早稲田は宮城を続投させ無失点。
流れ的にも早稲田かと思った展開。
ただそこはやはり明治大学。
宮城から代わった鹿田の初球を木本がHR。
私が実況した試合は全て木本選手がHRを打っています。
さらに飯森、宗山のタイムリーですぐに同点。
アツすぎる。
面白すぎます。
大久保さんの予言的中。
ピッチャーの交代が両チームともに肝になりました。
流石の観察眼でした。
そのあとは両チームとも継投。
ランナーを出しながらも得点は許さず、両大学が凌ぐ展開。
明治の方は浅利が3回3分の2を投げて無失点。
ストレートは一級品。
コースに投げ分けられるようになればさらに良くなるとのこと。
コントロールに苦しむ場面はありましたが、
早稲田打線が一巡するまでほぼ前に打球を飛ばせていない状況。
日ハムドラフト3位指名おめでとうございます。
プロでもその快速球で活躍を楽しみにしています。
試合に話を戻すと、
早稲田は田和選手も登板。
あのシンカーとカットボールのコンビネーションはいつ見ても強力。
トミー・ジョン手術明けの今シーズンです。
そして驚くべきは早稲田一年生の安田投手。
11回から投げて2回を三者凡退。
大久保さん曰くあれはシンカーで、
初見で合わせるのはほぼ不可能とのこと。
腕を思いきり振っているのにも関わらず球速は最遅で94km/h。
いい意味でまったくボールが来ません。
日大三高は伝統的に投手にシンカーの指導をするそうですが、
安田選手も教わっているのでしょう。
吉永選手も懐かしい。
試合時間4時間35分。
結局延長12回で決着が付かず引き分け。
12回制の試合では歴代2番目とのこと。
時刻は18:30を超えていました。
太陽は消え、夜の月が顔を出していました。
夢のような時間でした。
これまで東京六大学野球の試合を実況してきたなかで、
一番濃かった試合だったと言えます。
両者の駆け引き、監督の采配、選手の技、スタンドの歓声、おまけに夜の神宮、、、etc...
そして大久保さんの観察眼。
またこのような素晴らしい試合に出会えたら良いなと思いながら、
神宮をあとにしました。
改めて大久保さんありがとうございました!
ENEOSの監督はご勇退されるそうですが、
今後も益々のご活躍を楽しみにしています。
それでは!