設計事務所つれづれ~地震について~
こんにちは。設計事務所 デザインラボ・メルツです。
最近、震度1~2の地震が頻発しています。南海トラフ地震が噂では出ており今回は「地震時に行うべきこと」を書いてみたいと思います。
1.地震に強い建物とは?
よくCMなどで「阪神大震災クラスの揺れに数十回耐えました」と聞きます。個人的にはどうかな。。。と思っています。建物の地震に対する強さとは、建物本体の構造に関係します。
阪神淡路大震災では、死亡場所の86.6%が「自宅」でした。(※朝早い時間での被災でしたので)また、死亡原因の83.3%は「建物の倒壊及び家具などの下敷きによる圧死」です。
建築基準法という建物や建物に付随する門、塀に関する法律があります。具体的には記載されていませんが、いつも設計を行う際にお客さんに説明するのは
・建築基準法では「震度7クラスの揺れが3回くらいまでは耐えられます」
と説明します。地震震度は揺れ方など予測できないので、絶対に倒壊しない建物は作れません。大きな地震が続くと、いつか必ず倒壊します。法律では、倒壊するまでの時間を保持し、避難する時間を確保するためにいろいろと決められています。(火災の際も同じです)
実際に、これまでに起こった地震災害地を多く見ました。東日本大震災では震源地が海底であったため、横揺れが襲っています。その後の津波により、建物の倒壊が発生しました。現地にて、津波の被害を受けていない箇所の建物を調査しましたが、古い建物ほど地震による被害がほとんど見られず、津波の被害を受けた個所では、建物が津波の力により「そのまま引きずられ横倒しになる」ような建物も確認されました。東北地方は、もともと雪が多く降るなどといった地域でもあり、建物に使われる「筋交い」(建物の構造を支える斜め材)などが、大きな部材を使うような状況も見られましたので、倒壊せずに横倒しとなったのだと判断しています。(※私的調査の見解です)
熊本での大震災は「直下型」でしたので縦揺れが先に発生しています。現地確認しますと、縦に大きく揺れていますので、基礎の上に存在する「土台」と柱が抜け、一度ジャンプして横にずれたような被害が見られました。この状況が生まれると、柱自体を固定する要素が無くなり、次に来る横揺れに対し非常に弱い状態となります。これは倒壊につながりやすい状態となります。
日本は「地震大国」です。地震に対して強い建物とは、地震の揺れによる力を剛健に耐えうるように作るか、地震の力をうまく逃がす柔らかい建物とするか?が重要です。
大きく分けると、堅固な建物(剛性の高い)とは鉄筋コンクリート造。揺れの力を柔らかく逃がす建物とは木造・鉄骨造と考えてください。
硬固な建物は、柱、梁など建物の主要な部分の接合部(つなぎ目)が一体化しているため揺れに対して強い性質がありますが、建物のバランスが重要となり、堅固な部分とそうでない部分が混在するようなバランスの悪い構成ですと「堅固な部分に力が集中する」ため、一定の力が加わると脆性破壊(一気に破壊が生ずる)可能性があります。地震による倒壊は靭性破壊(ゆっくりと倒壊する)とすることが望ましいと考えます。
木造や鉄骨造の場合は、接合部の考え方を「動く接合(ピン構造)」として考えますので、地震の揺れに対しては「揺れながら地震の力を逃がす」という考え方になります。しなやかに揺れることで、地震による力を徐々に逃がし、建物の倒壊をできる限り抑える。といった考え方で、地震が頻発する国では有効な考え方だと思います。
しかし、近年の木造は接合部を金物等に頼るようになり、昔ながらのホゾなどを設けない作り方が増え、実際には「実験による金物耐力に依存する」構造体となっています。
建物を造る際は「硬固に作り揺れに耐える」か「しなやかに揺れるように作り揺れの力を逃がす」のどちらかを選択することとなります。
2.地震時にまず行うこと
さて、これまでの建物構造を踏まえ、地震時に何を行えばよいのでしょうか?
地震が発生する予測は、まだ誰にもできません。長年研究されていますが完璧な日時予測はできません。いわば突然やってくるのです。
地震が来たらまず何を行うか?は、当然ながら「命を守る」ことが一番です。机の下に隠れる等、皆さん小学生のころから防災訓練等で体験されているのでご存じでしょう。
その他で、建物内にいる場合に何をすべきか?
近年でありました大阪北部大地震の際、揺れが始まる前に「朝から道路工事でもやっているのか?」というくらいの地鳴りがありました。そこから数秒後に大きな揺れが始まりました。
できればですが、地鳴りを感じた時、まず「玄関の扉を開ける」行動を行ってください。難しい行動かもしれませんが、まずは避難経路を確保することが重要です。
建物の構造を考えますと、木造などは「揺れて力を逃がす」建物ですので、当然ながら傾いたりします。建物が傾くと、玄関ドアや窓は開けられません。そうなる前に、まず避難経路となる窓や玄関を開ける行動を行ってください。
(※写真は神戸市兵庫消防署よりお借りしております)
次に行うことは「ガスの元栓を閉める」「ガスコンロなどの火を消す」「電気ブレーカーを落とす」作業が必要です。
阪神淡路大震災でも、地震発生後に大規模な火災が発生しています。2次被害を減少させるために、火が起こりそうなものはすべて閉栓してください。非難する前に必ず行ってください。日々の生活時に、面倒ですが「毎日ガスの元栓を閉める」ことも有効かと思います。
注意していただきたいのは、震災が収まり、一時帰宅などした際に、いきなり電気ブレーカーを入れないようにしてください。通電することで、地震により破断した電気配線などから火花が飛び、万が一ガス管の破断によるガス漏れ等が発生していると、そこから火災に発展することがあります。こちらも2次被害として注意すべき点です。
3.普段からできること
地震に対し、普段からできることをまとめてみましょう
・音のなるものを身に着ける
これは、万が一倒壊した建物内に自分が存在した場合、救助時には騒音がひどく、また圧迫されると声が出せないなどの状況も考えられますので、音が出せるもの(鈴や笛)をアクセサリーとして持っておくことが良いかと思います。
・新聞紙を枕元に置いておく
これは、震災により食器などが破損し、避難経路に散らばると避難しようにもできない可能性があるので、自分の足裏を守るため、新聞紙をスリッパの代わりとし、その上から靴下などをはくと、ガラス片があっても多少の距離でしたら避難が可能となります。新聞紙で作る「簡易スリッパ」もありますので、普段から折り紙感覚で作っておくこともおすすめです。
4.まとめ
地震に関してはまだまだ書きたいことがあるのですが、大まかにまとめてみました。具体的な対処等は、またどこかでセミナー等を開催しようと思います。
理解していただきたいことは「地震により倒壊しない建物はない」ということ。仮に周囲がすべて倒壊し、自分の家が残ったとしても、震災復興による都市計画案が設計され(新しい道路を造ったりする計画)、土地区画整理法等による宅地などの換地(新しい宅地を割り振る)が行われるため、結果として建物を解体する方向となります。
どんな構造の建物であれ、地震に対して「壊れないものはない」と理解し、倒壊するまでの時間を理解して、避難=自分の命を守ることを優先してください。
いつ起こるかわからない地震です。普段から予習しておくことを当たり前としましょう。
読んでいただきありがとうございました。
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