設計事務所つれづれ~空き家の理由~
こんにちは。設計事務所デザインラボ・メルツです。
今日は全国的に問題となっており、今後その問題が加速するであろう「空き家問題」について書いてみようと思います。
というのも、私自信が「空き家予備軍」であるからです。
私の個人的な考えとなってしまいますが、共通することもあるかと思います。
1.自分の実家が「空き家」となる可能性
私は現在、宝塚市に住まいを所有しています。中古ながら家族が快適に住めるマンション住まいです。
実家は兵庫県の北部。皆さんは「カニ」と聞くと思い浮かべる町です。
高校を卒業し、就職のため京阪神に引っ越しました。当時は、祖父と祖母が実家に住んでおり、両親と妹は神戸に住んでおりました。
今は母親が一人で実家に住んでいます。父は早くに他界し、祖父も祖母も他界しました。今は母親のみが実家に住んでいます。
実家は超が付くほど田舎です。主要な駅は無人駅。車で15分走らないと駅につきません。電車でなくディーゼル車。1時間に1本しか走っていませんし、最終列車は夜の19時くらいが最終です。
駅までの主な移動手段は自家用車か町営のバス。バスも一日に数本しか走っていなく、ほぼ乗車する人もいません。
もっぱら買い物などは自家用車で30~40分走った先に街があり、そこでほとんどの方は買い物などをされます。コンビニに行くにしても、車で30分は走らないとたどり着きません。
こんな田舎にある実家です。でも、幼いころに新築された(築40年くらい)実家ですので愛着はあります。
また実家には「蔵」や「倉庫」があります。
写真でもわかるように、蔵は傾いています。地震などが起こると倒壊する可能性が大いにあります。この他に倉庫も存在します。
このような実家。わかっていながら、時間だけが過ぎてしまうのです。
2.わかっていながらできない理由
人それぞれに理由はあるかと思います。恥ずかしながら私が、建築士でありながら実家が「空き家予備軍」となる理由は
1.仕事の都合
仕事でメインとしている範囲が現在は京阪神です。ありがたいことに仕事は途絶えることなくいただいており、実家に帰省することもなかなかできない状態です。気にはしながら、どうしても「仕事」を理由に実家との距離が生まれています。
2.母に頼り切ってしまっている
母は元気に過ごしています。しかし、気付けばもう良い歳になっています。しばらく見ないうちに、母はどんどん小さくなっています。息子である私の前では気丈にふるまっていますが、実際にはもうそろそろ自分で車の運転も難しくなるのでは?とも思います。しかし、そんな母に頼り切ってしまっている私がいます。
3.資金の問題
写真にある「蔵」ですが、本当は先に解体して整理したい気持ちはあります。しかし、建物を解体する際にも費用は掛かります。地域にもよるのでしょうが、概算でも解体費用は床面積×1~1.5万、坪単価でも3~5万程度はかかります。
解体工事は、昨今のごみ問題も関係し、廃材を容易に捨てることはできません。リサイクル法なども関係し、解体する作業より「廃材を処分する」ほうに費用は掛かります。どうしてもまとまった費用が必要となるのです。
3.空き家にしないために考えること
愛着があり思い出が詰まっている実家。だけど、今のままでは空き家になってしまう。そういったジレンマの中で「今後どうしていくか?空き家にしないためにまずは何が必要か?」を考えています。
1.まず解体等を行う場合は所有権を整理しておく
実家は私の祖父が存命しているときに新築しました。私が幼稚園の時です。その当時から土地と建物の所有権は「祖父」にありました。祖父が他界したのち、本来であれば「所有権」の整理を行うべきなのですが、そのあたりの知識が当時は無く、登記上の変更などができていませんでした。その後、祖母より先に父が他界し、祖母が亡くなる前まで実家の土地と建物(蔵や倉庫を含む)の所有権は「祖母」にあることが判明しました。
祖母は戦争を経験した世代です。特に田舎で生涯を過ごした祖母は「所有権利」について人一倍厳しく、親族であっても「モノを取られる」という思いから、生前に所有権移転などの処理は不可能でした。
※実印などの準備や書類の説明の理解などが得られませんでした。
結果、祖母が亡くなった後、母からの提案で土地と建物の所有権を私に移しました。私もまだこの処理関係には疎いところなんですが、この作業を行っておかないと解体するにしても権利上の問題が生じます。
2.これからの生活に必要な場所を選定する
現在、まだ母が住んでいる実家です。母は一時期神戸に住んでおり、街に出ることには障害はないと思いますが、母は拒んでいます。それは、実家の空き家予備軍と同じくらい大切な「お墓の問題」があります。
母は実家を離れられない一番の理由が「お墓を守らないと」といいます。
私もお墓については気になるところであり、できる限り帰省しながらお墓やお寺に行くようにはしていますが、不定期であるため、やはり実家の母に頼ってしまいます。
しかし、これからの生活を考えると「母にとって必要な場所の範囲」を考えつつ、負担となるものはできるうちに解体などを行うべきかと思います。
先に書いたように「費用が掛かる」ことですから、その費用を捻出できるうちに今後不必要なものは解体し、整理しておくことが重要かと思っています。その際には、厳しいですが「愛着や思い出」を振り払い、先を見ながら整理計画していくことが必要となります。
3.活用の方法を考える
空き家となる理由として書きました「仕事の理由」ですが、昨今、リモートでの業務ができる可能性が増えました。私としては、考え方によっては今の場所にとどまって仕事をしないといけない。という考え方を少し変えることもできます。リモートであれば、全国どこでも「仕事はできる」可能性が増えています。
その他にも、超ド田舎であることを逆手にとり、一時の「癒しの場所」として活用する方法もあります。
私が通った小学校の裏にある神社ですが、ジブリ感がすごいです(笑)
田舎暮らしを望む方に会員制の「田舎別荘」として貸し出す。新型コロナウイルスの関係で、外国人の方が一気に減りましたが、そのうちインバウンドが復活した際に、外国人の方も含め「田舎暮らし」を楽しんでもらう「別荘」としての活用を考えています。その他にも、田舎特有の料理を提供する隠れ家的なレストランや、都会につかれた方をいやす場所としての開放も方法として考えています。
そういった事業を展開することで、地元の方と国を問わずいろんな方が交流することで、新しい村の活性、それが波及して地方での人の交流が生まれてくると考えています。SNSの活用がTVコマーシャルを超える時代。その時代に地域間の距離は存在しなくなってきていると思います。
4.まとめ
今回は私の現状を踏まえ、空き家予備軍を抱える悩みと自分なりの解決案を書いてみました。もっと様々な問題を抱えている方もおられると思います。
しかし、建物に対する愛着があるがために前に進めない、権利関係の整理がうまくできない、整理する費用に悩むなど、空き家を作ってしまう原因は似たようなところがあろうかと思います。
「リモート」というキーワードが浸透しだした今だからこそ、新しい考えを元に「空き家を作らない」方法はきっとあると思います。
建築士として、新しいものを生み出すだけでなく、これからの時代は「あるものをうまく活かし活用していく。地域や建物の情報を共有していく。」時代に入ったと感じています。
今回も読んでいただきありがとうございました。
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