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短編小説 「テレサとセーラ」 第2回
喫茶店を入って正面にあるカウンターの他より少し背の高い椅子からふと入口に目をやると、ドアが開き昔ながらのカランコロンという音を立てて入ってきたのはやはりあの女子高生2人組である。
「うぅん、セーラちゃん可愛いねぇ。放課後になっても可愛いって本当にすごいねぇ。あぁ、もう存在が素晴らしく可愛いよぉ。存在が可愛い!いや、存在していなくても可愛い!」
『テレサちゃん、適当に喋ってる?』
「そんなこと言うなよ。」
話しながらもいつもの窓際の座席に流れ込むように着席した2人。
一人は毒島セーラさんと言うらしくクールな美人で、もう一人は苗字がわからないもののテレサと言う名で、こちらは西洋人形のような顔立ちの美少女である。
『テレサちゃんいつも私のこと可愛いって言ってくれるけど、私もテレサちゃん可愛いって思うよ。だってテレサちゃんと同じくらいか、それ以上に可愛い人見たことないもん。』
「じゃあ、今日は"見たことない選手権"やろうか!」
『全然"じゃあ"じゃないんだけど。何?見たことない選手権って?』
「世間で見たことないなって言うものを考えてお互い言い合って、どちらがより見たことないもの言ったかという戦いさ!」
『またよくわからない遊び思いついたね。』
セーラ(ここからは敬意を込めて敬称略させていただく。)が言う様に、いつもでは無いが、よくテレサが突然思いついたゲームなどを2人で楽しんでいる様子が時折垣間見える。
今回は"見たことない選手権"だそうだ。話を聞いている私には、テレサの説明を聞いてもぼんやりとしかイメージできないが、これから始まる試合を見ていればどういうことがしたいのか、テレサの思考もわかるだろう。
「じゃあセーラちゃんから!」
『う〜ん。じゃあ、「よくわからないゲームの言い出しっぺなのに相手先攻にする人」。」
「それって私のことじゃん。」
『ちゃんと自覚あったのかよ。』
「次は私ね。「家庭科担当の男性教師」。」
『確かに見たことない。居るんだろうけど。』
「世間じゃ家事は女の仕事って未だに思われてるのかな。グチャグチャにしてやりたいね。」
『具体的なこと一切わからないけど物騒だね。』
「次セーラちゃん。」
『私ね。「ゆるふわ系女子なのに大喜利バカ尖り」。』
「バカ尖りの時点でゆるふわじゃないじゃん。」
『本性出ちゃってるからね。』
「私か…。「給食にゲランド塩」。」
『学生の分際で岩塩で召し上がっていたら腹立つな。』
その後もなんだかんだ、よくわからない時間が続いた。最初は文句を言いつつも結局付き合うのが毒島セーラである。
『「食レポで料理を見せようと持つ手が熱すぎて全然持てない奴」。』
「「食レポで料理を見せようと傾けて全部こぼす奴」。」
『案外出るものだね。見たことないもの。』
「そうよ!小鳥遊テレサの前ではね!」
小鳥遊テレサはすくっと立ち上がると、毒島セーラはすかさず言い放った。
『唐突にフルネーム言うって何?』