サバ旅@松浦 “アジフライの聖地”でサバを叫ぶ
サバを愛してやまない男・サバやしがサバとサバに関わる人たちとの出会いを求めて各地をぶらぶら歩き回る「サバ旅」。
8月から始めたこのnoteのタイトルにもなっているというのに、諸般の事情から掲載がずれ込み、今回が第1回目です。今後も不定期でのんびり更新の予定ですが、どうぞお付き合いください。
満を持しての1回目は、「松浦」!
長崎県の北東部、北松浦半島に位置する松浦市は人口24,000人ほどのまち。玄界灘に面し、東隣は焼き物で有名な伊万里市(佐賀県)で、伊万里湾にも接している。
鉄道ファンなら人気のローカル線・松浦鉄道で、また歴史好きには平安~戦国時代に名を馳せた武士集団「松浦党」発祥の地として記憶されているかもしれない。
さらに、近年では“アジフライの聖地”を宣言して売り出し中だ。
そんな土地になぜ、サバ旅なのか?まずはご説明しておきたい。
前にも少し書いたが、僕はサバ好きが高じて一般社団法人鯖協会 なる団体を立ち上げ、「鯖サミット」というイベントを2014年から全国各地のサバ産地で開催している(途中コロナ禍で中断はしたが)。
基本的には趣旨に賛同してくださった自治体や関連団体などから誘致をしていただくという形で行っているものであり、2018年の第5回開催地として名乗りを上げてくださったのが、松浦市の一般社団法人 まつうら観光物産協会だったのだ。そこから、僕と松浦のおつきあいがスタートしたのである…。
そんなわけなので、初回サバ旅はある特定期間の旅程についてではなく、2018年から5年間の間に10回は訪れた松浦の魅力について、【総集編】というテイで語らせていただきたい(連載初回にして総集編ってどうなのよ?とは思わんでもないが)。
2018年3月28日。かくして僕は初めて松浦を訪れることになった。てか、ぶっちゃけこれが初九州である。テンション上がるわ!
地図を見ると、松浦は長崎県だが佐賀県との県境にある。しかし、東京から空路なら福岡空港が便利なようだ。まつうら観光物産協会のWebサイト「松浦の恋」(愛称:まつ恋)にもそう載っているから、土地勘のないサバやしはひとまず従うことにした。
初回の顔合わせの際は、福岡市在住の関係者が福岡空港まで迎えに来てくれ、車で90分くらいで到着した。なるほど意外に近い。
まつうら観光物産協会は、松浦鉄道松浦駅の駅舎内にある。切符販売などの駅業務も兼務しているのだ。ローカル線あるあるだ。
松浦の第一印象として、(どこにサバが‥?)と実はちょっとだけ不安になったことを告白しよう。全国有数の水揚げ港という前知識と、漁港町感ゼロの長閑な街並みがどうも一致しなかったのだ。
それもそのはず、松浦駅は行政や商業施設が集まる市の西側の内陸にあり、湾を挟んだ東側に位置する松浦漁港・松浦魚市場とは車で15~20分ほどの距離がある。後で連れて行ってもらったら漁港町らしい風景が広がっていて心底安心したのを憶えている。
なお、魚市場から徒歩2分ほどのところには松浦鉄道の調川(つきのかわ)駅があるので、鉄旅でのアクセスも良好だ。
松浦鉄道は第三セクターで、一両編成の“ザ・ローカル線”だが絶景や沿線の見どころが多く、鉄道ファンに人気がある。焼き物の町として知られる佐賀県の有田を起点とし、伊万里を経て長崎県に入るとそこが松浦市。この辺りは伊万里湾から玄界灘へと車窓風景が楽しめる。“日本最西端の駅”(鉄道事業法による)たびら平戸口からは南下し、軍港として栄えた佐世保までを結んでいる。
松浦魚市場は、日本遠洋旋網(まきあみ)漁業協同組合(愛称:エンマキ)所属の旋網漁業によるアジ、サバ、イワシなどを主体とした水揚げ基地として発展し、全国有数の水揚げ量を誇っている。アジの水揚げ量はなんと全国トップであり、サバも上位である。
さらにサバでいえば、天然ブランドサバ「旬(とき)さば」と養殖ブランドサバ「長崎ハーブ鯖」という2大ブランドサバを擁する。青魚好き・サバ好きにとっては”聖地”の一つと言ってよいだろう。
この魚市場は嬉しいことに一般客にも開放されており、2軒の市場食堂も元気に営業中だ。
松浦魚市場の1階にある、大漁レストラン旬(とき)の外観。このそっけなさがいかにも市場内食堂らしくていい。写真を撮り忘れたが同じフロアに魚市食堂という店もあり、どちらも朝5時や6時からめちゃくちゃ新鮮な魚が食べられる。
さて、僕が松浦を訪れるのは毎回打ち合わせや会議などが主目的ではあるが、夜には当然、思う存分サバ料理を堪能することができる。てか、関係者の方々がどこからともなく集まって来て宴会になっちゃうのだ。(これは松浦の風習というより九州あるあるらしい?)
鯖サミット関係者や市場関係者の方たちによく連れて行っていただいたのは、「いけす料理 華」というお店をはじめとして、松浦駅南側に広がる市街地にあるお店。歩いて移動できる範囲に飲食店が点在する。
サバやしはここで、「サバの生食」という食文化の坩堝(るつぼ)に放り込まれた(笑)。
九州ではサバを生で食べる食習慣があることは、知識としては知っていたが、会津生まれで東京暮らしが長い僕はこれまでしめサバくらいしか食べる機会がなかったのだ。
ご存知のとおりサバには生食すると腹痛を起こす寄生虫アニサキスがいることがあり、多くの地域では火を通して食べるのが一般的だ。ただ、日本海側のサバにもアニサキスはいることはいるのだが種類が違うため心配が少ない。なので昔から経験的にサバ生食習慣が発達してきたと思われ、九州人にとってサバの生食はなんら特別なことではないのだなぁ、となかなかの衝撃体験であった。
蘊蓄はともかく、長崎ハーブ鯖の刺身や旬さばのしゃぶしゃぶ、炙りサバのカルパッチョなどなど、どれも鮮度抜群で臭みなく脂が乗って、実に旨い。
そして、噂には聞いていた「醤油」の違いも初体験。
九州の醤油は甘い、という話は本当だった。でも全然嫌な甘さではなく、むしろ、新鮮な魚の風味を邪魔せず引き立たせてくれる気がする。うん、コレはコレでありだな!
ちなみに、飲食店では甘口とそうでもないもの2種類の醤油が卓に並んでいることが多いようだ。でも一度は甘口にチャレンジしてみてほしい。
そして、サバ料理に合うといえば日本酒もいいけど、ここは九州。やはり焼酎は外せないでしょう。東北育ちで日本酒党のサバやしが焼酎の旨さに開眼したのもここ松浦だったな。
色々食べまくったのち、シンプルな塩焼きに回帰した。あ~しみじみ旨い。。
とまあこのように、松浦を訪れる度に本場のサバ料理を満喫しまくっているサバやしではあるが、実はもうひとつ秘かに楽しみにしているのが、冒頭でも述べたアジフライである。
松浦市は、2019年4月27日に「アジフライの聖地」を宣言した。
鯖サミットの件で友田吉泰市長を表敬訪問した時に伺った話だが、出張先でアジフライを食べたところ、いつも松浦で食べているアジフライがすごくおいしいということに気づいたのだとか。それで、「アジフライの聖地」化を公約の一つに掲げ、当選後に実現したのだそう。
福岡住みの知人曰く、宣言効果か「松浦産アジフライ」は近年ブランド化が急速に進み、ちょっとしたブームになっているらしい。
うん、アジも旨いがサバも旨い、でいいじゃないか。僕の松浦詣での愉しみは、サバアジサバ…の無限ループでこれからも続いていきそうだ。
本音を言えば…松浦のアジフライはめちゃめちゃ旨かった! 初訪問ではついつい1日に2回食べた(byアジやし)。
エンマキさんは「エンマキ食堂」というWebサイトで通販を行っている。“聖地”のアジフライはもちろん、サバフライなどサバ加工品もあり、見ているだけで涎が…。
2018年の第18回松浦水軍まつり & 鯖サミット in 松浦は過去最大級の大盛況で、実行委員会の方々が気をよくしたのか?なんと2022年(第7回)にも再度開催していただけた。ありがたい! またぜひ開催しましょう!
まつうら観光物産協会、エンマキ、西日本魚市の皆さんをはじめ市内の主要な水産会社の方々、実行委員会の皆さんなどなど…2度の鯖サミットを通じて知り合い、一緒に一つのイベントに向かって取り組んだ松浦の日々は最高に楽しかった。もちろん仕事後の飲み会も毎回熱かった!
またサバとアジを食べに行きますね~。
おわり
【サバ旅メモ】
松浦市へのアクセスですが、九州以外の方は地図だけ見ると「と、遠いなぁ…」という第一印象を持つと思います。サバやしもそうでした。
しかし、福岡空港から松浦までは車で90分と、意外に近い。長崎空港からだと2時間20分(どちらも「まつ恋」情報)。
極論、サバ食べてアジフライ食べて、〆に博多でラーメン食べて弾丸日帰りだって可能かもしれません。
レンタカーはちょっと…という方は、松浦鉄道でのんびり鉄旅でも行けます。この場合は福岡や長崎に前泊して観光・グルメなど楽しんでから松浦を目指すのがいいかも。西九州新幹線(一部)開通で本州からも近くなった佐賀県の武雄温泉・嬉野温泉あたりとセットで訪れるのもおすすめです。
「旬(とき)さば」、「長崎ハーブ鯖」は、長崎県内や福岡県内の飲食店にたくさん卸されています。観光や出張の際には、松浦の二大ブランドサバを味わうこともお忘れなく!