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迫りくる倒産の足音…中小企業が直面する「5つの試練」と生き残り戦略
はじめに
昨今の中小企業を取り巻く経営環境は、まるで嵐の海を航海しているかのような厳しい状況が続いています。
原材料の高騰、円安、人手不足、そしてコロナ禍からの回復の遅れ・・・次々と押し寄せる波に、疲弊している方も少なくないのではないでしょうか。
残念なことに、倒産件数も年々右肩上がりで増加してしまっているのが現状です。
今回は、そんな中小企業が今まさに直面している「5つの試練」をより具体的に掘り下げ、その上で、この厳しい時代を生き抜くための「生き残り戦略」を徹底解説してみたいと思います。
事例を交えながら、実践的なアドバイスをお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
試練1:止まらない原材料の高騰
資源エネルギー価格の高騰は、中小企業の収益を大きく圧迫しています。当然、この影響は私たち個人の生活にも大きな影響を及ぼしています。
中小企業においては、特に製造業や建設業、飲食業など、原材料費の占める割合が高い業種ほどこの影響は深刻です。
価格転嫁が難しい中小企業は、利益を削りながら事業を継続せざるを得ない状況に追い込まれている先も少なくありません。
次にご紹介するのは私の実際のクライアント先の事例になります。
事例1:町工場の苦悩
ある金属加工を行う町工場では、主要な原材料である鉄鋼の価格が、昨年比で2倍以上に高騰しました。受注価格は据え置きのため、利益が大幅に減少しています。
経営者は、取引先との交渉を重ねましたが、価格転嫁は一部に留まり、苦しい経営を強いられている状況です。事例2:飲食店の悲鳴
ある飲食店では、小麦粉、食用油、肉類など、あらゆる食材の価格が高騰しています。メニュー価格を上げざるを得ない状況ですが、客離れを懸念して、値上げ幅を抑えています。
結果として、利益が大幅に減少し、経営者は頭を抱えています。
試練2:歴史的な円安と輸入コストの増加
近年の急激な円安は、輸出企業にとっては追い風ですが、輸入に頼る中小企業にとっては大きな痛手となっています。原材料、部品、製品など、あらゆる輸入コストが上昇し、価格競争力を失いつつある状況が続いています。
例えば、アパレルメーカーでは、商品の大半を海外で生産しています。円安の影響で、輸入コストが大幅に増加し、利益が圧迫されています。
経営者は、国内生産への切り替えを検討していますが、コストや技術的な問題がありなかなか実現できません。
輸入雑貨店では、商品の仕入れ価格が大幅に上昇し、利益が減少しています。価格を上げざるを得ない状況ですが、競合他社も多く、価格競争が激しいため思うように値上げできていません。
試練3:深刻化する人手不足と人件費の高騰
少子高齢化が進む日本では、人手不足が深刻化しています。
求人を出しても応募がなかったり、採用してもすぐに辞めてしまったり…慢性的な人手不足に悩む中小企業は少なくありません。
人材確保のために人件費を上げざるを得ない状況も、経営を圧迫する要因となっています。
私が就職活動をしていた時期はちょうどリーマンショック後だったこともあり、就職氷河期と言われるほど厳しい環境でした。
日々経済環境が変化していくことは理解しつつも、こんなにも大きく状況が変わってしまうのか・・・と私自身も驚きを隠せないほどです。
試練4:コロナ禍からの回復の遅れと消費者の節約志向
コロナ禍が収束しつつあるとはいえ、経済活動は完全には回復していません。大きく冷え込んでしまった経済と物価高も相まって、消費者の節約志向も根強く高額な商品やサービスは敬遠されがちです。
私たち個人の給与の上昇率も低く、なかなか景気回復の実感を感じにくい状況が続いています。
こうした中で、中小企業は新たな需要を喚起するための戦略を模索していく必要性が高まっているのではないでしょうか。
試練5:迫りくる金利上昇の波
長らく続いた低金利時代が終わり、金利上昇の兆しが見え始めています。これまで、非常に低利な金利で融資を受けていた中小企業は、金利上昇によって返済負担が増加してしまう可能性があります。
ある建設業者は、建設資材の価格高騰と金利上昇が重なり資金繰りがかつてないほど悪化してしまっています。
経営者は新たな融資を受けることを検討していますが、これまでよりも金利が高いことがネックとなり経営に大きな影響をおよぼしているのが現状です。
これまでに挙げてきたように、厳しい外部環境に晒されている中での返済負担の増加は資金繰りに大きな影響があります。
早期に借入内容や取引条件を見直しするなど早めの対策が必要です。
中小企業が検討すべき解決策
では、こうした迫り来る試練に対して中小企業の経営者はどのように対処していけばよいのでしょうか。
考えられる対策案は多岐に渡りますが、いくつか私なりの解決策を考えてみました。
一気に挙げてみたいと思います。笑
試練1
高騰する原材料については、残念ながら自分自身でできることに限りがあります。
まずはより安価な代替材料がないかを探しコスト削減を目指してみましょう。
共同購入: 同業他社と協力して原材料を共同購入することで、仕入れ価格を抑える
長期契約: サプライヤーと長期契約を結び、価格変動リスクを軽減させる
価格交渉: 取引先との価格交渉を粘り強く行い、価格転嫁を認めさせる
高付加価値化: メニューの改善やサービスの向上などにより、高付加価値化を図り、価格競争から脱却する
試練2
為替ヘッジ: 為替変動リスクを軽減するために、為替ヘッジを活用
国内調達: 国内で調達できるものは、可能な限り国内調達に切り替える
輸入先の分散: 特定の国に依存するのではなく、複数の国から輸入することで、リスクを分散
商品構成の見直し: 輸入商品の割合を減らし、国内産の商品の割合を増やす高付加価値化: 独自のブランドを確立したり、デザイン性を高めたりすることで、高付加価値化を図り価格競争からの脱却
試練3
採用活動の見直し: 採用方法を見直し、より効果的な採用活動を行いましょう。
働き方改革: 労働時間短縮、フレックスタイム制度導入など、働き方改革に取り組み、従業員の満足度を高める
福利厚生の充実: 社宅提供、社員旅行、資格取得支援など、福利厚生を充実させ、従業員の定着率を高める
IT導入による効率化: 業務効率化を図り、少ない人数でも業務を回せるよう最適化を追求する
外国人労働者の活用: 外国人労働者の雇用を検討
試練4
新たな商品・サービスの開発: 顧客ニーズに合わせた新たな商品・サービスを開発する
オンライン販売の強化: オンライン販売を強化し、顧客との接点を強化
地域との連携: 地域の観光資源を活かした商品やサービスを開発し、地域経済の活性化に貢献を意識する
補助金・助成金の活用: 補助金・助成金を活用し、事業の多角化や新規事業への進出を検討
顧客とのコミュニケーション: SNSなどを活用し、顧客とのコミュニケーションを密にする
試練5
固定金利への借り換え: 変動金利で融資を受けている場合は、固定金利への借り換えを検討
銀行借入:倒産の最大の原因はキャッシュ不足。銀行借入で経営基盤の強化を図る
リスケジュール: 返済が困難な場合は、金融機関にリスケジュール(返済条件の変更)を相談
資金繰り計画の作成: 資金繰り計画を作成し、資金ショートのリスクを未然に防ぐ(※最重要)
専門家への相談: 税理士や会計士などの専門家に相談し、財務状況の改善策を検討する
まとめ
中小企業を取り巻く環境は、非常に厳しい状況にあります。
しかし、決して諦める必要はありません。上記の「生き残り戦略」を参考に、自社の強みを最大限活かし変化に対応していくことで、必ずこの試練を乗り越えることができるはずです。
私自身もこうした状況の中で、多くの中小企業をサポートし支援してきました。
苦しい時こそ、変革のチャンスでもあります。
知恵を振り絞って自社のさらなる発展のために一緒に取り組んでいきましょう。
最後に
このnoteでは、中小企業の経営者の皆様が抱える悩みや課題を解決するための情報発信を続けていきます。もし、資金繰りや財務面で課題を抱えている方がいらっしゃれば、遠慮なくコメントやメッセージをお寄せください。
微力ながら、お力になれるかもしれません。
一緒に、この厳しい時代を乗り越えていきましょう!