寄り道と友
高校時代の友人は、結婚して新幹線で約2時間の距離の地に引っ越しをした。
移住してもう20年近く経つらしい。
その友と約5年ぶりの再会。
友が行きたい場所に行こうと、
弾丸で箱根に行くことにした。
神奈川県育ちにとって
箱根は特に遠い場所の感覚はなく
余裕で日帰り圏内。
わたしたちの久しぶりの再会を祝福してくれたかのように、絶好の天気。
ケーブルカーに乗り
ロープウェイに乗り
富士山を眺め
芦ノ湖を眺めながらビールをのむ。
太陽の熱はまだ激しさを残していても
肌で感じる風は、確実に次の季節を運んできていた。
夕方になると
大涌谷もロープウェイも営業が終わる。
満足したわたしたちも
同じように箱根にお別れをする。
バスの方が早い。おまけに待ち時間もない。
一方、箱根登山鉄道は乗車時間がバスより20分程度長いし、発車時刻もまでしばし待つ。
どっちにしようか?
行きにバスを使ったし、登山鉄道に乗ってみたいから電車に乗ろうか。
30分程度の時間待つくらい大したことないよ。
わたしたちが乗った登山鉄道は旧式だったのか、車体の色は青、黄色とカラフルで、まるでセンスがいい北欧のおもちゃみたいにポップ。
楽しい。わたしは電車が好き程度でガチ鉄道オタクではないけれど、楽しくて楽しくて。
いったいここはどこだろう
わたしたちはどこに来たのだろう?
ふと車内を見渡すと
異国の観光客の中にわたしたちがいた。
わたしたちが旅人だった。
ギラつく太陽の中
秋風を感じたことがこんなにも気持ちがよかったのは、
友と一緒だったから。
寄り道のように時間をかけた電車が、
異国で乗るアトラクションのように興奮したのは、
友と一緒だったから。
国内外と、数々のひとり旅をしてきた。
最近、薄々気づいていた。
わたしは、ひとり旅に飽きてきている。
ああ、そうだった。
夜ご飯として、念願の地元のソールフードと呼ばれているタンメンを食べられたことも、
友と一緒だったから。
そう、
今日一日、友と一緒だった
から。