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メキシコの運転免許を取る(アグアスカリエンテス州の場合)
メキシコの田舎に引っ越してみて、車がないとどこにも行けないことを改めて痛感。というわけで運転免許が必要。運転免許はスペイン語で「Licencia de conducir」と言います。普通車両の運転免許の場合は「Licencia de Conducir tipo Automovilista」。
アメリカでもNYなどを除き、引っ越して最初にするのは大体運転免許の取得になる人が多くて、各州の法律に従って取得することになります。ここメキシコもアメリカ同様合衆国なので、居住している州の法律に従って運転免許を取得することになります。
私の場合は2023年1月にアグアスカリエンテス州の免許を取得しました。他州も大体似たようなものだとは思いますが、州が違うとルールも違うため、アグアス以外の州の免許を取得される場合は以下、参考程度にご覧ください。トップの写真はアグアスの免許センター。また、基本的に情報は2023年1月現在のものなので、現況と異なる場合がありえます。正確な最新情報については、アグアスカリエンテス州ウェブサイトをご確認くださいませ。
【最初に】日本の免許は使えるのか? →使えないと思っておいた方がよい
海外旅行に行く時に「国際免許証」なるものを取得することがあると思いますが、日本で取得した国際免許証、メキシコでは使えません。
理由:メキシコは国際免許に関するジュネーブ条約未加盟。
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/kokugai/kokugai04.html
ただ、メキシコ法上は一時滞在者である旅行者の場合は国際免許証なしで、自国の免許でも運転して良いという整理がされているようです(*要確認)。
どのみち国際免許は旅行者を念頭においたものなので、仮にメキシコが条約締約国だったとしても駐在員ならびにその家族はいつまでも国際免許に頼っていてはいけないものではあります。
アグアスカリエンテス州の場合、当地日本人駐在員とその家族の間では「アグアス州と日系企業には特別な取り決めがあって、州内であれば日本の免許で運転しても大丈夫ということになっている」という噂はあります。実際、「日本の運転免許証のみで運転が可能な州(アグアスカリエンテス州)」などと謳っている転職エージェントのウェブサイトもある・・・。
しかし、対外的に公表されている州政府の通達や条例などは検索しても見当たらず、根拠を欠いているように思われます。
仮に噂が本当だとしても、パトロールしている警察官が全員そのことを知っているとは到底思えない。仮に警察に止められた時などに、州政府ウェブサイトに「日本免許は特別に州内で有効」てな記載があれば「ほら!日本の免許で大丈夫でしょ?」とそのページを見せて主張することができると思いますが、根拠を示すことができなければただの言い訳にしかならないため、鵜呑みにするのは危ない。無免許運転として検挙されたら大変かと。
さらに、当地で加入する自動車保険はメキシコの免許がないと使えないとされているため(少なくとも私の保険はそう)、いずれにせよ日本の免許で運転するのではなく、速やかにメキシコで免許を取得するのが一番安全です。
アグアスカリエンテス州で運転免許を取る
よく、「メキシコの免許はお金で買うようなものだから試験がない。だからみんな運転がめちゃくちゃ」と言われますが、当たっている部分とそうでない部分があるかなーというのが感想です。
・根拠法令:アグアス州道路交通法(Ley de Movilidad del Estado de Aguascalientes)ならびに同法規則(Reglamento)
https://eservicios2.aguascalientes.gob.mx/NormatecaAdministrador/archivos/EDO-18-141.pdf
https://eservicios2.aguascalientes.gob.mx/NormatecaAdministrador/archivos/EDO-26-289.pdf
・すでに州外で運転免許を持っている場合(日本含む外国で発行された免許も含む):免許の新規取得、ではなく、「更新(renovación de la licencia de conducir)」という扱いになります。
Para la renovación de las licencias de conducir (de cualquier tipo o categoría) expedidas por Autoridades de otras Entidades Federativas o por Gobiernos Extranjeros, se procederá a verificar que la licencia exhibida por el interesado no se encuentra suspendida o cancelada.
↑とあるように、他州の免許も外国免許も同じ位置付け。だから筆記や路上試験を受けずに免許が取れるということなのでは?と思われ。
免許の有効期間は、2年、4年、6年コースがあり、それぞれ取得費用が違います。が、外国人の場合、2年ごとに更新が必要なんだそうです(窓口の人曰く)。2年で419ペソでした。取得費用は毎年改訂される模様。
https://www.facebook.com/watch/?v=3010709765628847
新規取得ではなく免許更新の人はこのページを参照↓
https://www.aguascalientes.gob.mx/tramites/tramite/EDO-SSP-18
追記:2024年2月に外国ならびに他州免許(=アグアス外免許)からの更新の場合、当該免許が更新申請時点で有効かどうかの確認を取る上、確認手続き手数料として145ペソ(2024財政年度の場合)徴収することになったようです。(なお、いつ更新できるかは免許発行機関の返信次第だそうな・・・)
NOTA 1. Para la renovación de las licencias de conducir (de cualquier tipo o categoría) expedidas por Autoridades de otras Entidades Federativas o por Gobiernos Extranjeros, se procederá a verificar que la licencia exhibida por el interesado no se encuentra suspendida o cancelada. En este caso, el Departamento de Licencias de Conducir enviará una solicitud de verificación a la autoridad que expidió la licencia de conducir. La duración del trámite de verificación dependerá del tiempo de respuesta de la Entidad Federativa o del país extranjero que expidió la misma. (Art. 108 fracción I de la Ley de Movilidad del Estado de Aguascalientes). La constancia de verificación de licencia de conducir foránea tiene un costo de $ 145.00 pesos. (Art. 3 fracción I, numeral 13) de la Ley de Ingresos del Estado de Aguascalientes para el ejercicio fiscal 2024).
とはいえ、2月以降に赴任してきた方は特にトラブルなく日本の免許で当地の免許を取得できているようなので、「日本の免許だから言葉分からんし確認しないでいいや」と現場で運用されているのかもしれません。が、担当官の裁量によるところも大きいと思うので日本の免許だから大丈夫、とは言い切れない気がします・・・。万一真面目に各都道府県公安委員会に確認取るとか言われたら、いつ免許が取れるか分かったもんじゃない。
申請に必要な書類
基本的な情報は州政府の以下ウェブサイトに記載があります。「Que necesito」というタブのところ。
https://www.aguascalientes.gob.mx/tramites/tramite/EDO-SSP-18
・公的な身分証明(Identificación oficial):外国人の場合はパスポート。現物だけ必要。
・現在持っている運転免許:州外発行あるいは外国発行の免許証の場合は現物と、両面をコピーしたもの1部。(追記:なお、州外・外国免許の場合、通常の申請費用に加え、検認費用的なものが徴収されます。140ペソ)。しかし以下の記載から手数料は毎年改訂される可能性あり。
※La constancia de verificación de licencia de conducir foránea tiene un costo de $ 140.00 pesos. (Art. 3 fracción I, numeral 13) de la Ley de Ingresos del Estado de Aguascalientes para el ejercicio fiscal 2023).
・在留カード(Forma Migratoria):FM3と呼ばれるカード。現物とコピーがそれぞれ1部必要。
・住所を証明できるもの(Comprobante de domicilio):発行から2ヶ月以内のもので、現物が必要。
→具体的にどんなものなのか?という点については、上記道交法にも規則にも明示されていないのではありますが、アグアス行政手続法のようなものに以下のように規定されていました。
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しかし、上記引用元の州政府ウェブサイトはリンク切れになっていた。。
要は水や水道、インターネットや電話といった、住居に付随するユーティリティ関係の請求書が使えると。ただし、請求書の宛名の氏名が免許申請人の氏名と一致していることが必要。
もし、名義が家族のものであれば、自身と名義人の関係性が法的に証明できる書類も必要になるとのこと。
なお、連邦政府の国税庁(SAT)のウェブサイトにもこの定義は記載されていますが、若干有効とされる書類の期間などが異なっていました(直近4ヶ月以内、となっている)。
https://www.sat.gob.mx/consulta/09382/consulta-los-documentos-aceptados-como-comprobantes-de-domicilio#:~:text=%C3%9Altimo%20recibo%20de%20los%20servicios,necesario%20que%20los%20exhibas%20pagados.
我が家の場合は、そうした書類は全て大家さん名義。その場合は家の契約書(大家と居住者)ならびに大家の身分証明書の写し(外国人のFM3に類するINE発行の「選挙人カード」というもの)を証拠として提出すること、とされていました。
駐在妻の場合:自分名義で契約しているものが皆無。大抵は家族と苗字が同じなので、それだけである程度家族関係の証明はつくと思います。
が、我が家の場合はなぜか賃貸借契約書が、大家と夫の駐在先の会社の社長との間で取り交わされており、私が住んでいるという証拠がなかった・・・。
夫には「別にそんな細かいこと突っ込まれないんじゃない?」とは言われたものの、一抹の不安がよぎったため、私の住所の証明として、私名義で注文したAmazonのパッケージを「この住所に私、居住してるのよ」の証拠として持参してみた。ついでに(契約上賃借人になっている)社長と夫の関連性を証明できるよう、夫の名刺と夫の会社のウェブサイトを印刷して持参してはみた。
嫌な予感が当たって、申請窓口の人に「この人(社長)とあんたどういう関係?」と突っ込まれたので事情を話してAmazonのパッケージを出したら、「・・・ちょっと上司と相談してくる」と言われる。結果的にこれでいいよとなったので無事に免許の申請が通ったのですが、この辺、担当官の裁量次第では出直しだったかもしれません。。
・個人識別番号(Certificado Único de Registro de Población (CURP)):FM3を取得する時にもらえる番号。日本でいうマイナンバー的なものの原本(といってもそもそも移民局からもらうのはコピーなのですが)。
・申請料金領収書(Comprobante de pago):当日、申請書類が揃っていれば事務所内の指定された窓口で申請料金を支払います。その際にもらえる領収書の原本。なので当日窓口でもらうもの。
【追記:2025年1月】2年有効な免許の申請料金は460ペソ。毎年変わると思います。
なお、メキシコで初めて免許を申請する人の場合(更新ではなく新規)は、上記書類に加えて、
・学習修了証(Constancia de estudios)も必要とな。日本でいう教習所の修了書のようなものかと。
https://www.aguascalientes.gob.mx/tramites/tramite/EDO-SSP-2
既に日本で免許を持っている人には関係ない話ですが。新規申請に学習修了証が必要ということから、前述のような「メキシコは免許を金で買うだけだから練習もせずいきなり運転できる」というのはちょっと違うんじゃないかなーと私は思っています。
申請〜取得まで
Secretaría de Seguridad Pública del Estado (SSP)という免許事務センターがアグアスカリエンテスの南の方にあります。警察署のすぐ隣。
https://maps.app.goo.gl/23z2ZAA5YQj7iGB19
平日の朝8時から受付開始です。遅い時間になる程長蛇の列ができるそうなので私は子供をスクールに送った足で8時半くらいに行きました。警察署挟んでSSPの並びに↓の有料の駐車場(18ペソくらい)があるのでそこに駐車するのが便利かと。
https://maps.app.goo.gl/vdZ9Wz5SmtbZRKcQ7
※なお、小さい子供は施設内立ち入り禁止との張り紙が入口にありました。渡墨してすぐ、子供が待機児童の時に行かないでよかった・・・。夫は通訳さんに同行してもらったらしい。いいな。
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その時間でもすでに人が結構並んでました。長蛇の列は基本免許更新の人たちなので、その列に並びます。待つ人用の屋根があった。
(なお新規取得の場合は、免許発行前にSSPであらかじめ予約した時間に講習を受けるっぽく、この行列には並ばずに入口のドア付近で待っていて、名前を呼ばれた人から中に入っていきます。その人たちに惑わされずに、おとなしく列に並ぶこと)
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順番が来ると、建物内部に入れます。入って右手に申請窓口があるのでそこで準備してきた書類と、免許更新したい旨伝える。(私の場合は「Me gustaría renovar mi licencia de conducir. Se emite en Japón.」みたいな事を言いました。たぶん)
【2025年1月追記】今回他の人はなんて言ってるのか気になって聞き耳を立てていたら、単に「Renovación」って言っている人が多かったです(アグアス州免許の更新の人が大半だろうけど)。
窓口での書類確認ができて、問題なしとなると、次はこのモジュール(窓口)に行け、と次から次へと指示されるのでその通りに従えば免許証は発行されます。私の場合は並んだ時点からカウントして2時間くらいだった気がします。
・1:(受付窓口)書類確認 →入口入って右手に3つほど窓口があります。書類が揃っていれば整理券をもらえるので、それを持って、奥のセキュリティゲート抜けて手続用の部屋へ(ゲート抜けて左手2番目の入口)。
・2:写真撮影&指紋採取(モジュール15:手続用の部屋入ってすぐ右手)→壁際に立って写真撮影&指紋採取機で指紋登録。
・3:個人情報入力/Caputa de Datos(部屋入って左手モジュール2〜6のうち、指定された番号)→日本の住所とかも入れた気がする。カウンターで担当官と一緒に入力した気がする。(私は何故か東京都中野区出身ということに勝手にされる。)
・4:支払/Caja(モジュール10〜13のうち、空いているところ)→現金で払ったけどカードでも大丈夫だった気がする
・5:免許証受取り/Entrega de Licencias(モジュール2−6並びのモジュール7)→出来上がると名前が呼ばれるので受取サインをして受け取って終了。
という感じでした。動線が混線してて、もっと整理したらいいのにと思った次第。
免許証を受け取ったら最早用はないのでさっさと帰りましたが(周辺もあまり治安もいい雰囲気じゃない)、建物内にはちょっと座って休憩する場所と自販機があったりしました。トイレもありますが、トイレットペーパーが個室備え付けではなくて入口で紙をもらうタイプだった。たまたま居合わせた掃除のおばちゃんに「紙忘れてるよ!」と言われて気づく。
【追記:2025年1月】アグアス州免許更新の場合
早いもので免許取得から2年経過したため、1月に再び免許センターに行って更新してきました。
州ウェブサイトの情報では、州免許の更新申請に必要な書類は州外・外国からの更新と変わりなかったのですが、実際に更新に行ってみた所感は以下のとおりです。
・オフィスに入るまで:以前は新規取得者も更新者も同じ入口を使用していましたが、新規取得者は別のところから建物に入るオペレーションに変わっていました。なので入口前で並んでいる人たちは基本的に更新の人だけでした。
・提出書類:IDのコピーの提出は求められず、現物の確認だけで終了。
・住所確認:口頭で「住所に変わりない?」と聞かれたので、「Sí」と答えたらそれで終了。(契約書とか、Amazonのパッケージとか持って行ったんだけど、出る幕無し)
・個人情報入力:モジュール2−6のどこかで名前を呼ばれたら、以前入力したデータの確認。変更なければそのままです。
すでに登録がある州の免許更新だったからからだとは思いますが、手続きは拍子抜けするくらいスムーズでした。今回7時30過ぎに行って30分ほど並びはしましたが、8時ちょうどにオフィスが開いて、受付ー発行までは、州ウェブサイトが標準処理時間として謳っているとおり、30分ほどでした。
結果として、パスポートとFM3、更新したい免許の3つの原本だけで更新できましたが、窓口の担当官の裁量次第なところがある気もするので、念の為書類は揃えて行った方がいいのかなあ、とは思います。
(余談ながら、自分の後方に日本人の方が数名並んでいたのが見えましたが、窓口で返されていました。日本の免許からの更新なのか州免許からの更新なのかは分かりませんが、おそらく書類の不備ではないかと・・・)
ちなみに
過去、アメリカ3州で免許を新規取得した経験と比較しても、免許「更新」で済むのは書類を揃える手間はさておき、簡単でした。アメリカの場合、①日本の免許があっても関係なく新規取得扱い(知識も実技も試験必要)、②日本の免許があるなら新規取得扱いだけど実技は免除(知識は試験あり)、というパターンしかなかった。(ただし、他州の免許からの書き換えは無試験でできた)
そんなメキシコの運転免許ですが、アメリカでもカナダでも運転免許として有効です!メキシコ来てからまだカナダ未経験だけどアメリカでは市中でIDとしても問題なく使えました。
(USMCAのお陰もあるかと。過去にコロンビア人の同僚が、私と一緒に飲みに行ったバーでコロンビアの免許をIDとして出そうとして拒否られ、結局ビール飲めなかったので。)
とはいえ、アメリカの空港で提示するIDは(Real ID Actで厳しくなっているのもあり)パスポートの方が間違いないと思われます。