
読みサバ【14尾目】一年のサバは元旦から!「♪お正月にはサバを食べ~」はアリなのか?を考察してみた。
新年ですね。
皆サバ、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
正月なので今回はめでタイ、じゃなく“めでサバ”な気分で「読みサバ」をお届けしようかと。
日本酒に、おせちをつまみながらゆるりと読んでいただければ幸いです。
しかし、今年も元日からサバ食べてるご家庭って(サバやし家以外で)どれだけあるのでしょう。。
日本人にとってサバは日常的によく食されてきた“大衆魚”。いわば「ケ」の魚。対して「ハレ」の日である正月は、伊勢海老やカニなど見た目も豪勢なグルメを楽しんでるぜっ!という諸姉諸兄も多いことでしょう。
しかし、サバニストたるもの本当にそれでよいのでしょうか?!
かく言うサバやしも「正月とサバ」についてこれまでさほど考察してこなかったわけですが、正月だからこそのサバがあってもいいんじゃないかと、この機会に色々調べてみたのであります。
おせち考察
まず、正月料理のド定番、「御節(おせち)料理」。
ご存知かと思いますが正月3が日は火や包丁を使わない、また一家の主婦が休めるようにと日持ちのする料理を重箱に詰めたもので、各料理にはそれぞれ縁起を担いだ意味が込められています。
おせちに入れる魚といえば、まずブリ。「焼き物」として照り焼きや西京焼きなんかが入ります。ブリは「ワカシ(ワカナゴ)→イナダ→ワラサ→ブリ※」と成長につれ呼び名が変わっていくことから「出世魚」として縁起物に数えられるためです。
※関西では「ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」
ゴマメ(カタクチイワシの幼魚)を煎って甘辛いたれを絡めた「田作り」は、文字通り稲の豊作を願う縁起物。
「カズノコ(数の子)」は粒粒の卵がびっしりだから子孫繁栄!…と思ったら、ニシンの卵巣なので「二親」と漢字を当て「二人の親からたくさんの子どもが生まれる」という縁起担ぎなのだそう。
これらは「祝い肴」つまりお酒のアテとして、蒲鉾や昆布巻きなんかとともに一の重に入れられます。
人参と大根で「紅白」を表現したなますは、祝い事の水引を表しているとも。レシピサイトを見るとこれに「しめサバ」を加えるというアレンジがありました。年末に作ったやつです。
定番ではないにしてもやっとサバが出てきました。
酸っぱいもの同士だから味のバランスも間違いなく、年末に作ってみたのはとても旨かった。しめサバ好きとしては全国的に広まってほしいですな。
見るからにめでたい「紅白」のなますにサバが加われば「めでたサバいぞう(倍増)」です! そしてどうでもいい語呂合わせを思いついたから一応書いておくw
ほかに、昆布巻きの中にサバを入れるレシピも見つかりました!
昆布は「よろこぶ(喜ぶ)」に通じ、先述の「カズノコ」の意味からここでも芯にする食材はニシンが定番とされてきました。
しかし近年の不漁で手に入りにくくなり、魚系ではサケやブリ、魚卵など入手しやすいものを巻くことが増えたようです。それならサバも絶対合うと思うんです。
ということで、縁起担ぎの語呂合わせが「めでたサバいぞう(倍増)」しか思い浮かばないのが悔しいところですが、考えてみたらおせち料理にサバを活用するアイデアは色々ありそう。本年末の参考にしていただければ幸いです。
もっとも、鯖街道の終着点・京都を筆頭に、正月には「鯖寿司」を食す、という風習は近畿地方を中心にわりと広くあります。なのであえておせちにごだわらなくてもよかったのかもしれません(←オイ…)。
来年のおせちまで待てない諸姉諸兄は今すぐ初売りで鯖寿司を買って来ましょう!
雑煮考察
正月料理、もうひとつの伝統といえば「雑煮」。
しかし雑煮は、書き出すと永遠に終わらない話になりそうなほど深い。
汁は「澄まし」か「味噌仕立て」か?
出汁は何でとる?(昆布や椎茸、鰹節が多いが鶏肉や魚、貝などの地域も)
餅は「角」か「丸」か?
餅は「焼く」のか「生のまま」か?
餅以外の具材は?(青菜やサトイモ、蒲鉾などが一般的だが郷土色が加わる地域多し)
・・・などなど、とにかく地方により、というより各家庭により千差万別すぎ。
雑煮にも、当然ちゃんと意味があります。
その主役は「餅」。
前年に収穫した米で餅をつき、年神様(正月に各家にやって来る神様)にお供えする。その「お下がり」をいただくことで神様の力を分けてもらい一年を息災で過ごせるようにと祈ったのだとか。今でこそ年中気軽に買える餅ですが、元々はハレの日だけに食べる特別なものだったんです。
主役の餅を汁物に仕立てる雑煮において、他の食材はその季節にその地域で容易に入手できるものが中心になる。現代のように生鮮品の流通網は発達していないわけですから当然です。だから日本全国でこれほど多種多様な“雑煮文化”が生まれ、受け継がれてきたのでしょう。
サバやしの実家は内陸の会津ですが、干し貝柱で出汁をとる「こづゆ」という郷土料理があります。これは、北の海で獲れた魚介類は塩蔵や乾物に加工され、北前船で新潟へ、さらに会津へというルートがあったからですが、海に近い地域の雑煮はやはり魚介で出汁をとったり、具材として魚の切り身や貝(はまぐり、かきなど)、海老などが準主役を張っているものも多いです。
そこで、ふと思ったのです。
これだけ百花繚乱な雑煮文化がある日本ならば、昔から全国的によく食されてきたサバを入れた「サバ雑煮」が今も残る地域があるのでは?!と。
幸いなことにこの分野は多くの学者さんが詳細な調査をしてくれています。そのひとつ、東海学園大学教授を務められた西堀すき江先生の論文がWebで閲覧できたので、その中の「各地方で雑煮に用いられる材料」リスト(めちゃ詳細)に「サバ」の2文字を探してみたところ。。。
・・・おお、あった!
わずかに1か所。「さば」の文字が。
<富山>新川魚津
ふくらぎ、さば、たい、こんにゃく、ごぼう、人参、焼き豆腐、葱
この情報を元に検索していくと、 新川魚津の鯖雑煮は「フクラギ、サバ、タイなどの焼き魚の身をほぐして入れる」というもの。おそらく魚はその時々の入手しやすさや各家庭によって違うのでしょう。でも「ほぐす」というのが決まりごとみたいで、全国魚介系雑煮の中でも変わっているんじゃないかと思われる。そしてすごく旨そう。真似してみたい。
さらに、不確定ですが愛媛県でもサバを入れた雑煮が伝わる地域があるようです。JAにしうわ女性部のサイトに「塩サバのお雑煮」の作り方がありました。
(JAグループホームページ 旬を味わう(お手軽レシピ)愛媛県「塩サバのお雑煮」JAにしうわ女性部 より引用)
これも調べていくと、佐田岬半島(愛媛県西宇和郡伊方町)の塩成から九町という地域で、雑煮に塩サバを入れる風習があるという記事を発見。やっぱりあるんだな(喜)!
このほかにも知られざる「サバ雑煮」食文化圏はまだまだあるのかもしれません。ご存知の方は教えてください〜。
年越しサバ
昨年末の話になりますが、「年越しソバ」、食べました?
しかし、ここに来て凄い「年越しサバ」があることを見つけてしまいました!
酔っぱらって読み違えたのかと思いましたが、そう、「年越しサバ」です。
和歌山県の一部、紀美野町や有田川町などでは、年越しソバのほかにサバを食べて新年を迎える「年越しサバ」という風習があるそうです。
食べ方は地域によって違いますが、一尾丸ごと焼いた尾頭付きや塩サバが多く、各家庭で焼くほかに、年末には炭火で焼いたものが店頭で売られるところもあるとか。
注目すべきは、古来紀伊半島にも若狭と同じく「鯖街道」があり、盛んにサバが運ばれ食されてきたこと。そして、この「年越しサバ」の風習がどちらの町も和歌山の海沿いではなく山間地の町に残っていること。
その昔、沿海部の新鮮なサバが塩漬けにされ苦労して運ばれてきた山里の民にとって、サバは「ハレ」の日に食すちょっと特別なご馳走だったのでしょう。一年の労をねぎらい来たる年への期待を胸に家族で囲む「年越しサバ」は、きっとめちゃくちゃ旨かったに違いない。
よし、今年の目標は「サバ旅@和歌山」だな!