#5 最高のコワーキングスペース
朝です。
激動の一日が過ぎて、朝になりました。
僕の管の気持ち悪さを察してくれたのか、朝一に様子を見に来た先生が「外しましょうか」と言ってくれた。
その違和感がしんどかったので喜んで承諾。
どうなんだ?
どんな感じなんだ?
ずーっと大事にしてきたところ。
こんなところに異物を入れたことはありません。
ちょっと何かあると敏感になるところ。
そこに入っている管?
それを抜く?
どうなんだ?
どんな感じなんだ?
「じゃぁぬきます」
にゅるん。
「・・・・・!」
気持ち悪ーっ!
何とも形容しがたい感覚が。いやこんな拷問あったら何でも白状しちゃいそう。痛いのとはちょっと違うけど、未知の違和感。
もうちょっと、これは二度とごめんです。
勘弁してください。
とにかく!
朝一で抜いてくれました!
先生ありがとう。
「おしっこに血が出混ざってたら言ってください」
いや、怖いこと言わんといて。
僕の息子ちゃんは昨日から戦い続けているのに、まだ戦いがあるだと?
と思っていたけど、
「順調なら明日退院できますけどどうします?」
「え? 明日??」
早くね?
昨日切ったばっかりですよ。
早くね?
とはいっても、この一日延ばすことで状況は多分変わらない。
根本的に何も変わらない。
だったら帰る方がいいだろう。
「じゃ、明日退院します。」
というわけで、何事もなければ明日退院です。
そうこうしていると朝食が届いた。
一日ぶりのご飯。
朝はパンです。
おお。
これは、おいしいパン屋さんのパンではないか!
超有名というわけじゃないですけど、おいしいパン屋さんとして名の通っているパン屋さんの名前が、個装されたパンの袋にプリントされている。
期待して食べてみたら、やっぱりおいしい。
素朴な食パンですが、変なものの入っていない、おいしい食パン。
これはありがたい。
しかも、焼いているのではなく、温かい。
これは本当の焼き立ての食パン感覚です。
トースターで焦げ目をつけたのではなく、焼き立ての食パンを切った感じ。
ちょっとこれでテンション上がってきました。
食事を済ませると、まずは最初のミッション。
自力でトイレに行くです。点滴を杖代わりに、そろそろトイレに向かう。そこにはカップが置かれていて、いちいち計量するように言われている。カップを構えると、おそるおそるおしっこを出してみる。
思ったより違和感なく出てくれた。
まずはミッションクリアー。
このあたりからちょっと余裕が出てきました。
手術場所はさすがに痛いので力を入れられませんが、電動ベットで体を起こすことはできる。気分も悪くない。
とりあえず、することは何もない。
これは、もう、あれでしょ。
ベッドでノマドる
さっそく、パソコンを立ち上げる。
思ったより気分は悪くない。
頭はまわる。
というわけで、さっそく作業やら連絡やらに取り掛かる。
他にすることがないし、大部屋なので看護師さんの出入りも結構頻繁にある。変なこともできない。変なことって何か知らんけど、とにかくいつカーテンが開くかわからない。
そんな状況ですが、案外集中できる。
いや、むしろ集中できる。
カチャカチャやっていると、あっという間に昼になって昼食がやってきた。
!!
いや、当たり前というか、そういうところにいるのですが、仕事をしているところにご飯を持ってきてくれたっ!!
すごい。
何というサービス!
早速おいしくいただくと、様子を見に来てくれて片付けてくれた。
こ、これは、
最高のコワーキングスペースやないかぁぁぁ。
なぜ集中できるか整理してみよう。
1.周りに誰かいる
僕的には周りに人がいるほうが集中できるのかもしれない。
何というか、さぼる気にならないというか、逆に気が散らない。
いや、人目が気になって、いらんことが出来ない。
考えてみれば、僕が集中が切れるときって、だいたいお菓子が欲しくなるとか他の欲求に駆られてだから。ここではそれが断たれている。世って集中が途切れないという好循環がうまれている。
2.動くに動けない
それに、お腹が痛いので動くに動けない。
点滴も邪魔だし。この状況も僕にとって、仕事に向かわせる要因になっている。
3.ごはんが向こうからやってくる
集中力が切れるきっかけになるのが食事でしょう。バッサリ仕事を切るわけですし、食欲という別の欲求に関わることになる。
ここでは、それが向こうからやってくる。
そして片付けてくれる。
僕はただ食べるだけ。
ベッドからは動けないので、結局仕事の体制に戻る。
4.僕が外に出たくならない
それに一つ気づいた。
私、ちっとも外に出たくならないです。ずーっと室内でいれます。
はっきりいてノンストレス。根っからのインドア派だという事を知りました。窓を開けたいとも思わないwwww
ここまで筋金入りだとは思ってなかった。
あらためて書いてみるとすごく個人差が出そうだけど、コワーキングスペースの「Co-」の部分まで作れるなら、面白いコンセプトスペースの企画書が出来そうな気がしてきた。
入院コワーキングって作れないかな?
入院コワーキング
まず、朝から入院する。夜まで帰れない。
宿泊すると別の施設になってしまうので、日帰り。
看護師風のスタッフがいる。
「患者=コワーカー」は大部屋のベットに入ると、基本そこからは動けない。
行っていいのはトイレだけ。
そして何より、勝手に帰れない。
ご飯はお昼と夜がついている。
その間患者は、何度も看護師に声かけられる。
体調どうですか?
仕事進んでいますか?
一人で仕事がはかどらなくなったリモートワーカーを直す病院ってコンセプト、ダメかなー。
これだと「Co-」ではないんですよね。
「Co-」というのは、Co-Working の頭の部分で、「共」の部分のことで、コワーキングスペースとシェアオフィスは根本的に成り立ちが違うんですよね。他の利用者との関係性を前提としているのがコワーキングなので、このスタイルだとそこは満たされない。
ワーケーションならまだ言葉が合うかもしれない。
一日入院ワーケーションスペースならちょうどいいのかも。
Co-をどこかにくっつけられないか、入院生活中に考えてみよう。
というわけで、すごく仕事がはかどった。
いやー、いいとこやんかいさー。
これなら、抗がん剤治療も乗り切れるんちゃうか?
まぁ、もっともそれは後日、その認識は改めることになるのだが、この日はむしろ自信を持ったのでした。
僕ってほんまにどこでも仕事できるんちゃう? と。
そんな感じで、本当に仕事しながら一日が終わる。