Humor と志
ユニバーサルツーリズム(UT)という概念がある。年齢や障がいのある無しに関係なく、だれでも、行きたい土地に旅ができる社会を目指すというもの。
私たちは昨夏、仲間や地元皆さんの協力を得て、故郷の秋田県羽後町を舞台にしたユニバーサルツアーを企画、運営した。横浜から訪れた子どもたちは、星空に驚き、昆虫にはしゃぎ、素朴だけれども味わい深い食文化を心から楽しんでくれた。そして、愛おしそうに我が子を見つめるご家族の眼差しが、ひとりの子を持つ親として、私にかけがえのない価値を見出してくれたのだった。u go home projectは、秋田という土地が、いつか息子に取ってかけがえのない場所になることも願いのひとつなのだが、誰の子にとっても大切な場所になったなら、それが何より嬉しい。
無事に終わった旅だったが、継続に向けての課題は多かった。ひとつが、経費だ。移動コストの高い秋田。加えてUTにはサポートスタッフの存在がコストに反映する。何度も下見をし、どこにもない旅を手作りしたが、それでもおいそれと気軽に出せるほど安価でもない。
今後のヒントを探して、季節外れの雪が舞う3月に私たちが訪れたのは、NPO法人 東京ユニバーサルツーリズムセンターの理事長を務める、久保田牧子さん。もう14年も前からUTの推進に力を注いでいる、第一人者だ。UTに必要なサポーターの養成、紹介、東京のおすすめスポットのアップデートなど、忙しい毎日をお過ごしになっている。
伺うと、UT普及にはハードとソフトのアップデートが共に必要なことがよくわかった。それでも、送り出しと迎え入れをするネットワークは全国に20を数え、海外に拠点ができる日も、遠くないだろう。
しかし東北は薄い。なので、地元秋田の情報とサポーターを取りまとめする役割の担い手を、u goで探してみたいと思う。秋田が、UT受け入れの新たなエンジンになり、また多くの人が秋田をhomeにしてくれることを期待して。
そう思った背景には、この日出会った久保田さんの存在が大きい。困難を笑い飛ばすユーモアと、ピュアな志に、ガッツリとハートを打たれた。
一緒にハワイに行った下肢麻痺の方が、ワイキキの海で確かに砂を感じたというエピソード。入れるなんて思いもしなかった温泉に入ることができ、次の旅が生きがいになったお話。生きる喜びを日々の暮らしにつなげ、1日1日を大切に過ごしてもらいたい、そう願う久保田さん、ぜひまたご一緒し、色んな連携をしていきたい。
私も祖母や両親と、これからも一緒に旅をしたい。秋田からソトへ、連れ出してあげたい。ソトから秋田への旅と合わせた旅の循環を、少しづつ形にしていこう。
旅はこれから、世は情け。