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遅ればせのバレンタイン〜かわっちのすべらない話〜
今更?という感じも否めませんが、
書くことが決まらずだらだらとnoteを見返していたら、
私がバレンタインの時に河原さんにお渡ししたチョコのイラストがあったので(笑)
季節遅れですが、
バレンタイン、にまつわる話をしてみたいと思います。
(Cの時代に関係あるかな、と期待してくださった皆様。ごめんなさい。本編とは何の関係もありません。フリーダム!!!)
その時期がやってくると、いつも思い出します。
バレンタイン。
恋人同士でしたら、クリスマスや年末の方が盛り上がるのでしょうが、
片思いということであれば、
「クリスマスに好きな人にプレゼントをあげるのはちょっと重いかも…」
「もしかしたら、引かれちゃうんじゃ…」
などと考え、
義理チョコという概念がまかり通るバレンタインに義理か本命か微妙な線で相手の様子を窺うというのがセオリーではないでしょうか?
少なくとも、女の子しかいない閉鎖された空間で青春時代を過ごした私にとってはそうでした。
進んでいる子たちは文化祭で出会った他校の男の子と付き合ったり、
自分が所属するコミュニティで一足先に大人の階段を登っていたり…
それが羨ましく思いつつ、どうでも良いな、と思っているのもまた事実でした。
何故どうでもいいかって?
答えは簡単。
私は、恋をしていたからです。
出会いは高校一年生の冬でした。
3つ上の彼は、私の通う個別指導塾のアルバイト講師。
担当の先生、ではありません。
たまたま担当の英語の先生がテストか何かでお休みをして、その代講で来た人です。
だから、何が好きだったか、と言われると答えられません。
強いて言うのであれば、
初対面なのにやたら話が弾んだことでしょうか。
私の持っているアニメキャラのシャープペンシル、
彼のしているぶかぶかのシルバーリング、
L字型の机に書かれた意味深なイニシャルの落書き…
プリントを終えて特にやることのなくなった私たちは
目についたものを片っ端からネタにして喋り続けました。
四方八方に広がって尽きない話題がとても楽しかった。
それも周りに存在していなかった年上の男性。
彼も彼で私に親近感が沸いたのでしょうか、
自習している私によく話しかけてくるようになりました。
「今日も来るかな」
「またなんか見つけたのかな」
その好奇心はやがて思春期特有のものへと変わっていきました。
恋をしたい、というのもまた好奇心だったかもしれません。けれど、
相手の姿を視界で捉えた途端、
身体中の血液の巡りが早くなって、
心臓が締め付けられるほど痛くなり、
皮膚という皮膚が熱を帯びていく
自分では制御できなくなるあの感じ。
それを覚えたのは、今日まで生きていてその人だけです。
他人に向ける一方的で秘められた好意、
俗にいう「片思い」をして二度目の冬がやってきました。
今はバレンタインと言えば好きになっている人はおろか、
お世話になっている人へ渡さないといけない(本当はそんなことないのでしょうが…)悪しき習慣となっているのでやや自粛ムードな気がしますが、
当時はどこのデパートやスーパーでも「VALENTINE‘s day」の看板が吊り下げられ、
ベビーピンクで一色でした。
私ももちろんその時期を意識し始めます。
シルバーリングをしていたことから告白する勇気も自信も持ち合わせてはいなかったのですが、せめて察してほしい、くらいの気持ちはありました。(大目に見てやってください)
余談ですが、女子校のバレンタイン、とは皆さんが想像している以上に壮絶なイベントです。
例えるなら、体育祭。
もうしばらく菓子はいらないと思うほど大量のお菓子交換がなされます。
特に学校で一番部員数の多い人気部活に所属していた私は、もらう量はもちろんでしたが、配る量も尋常ではありません。
私は手軽で失敗のないマドレーヌをプレーンとチョコ、50個ずつ焼きました。冷めた順からタッパーに詰めていきます。ただでさえ材料費が馬鹿にならないのでラッピングはしません。それにタッパーは交換したお菓子を入れるのに役立つので、バレンタインマストアイテムでもありました。
家族の分、友達の分、後輩の分…必要なマドレーヌの数をそれぞれ確認し終え、
皿の残りを見ます。マドレーヌが白黒各2つずつ。
1つはお世話になっている担当の先生に、もう一つは……
ここでひとつ言っておきますが、彼がその日塾に来るという確証はありません。
来たら渡そう、渡せたら良いなというあくまで希望的観測です。
しかし、タッパーに詰めた他と違い、それだけはすごく時間をかけてラッピングしました。
塾で授業の日。バレンタインの当日ではなく前日。
バッグには前夜に用意したマドレーヌを忍ばせてあります。
自習室で勉強する振りをしながら彼が来るのを待つ私。
シャーペンを握る手の汗が止まりません。
私の授業が始まる5分前、
ついに彼が来ました。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
顔文字が本当に一昔前で申し訳ないのですが、心情は完全にこれでした。
だか、しかし、バット。
肝心の渡すシチュエーション並びに、セリフを考えていないことに気づきました。
圧倒的失念、圧倒的ミス!!!
頭は真っ白です。
時間は刻々と過ぎ去り、なすすべなく授業開始時刻となりました。
仕方ない、帰りに渡そう。1時間半のうちに考えれば良いんだ。
そう自分に言い聞かせながらも、がっかりする気持ちは拭えません。
「なんか暗くない?」
「暗くないです。先生、これあげます」
「えー、嬉しい。ありがとう」
「毒入りです」
「え」
このくらい軽く渡せたら良いのに。
他愛ない会話をしながらラッピングしたマドレーヌを差し出しました。
その時です。
「先生、受かりました!」
少女漫画から抜け出したようなさわやかイケメンがブースに駆け込んできました。
彼は一つ上の大学受験生、モリくん。私の隣で数学を受けていた男の子です。
「ええ、マジか。良かったね」
先生は嬉しそうな反面、驚いた様子でした。
私も同じです。
だって、彼は絶望的な成績で秋から受験勉強を始めるとやってきたのですから。
「おめでとうございます」
「ありがとう」
にっこりとほほ笑むモリくん。ただただイケメン。
彼は私から机の上へ視線を移動させます。そして指差しながら、
「それ、バレンタインですか?」
「そうそう。毒入りだって」
「そんなこと言ってないです」
「えー、さっきそう言ってたじゃん」
「先生のは毒入りなだけです」
担当の先生にマドレーヌを押し付け気味に渡し、さっと手を引っ込めます。
モリ君は隣の席に座りながら、依然としてニコニコと私たちのやり取りを見ています。
何も言わない、のがまた心が痛い!
見られてしまったのなら仕方がありません。
先生にだけ渡して何か勘違いされても困ります。
苦渋の決断。身を切る思い。胸中の盛大な溜息。
そして、
「あの…良かったら、これどうぞ」
鞄の中から取り出したもう一つを渡しました。
「え、いいんですか」
「いいんです。受かったお祝いです」
「マジか。もらえると思わなかったよ。ありがとう」
嘘つけ!
でも、許します。笑顔が最高なので。
……そんなわけで、初恋の人にチョコを渡すことは叶いませんでした。
残念です。残念of残念です。
友人に話すとすごく笑われるのですが、私にとってはビターチョコ並みに苦い思い出です。
これを読んだあなたがそうならないことを切に願うと同時に、
メッセージボトルのようにこの文章がいつか彼のもとへ流れついたら良いな~なんていう気持ちもあったりなかったり(笑)
そんな下心いっぱいで文章を綴っております!はい!
というわけで!
遅くなってすみません、お待たせいたしました。
明後日3/1から『Cの時代』が始まります!
今日は何の脈絡もなくらだらだと思いつくままに進行してしまいましたが、
次からは真面目に!真面目に書くので!
今後ともどうぞお付き合いください。
では〜